Hakuhodo DY ONEは、AIやデータ活用をはじめデジタルマーケティング領域全般についての研究成果や事例を発表するオンラインカンファレンス「JAZZ Fes 2024:デジタルから、サステナブルを。〜テクノロジー新時代の、愛され続けるビジネスのつくり方〜」を10月8日、9日に開催した。
同社が展開する、データとクリエイティブを駆使しデジタル時代の新たなマーケティングを実践するプロジェクト「TEAM JAZZ(チーム ジャズ)」が主催で、3回目の開催。今回は「デジタルから、サステナブルを。」をテーマに、生活者やクライアント企業との持続的な関係を構築し、「愛され続ける」ビジネスを実現するアプローチを8つのセッションから探った。
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https://digiful.hakuhodody-one.co.jp/movie/181573173817
AI活用の未来、構想を描くのは人
Hakuhodo DY ONE 上席執行役員の木野本朋哉氏と同じく上席執行役員の柴山大氏がキーノート「AI時代のマーケティングとサステナビリティ:持続的成長への新たなアプローチ」に登壇し、AIをめぐる環境変化とこれからのマーケティングのあり方について意見を交わした。冒頭、今回の共通テーマであるサステナビリティについて、「デジタルマーケティングもサステナビリティを意識しはじめる時期に来ているのではないか」と問題提起。AIについて正しい理解を促進し、マーケティング領域でどう活用すれば企業の持続的成長に貢献できるのかをテーマに据えた。
AIをめぐる状況については、「プランニングやクリエイティブ、分析など、マーケティングのプロセスにおいて、今後はAIなしでの活動はありえない」という。ただ、AIを正しく理解し、活用しないと一過性のムーブメントで終わるのではないかとも懸念している。
ChatGPTに代表されるような生成AIは、統計、過去の人間の記録をベースに構築されているため、設定した質問に対する「正解」を導き出すことを得意としている。一方で、マーケティング領域において「尖った」アイデアを期待することに関しては「たまたまプロンプトがハマればいいが、『尖った』という概念にプロンプトを無数に打ち込む必要があるので、現時点のAIでそれを行うことは効率的ではない」と話した。
今後、過去の組み合わせからしか生成しないAIが進化するためにも、生成のベースとなるオリジナルデータは必須であり、それは人間の創造によってしかなされず「未来をつくるのは人間の尊い仕事」だと指摘した。
マーケティング領域での活用に関しては、画像生成や動画生成などの分野で想像以上に進んでいるという点で両者の意見は一致した。近い将来、アイデア生成もAIでできるようになると予測しながら、「それが良いことかどうかは、いま一度立ち止まって考えるべき」と指摘した。
一方で「AI至上主義ではどこも同じ正解にたどり着くので縮小均衡に向かう。最大公約数的な競合類似で面白さがなくなる」と懸念点を指摘。そうしたAIの特性を理解・活用し、マーケターは本来のコミュニケーション設計に注力することが大事だと話した。
これからのマーケターに求められる役割については、AIにインプットするデータ作成や仮説領域の深掘り、そうした活動の結果としてのマーケティングフレーム作成に期待を寄せた。AI時代の組織づくりに関しては、エンジニアとの協力体制について言及した。
「未来を作っていくのは人間。その人間がどうAIを使うのかをしっかり設計しないと企業としてサステナブルに成長していくことはできない」とセッションをまとめた。
デジタルリテラシーが向上した「令和シニア」の実態
2つ目のセッションは「Z世代化する令和シニアを徹底解剖!〜持続可能な真のシニアマーケティングとは〜」と題し、令和シニア研究所が実施した調査結果をもとに、シニアマーケティングについてさまざまな視点からディスカッションを行った。
Hakuhodo DY ONEでシニアマーケティングを研究する令和シニア研究所のリーダー、吉川真紀子氏がファシリテーターを務めた。前半は令和シニア研究所の尾木原稜氏が、日本最大級のシニア向けコミュニティサービス「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」を運営するオースタンスと共に実施したマーケティング調査結果を解説しながら、オースタンス代表取締役社長の菊川諒人氏を交えてシニア層の実態を明らかにした。
調査から見える「令和シニア」は、貯蓄額が多く、可処分所得もほかの世代と遜色ない消費力を持っている。時間に関しても仕事や育児、親の介護などから解放され、自由時間も増える傾向にある。2024年には70代のスマートフォン所持率が8割を超えており、「かつてのようなデジタルデバイドは解消されつつあるのではないか」と指摘した。
