校正と校閲は何が違う?具体的な作業内容や求められるスキルを解説

出版物やウェブコンテンツの品質を左右する重要な工程である、「校正」と「校閲」。似て非なるこの2つの作業について、その違いを理解しないままに、なんとなくチェックをしていると、思わぬ大事故につながる恐れもあります。具体的な作業やミスを防ぐコツからトレンドまで、校正・校閲に関する最新情報をお届けします。

校正とは、文章や原稿の誤字脱字、句読点の使い方、文法的な誤りなどを修正する作業です。主に表記や体裁に関するチェックを行い、読みやすく正確な文章に仕上げることを目的としています。

誤字脱字や文法的な誤りは、読者の理解を妨げるだけでなく、発信者の信頼性にも関わります。そのため、校正は単なる文字の修正にとどまらず、コンテンツの品質を保証する重要な役割を担っています。

校正の具体的な作業

校正の具体的な作業内容は以下の通りです。

1. 誤字脱字のチェック
2. 句読点の使用法の確認
3. 文法的な誤りの修正
4. 表記の統一(漢字とひらがなの使い分け、媒体ごとに設定された表記ルールなど)
5. レイアウトや体裁の確認
6. 図表や画像のキャプションの確認

これらの作業を通じて、読者にとって理解しやすく、正確な情報を伝えられる文章に仕上げていきます。

校閲は、校正よりもさらに踏み込んだ作業で、文章の内容や事実関係の確認を行います。単なる表記の修正だけでなく、記述内容の正確性や適切性を精査し、必要に応じて加筆や修正を行います。

校閲作業は、特に新聞や雑誌、学術論文などの事実に基づく文章において重視されます。誤った情報や不適切な表現を防ぎ、コンテンツの信頼性を高める役割を果たします。

校閲の具体的な作業

校閲の具体的な作業内容は以下の通りです。

1. 事実関係、固有名詞の確認
2. 引用や参考文献の適切性のチェック
3. 論理的整合性の確認
4. 専門用語の使用法の確認
5. 法的・倫理的問題(差別的・不適切な表現)の確認

これらの作業を通じて、内容の正確性と信頼性を担保し、読者に価値ある情報を提供することを目指します。

校正と校閲は、どちらも文章の品質を高めるための作業ですが、その着目点に違いがあります。

例えば、以下の例文を校正・校閲するとどうなるでしょうか。

「東京は日本の西に位置しており、比較的温かい地域です。」

校正では、
「東京は日本の西に位置しており、比較的暖かい地域です。」
と、誤字脱字を修正します。

一方、校閲では
「東京は日本の東に位置しており、比較的暖かい地域です。」
と、事実誤認を修正します。

校正が「表面的な間違いの修正」であるのに対し、校閲は「内容の深い確認と調整」を行うと理解すると分かりやすいでしょう。それぞれが適切な作業を行うことで、より質の高いコンテンツを制作することができます。

校正と校閲は、コンテンツ制作において以下のような重要な役割を果たしています。

1. 品質保証
正確で読みやすい文章を提供することで、コンテンツの品質を保証します。
2. 信頼性の向上
誤りのない正確な情報を発信することで、発信者や媒体の信頼性を高めます。
3. 読者体験の向上
読みやすく理解しやすい文章を提供することで、読者の満足度を向上させます。
4. リスク管理
法的・倫理的に問題のある表現や不適切な表現をなくすことで、トラブルを未然に防ぎます。
5. ブランド価値の維持
高品質なコンテンツを継続的に提供することで、ブランドの価値を維持・向上させます。

校正や校閲を「なんとなく」で済ませていると、想定外のコストが発生したり、企業イメージ・ブランド力の低下につながったりする恐れがあります。例えば、イベント案内状に記載した会場名や開催日が去年のままで、大量のクレームが発生したり、プレスリリース内で不適切な表現を使い、抗議と問い合わせが殺到したり、といったことが挙げられます。情報がすぐに拡散される現代では、企業にとって言語表現の危機管理は必要不可欠といえるでしょう。

校正・校閲の仕事に就くために、法的に必要な資格はありません。しかし、専門的なスキルを証明し、キャリアアップにつなげるという点で、資格は1つの指標となるでしょう。主な資格をいくつか紹介します。

●校正技能検定
日本エディタースクールが実施する資格で、校正の実務能力を評価します。
●日本語検定
日本語検定委員会が実施する、日本語の運用能力を総合的に評価する検定で、校正・校閲の基礎力を示すのに役立ちます。
●校正士
文部科学省認定の通信講座「校正実務講座」を受講し、修了試験に合格すると取得できます。