調査結果の発表を受け、菊川氏は「シニアマーケティングはタイムマシーンビジネスとも言う」と指摘すると、吉川氏が「過去にヒットした施策をシニア向けにリバイバルすることは可能かもしれない」と可能性を示した。
吉川氏は実体験として、30代向けの施策にもかかわらず、コンバージョンにつながったのが、実はシニア層だったという例を「フタを開けたらシニアだった現象」と呼び、「シニアもZ世代のように多様化し、デジタルデバイスを使いこなすようになってきた。一方でそれだけではとらえられないシニア像もあるので、チューニングしながらプロモーション施策に生かせれば」と述べた。
後半は、引き続き菊川氏と、クリエイティブ領域を担当する当研究所メンバーの山口真由氏と大島順子氏が加わり、より具体的な施策について議論した。
インスタント食品やオンラインゲームの例に触れながら、「シニアを対象としていない商品でも令和シニアのニーズや思考傾向を理解し、アプローチしていくことも顧客拡大の選択肢になると思う。設計次第では若年層とシニアを同一クリエイティブでアプローチが可能かもしれない」と述べた。
また令和シニアの変化をとらえたメディア活用として、ニュースメディアを提案していると話した。菊川氏も実体験に触れながらシニアに対して重要なポイントとなる丁寧なコミュニケーションの選択肢としてニュースメディアの切り口は面白いと分析した。
クロージングでは「令和のシニアマーケティングはこれからさらに成長していく市場」とし、今回の調査データも追加項目を加えて公開予定だと伝えた。「令和シニアはデジタルリテラシーが向上したことで、デジタル上でのアクティブさも私たちにとってはチャンス、ぜひ活用したい」とセッションを締めた。
常駐を選択したNTTドコモとHakuhodo DY ONEの課題感とは
3番目のセッションは「NTTドコモと考える、常駐のマーケティングコンサルティングの活用方法と広告会社とのサステナブルな関係〜本音で語る!win-winな向き合い方〜」。
NTTドコモ プロダクトクリエーション部 担当部長の櫻井和幸氏をゲストに迎え、Hakuhodo DY ONE 執行役員の青山友樹氏とストラテジックプランナーの藤原くるみ氏が議論した。藤原氏はマーケティング担当としてNTTドコモに常駐した経験を持つ。
NTTドコモの家電レンタル・サブスクサービス「kikito(キキト)」は立ち上げ時からデジタルマーケティングを重視しており、Hakuhodo DY ONEの支援を受けていた。しかし、目標は未達、KPI設定にも疑問が出る結果に。その打開策として選択されたのがマーケティング担当者の常駐だった。櫻井氏は「当社のマーケティング人材育成の観点からも、デジタルマーケティングに精通する方が常駐することで、マーケティングの側面だけではなく事業全体を深く理解して寄り添ってもらえるのではと期待した」と解説した。
一方の藤原氏も「ストラテジックプランナーとして、マーケティングを通じてビジネスをリードしなければならないポジションでありながら、クライアントの立場でビジネスを経験したことがないというジレンマを抱えていた」と広告会社側の課題感を話した。
常駐の結果「マーケティングだけではなく、事業全体の状況を深く理解した上で、事業会社と広告会社という関係を超えた、同じ目線で会話できるようになった」とメリットについて述べた。また、NTTドコモ側にも社員の意識の変化が見られたという。櫻井氏は「ドコモの社員が、『広告会社が重視する生活者インサイトやデータ分析から、新たな発想の視点を見つけ出す』という考え方に触れることで、プロダクトアウトになりがちな思考からより広い視野を意識するようになった」と評価した。
藤原氏は、常駐したことで生まれたインフルエンサー施策とその成功要因について「NTTドコモとHakuhodo DY ONEとのハブになれたこと」と解説した。
最後にセッションのテーマでもあるwin-winでサステナブルな関係について、櫻井氏は「KPIを与える側、達成する側という関係を超えて、ともにつくっていける、VUCAな環境で課題を共に乗り越えていけえるような関係がサステナブルだと思う」とコメント。青山氏は「共通の目標があるのは当たり前。今日の話はビジネスを超えた絆を感じた。その絆というのは常駐のような物理的に近くにいるというシンプルな手段で功を奏するのかもしれないというのが大きな学びでした」と話した。
人間中心かAI中心かは二者択一ではない
4つ目のセッションは「Hakuhodo DY ONEが挑戦するAIと共創する組織づくりへの挑戦、そこにある苦悩と希望」。
AIの活用が当然となり、担う業務領域も拡大を続けている。人口減少による人手不足も課題となる労働市場において、AIと人、組織の良い関係とはどのようなものなのか、Hakuhodo DY ONE執行役員の谷垣宏一氏とチーフAIストラテジストの中原柊氏が議論した。
まず内閣府が示す指針「人間中心のAI社会原則」を紹介しながら「今回議論したいのは組織論なので、あえてAI共創組織への進化を加速するAI中心の人間の設計、AIが働きやすい人間・組織のあり方を考えてみると新たな切り口が見えてくるのでは」と提案した。
提案や職務特性理論の説明を踏まえ、「人間中心、AI中心のどちらかではなく、どう共存させるか。業務や課題の種類によって共存させる考え方が重要なのでは」との見解を示した。
谷垣氏は自身で作成した「組織のタテとヨコの回路」を図示し、従来の組織の動かし方と、AI時代の組織運営についての変化を解説した。そのうえで「マーケティングは生活者に新しい気づきを与えるもの。それはタテの回路だけではできない。これからはヨコの回路をどう作っていくかが大事」という視点を提示した。
さらに、タテとヨコの回路の先にはナナメの関係も生まれると話し、その実現が「結果的に縦割りが縮小し、組織の統合が生まれていく」と話した。これまで中間管理職がヨコの連携を担ってきたが、AIがその役割を果たすことによって、人は中間管理業務から解放される。そうなれば、広告会社内の組織においては現場に近い役割に人材を割くことができ、会社組織を強くできるのではないかと解説した。
中原氏は企業や組織でよりAIが活用されるためには「ノリ」が重要だと指摘し、その「ノリ」を生み出すためのフレームワーク「CAPSULE」を紹介。谷垣氏もその重要性に同意しながら、生み出されたノリをサステナブルなものにするためには土台にあるマインドや基本行動が大事になるのではないかと話した。
セッションのクロージングでは人材育成にも変化が必要だとし、「いきなり全員がAIと働くことは難しい。その流れを作るためには局所戦で日常的にAIと仕事をする人を増やしていくことが最初の一歩なのでは」と提案した。
AIが寄与できる領域は多い アニメ業界はどう変わる?
5つ目のセッションは「AIとアニメーション広告のこれから:持続可能なアニメ産業の未来を考える」。Yostar Pictures アニメーションプロデューサーの稲垣亮祐氏、博報堂DYホールディングス佐藤拳氏と小野洋平氏が登壇し、生成AIがいかにしてアニメーション制作を変化させるのか、アニメーション業界と広告業界、双方の視点から解説した。
現在、アニメーション産業の市場規模は約3兆円。アニメーション広告に乗り出す企業も増えている。一方で、アニメーション制作には高いコストと長い制作期間を必要とするなか生成AIの活用により、制作を効率化できるのではという期待も強いと話す。
だが、既存のアニメをAIに読み込ませるのは著作権法上難しい。これから新しくつくられるアニメをAIにデータとして提供し、今後の制作にAIを活用できる体制づくりからまず始める必要があるという。
その体制ができれば、AIが寄与できる範囲は多い。例えば絵コンテ作成では、生成AIによるラフ案の清書が期待される。また、アニメーションのレイアウトとなる原画と原画の間を作画していく中割り作業には膨大な作業量が求められる。この作業を、生成AIによる自動生成で大幅に縮小できる可能性が高いと指摘する。
さらに、着色作業や、特に自然物を描写する背景制作でもAIの活用が期待できそうだという。
続いて、完成した映像に対するAIの活用について議論した。同じ広告を何度も見せると反応が悪くなるが、見た目を少し変えることで効果の減少を抑えることができる。ひとつの映像から複数の作風を生成できる生成AIの技術を活用すれば、これまでより簡単に見た目に変化を起こすことができる可能性があると話す。
また、生成AIを活用したアニメーション制作での注意点についても話した。著作権侵害や倫理的な問題のほか、より実務的な問題として、品質管理についても触れられた。法的にもまだ曖昧な部分があり、生成AIそのものもまだ発展途上であるため、うまく使っていくには生成AIのアウトプットを適切に判断することが求められそうだ。
最後に、アニメーション業界のAI活用で起きる変化や展望について話した。AIを活用することで、これまで実現できなかったアイデアを形にできたり、クリエイターがより創造的なアイデア出しに集中できるようになったりする可能性も指摘した。AIを活用した、アニメーション需要の拡大に応え得るワークフローの整備に向けて、試行錯誤を続けていくという抱負とともに、セッションを終えた。
まだまだ議論が必要なAI×法律の現在地