これらの資格は、取得のための学習により校正・校閲の基礎的な知識を学ぶことができます。そのため、校正・校閲の仕事に就く際や、フリーランスとして仕事を獲得する際に有利に働く可能性があります。ただし、実際の現場では実務経験や実績がより重視される傾向が強く、適切な方法や心構え、見るべきポイントをしっかり身につけていることが大切になるでしょう。

また、新語・新表現への対応や、技術環境の変化への対応など、知識のアップデートも必要です。

校正・校閲作業でミスを防ぎ、高品質な成果を上げるためのコツをいくつか紹介します。

紙に出力する

パソコンなどのデジタル画面上だけでなく、紙に出力してチェックすることで、見落としを減らすことができます。紙の上で赤ペンを使って修正すると、ページ全体を見ることができ、より集中して作業を行えます。

チェックリストを使用する

チェックすべき項目をリスト化し、それに沿って作業を進めることで、漏れを防ぐことができます。リストには以下のような項目を含めるとよいでしょう。

– 誤字脱字
– 句読点の使用
– 表記の統一
– 事実関係の確認
– 引用の適切性
– 差別的表現のチェック

複数人の目線を通す

一人では見逃しがちなミスも、複数人でチェックすることで発見できる可能性が高くなり、精度高く校正・校閲を行えます。異なる視点や専門知識を持つ人が確認することで、多角的なチェックが可能です。

時間を空けて再チェックする

一度すべてをチェックした後、時間を空けて再度確認することで、新たな視点で見直すことができます。特に長文や複雑な内容の場合に効果的な方法です。

専用のツールを利用する

校正・校閲支援ツールを活用することで、効率的かつ正確な作業が可能になります。校正支援ソフト、オンライン校正ツール、AI搭載の文章チェックツールなどがありますが、デジタルツールは「絶対」ではありません。最終的には人の目を通すことがマスト事項です。

これらの方法を組み合わせることで、より精度の高い校正・校閲作業を行うことができます。

校正・校閲というと記者やライター、編集者などの文章を専門にする人のみに必要なスキル、と思われがちですが、SNSの普及や顧客へのアプローチ方法の多様化に伴い、校正・校閲が求められるシーンが拡大しています。

特に、広報・経営企画に関わる人やウェブ関連、宣伝・販促部門担当者は文章を扱うことが多く、校正・校閲能力は欠かせないスキルと言えるでしょう。校正・校閲が必要となるメディア・コンテンツを紹介します。

●ウェブコンテンツ
ブログ記事、ニュースサイト、企業ウェブサイトなど、オンラインで公開されるあらゆる文章に校正・校閲が必要とされています。
●SNS投稿
企業や公共機関のSNS投稿も、正確性と適切性が求められるため、校正・校閲の対象です。
●電子書籍
電子書籍では印刷で使用できたフォントが使えず、文字化けが起こることもあります。そのため、紙書籍とは別に電子書籍版での校正が必要となります。
●動画コンテンツ
YouTubeなどの動画プラットフォームで公開されるコンテンツの台本や字幕にも、校正・校閲作業が必要です。
●アプリケーション内テキスト
スマートフォンアプリやゲーム内のテキストも、ユーザー体験に直結するため、綿密なチェックが求められます。

校正・校閲の重要性は従来のメディアにとどまらず、デジタル時代のあらゆるコンテンツに及んでいます。また、グローバル化に伴い、多言語で展開されるコンテンツにも校正・校閲が求められています。そのため、校正・校閲のスキルを持つ人材の需要は今後も高まると予想されます。

校正と校閲は、文章やコンテンツの品質を保証する重要な作業です。校正が主に表記や体裁のチェックを行うのに対し、校閲はより深く内容の正確性や適切性を確認します。両者の違いを理解し、適切な方法で作業を行うことで、より高品質なコンテンツを制作することができます。

デジタル化の進展に伴い、校正・校閲が求められるシーンは拡大しており、言語表現における危機管理・品質管理の重要性は今後さらに高まると考えられます。

一方、校正・校閲スキルは実務に即したものであることが重要です。宣伝会議の「校正・校閲力養成講座」なら、実践的な演習を通じて、プロの技術が身につきます。社内で文章に関わる業務を行っている担当者は、ぜひチェックしてみてください。

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