6つ目のセッションは「生成AIと著作権の最前線:法的対策と未来展望」。本セッションでは、最先端のテクノロジー領域に強みを持つ弁護士が多数所属するGVA法律事務所の阿久津透弁護士と森川そのか弁護士、JASRACで新しい著作権管理の可能性を広げる「KENDRIX」プロジェクトを担当した経験を持つ水谷英彦氏が登壇。Hakuhodo DY ONE クリエイティブ法務 エグゼクティブの藤井正則氏とともに、生成AIと著作権をテーマに具体的な問題を取り上げつつ考察を繰り広げた。
まず、サービス開発において著作物をAIが読み込むケースが取り上げられた。著作権法には、「情報処理のためであれば既存の著作物を使用してよい」という規定がある。ただし、実際に開発する際には、この権利制限規定の要件を満たすかどうかの確認を徹底すべきだと話す。
AI活用においては、ディープフェイク技術の悪用も深刻な問題として浮上している。企業のCEOや著名人を騙った悪質なディープフェイクに対しては、刑法上の名誉毀損罪や偽計業務妨害罪などの適用が考えられる。しかし、世論扇動を目的としたディープフェイクには、既存の法律だけでは対応が難しく、新たな立法がなされる可能性もあるという。
一方、音楽業界では新たな取り組みが始まっている。JASRACが提供する「KENDRIX」では、ブロックチェーンを利用した音楽ファイルの存在証明や、オンラインでの著作権信託契約、楽曲の類似性チェックなどが可能だ。AIとブロックチェーン技術の融合が、著作権管理の新たな可能性を開くかもしれない。
また、AIが人間の知能を超えるとされる「シンギュラリティ」の到来に向けて、著作権法の在り方も再考が必要だ。AIが統計的処理の限界を超えて創造性を獲得することが現行の規定では難しい場合は、現行の権利制限規定をより柔軟にしていくことが求められる。一方で、シンギュラリティに至ったのちの想定も必要だ。シンギュラリティに達した世界ではAI作品で世の中が溢れかえることが予測される。そのようななか、AI作品すべてに著作権を認めてしまうと、人間の創造性が阻害されてしまうという懸念があると話す。
こうした課題や懸念点も多いAIの活用だが、もちろん期待される側面も多くある。そのひとつとして挙げられるのが、SDGsの達成に寄与する可能性だ。例えば音楽業界では、著作権や原盤権を扱った権利ビジネスをうまく展開することで、従来のプラスチックで作られたCDなどを販売せず、地球環境への配慮ができる。さらに教育分野でも、パーソナライズ化などにより、教育資源が少ない地域でも質の高い教育を提供できる可能性があるという。
これらのAIがもたらす新たな可能性を前向きに活用するためには、継続的な議論と検討が必要だ。今後もおそらく法改正をはじめとする社会変化が起きるだろう。こうした時代において、AI×法律は、今後より議論が深まっていく注目のテーマであることと強調した。
Web3が起こす顧客体験の変革
7つ目のセッションは「web3技術で実現する、生活者との中長期的な関係性構築」。博報堂DYグループでWeb3領域の事業を展開する博報堂キースリー COOの寺内康人氏、Hakuhodo DY ONE クリエイティブディレクターの松尾良馬氏、同社のコピーライターの朝倉綾未衣氏の3人で、Web3を活用したマーケティング手法について事例を用いながら解説した。
Web3の根幹は、ブロックチェーンとスマートコントラクトという2つの技術にある。ブロックチェーンとは、改竄できない、かつアクセスする人すべてが使える民主的な仕組みだ。一方のスマートコントラクトは、プログラムされた条件が満たされると、自動的に物事を実行する仕組みだ。
現在のDXにおいては、データプライバシーの問題やCPAの上昇など、さまざまな課題が浮上している。
これらの課題に対して、Web3は新たなソリューションを提供できるかもしれない。特に、企業間や事業間の相互運用、行動の信頼性の担保、トークンの導入による経済性の創出といった面で、Web3は有効な手段となり得ると話す。
なかでもロイヤリティプログラムの進化において、Web3の可能性は非常に大きい。Web3の活用により、購入前から顧客とつながり、有効な体験を提供することができる。また、リアルとデジタルの融合した新たな顧客体験の創出も可能だ。
例えばカルビーでは、ファン育成のために「NFTチップス」という施策を行った。これは、対象商品となるポテトチップスを購入し、アプリで認証すると「種芋NFT」が付与されるというもの。その後は購入のたびに種芋に水をあげることができ、芋は徐々に成長していく。そして対象商品を5回購入すると、種芋はオリジナルキャラクターに進化を遂げる。約20種類の異なるキャラクターが設定されており、ユーザーのコレクター心を刺激する体験型の試みだ。こうしたNFTの活用には、大きなポテンシャルが秘められているという。
多くの可能性を持つWeb3だが、まだまだ普及の道半ばではある。現在のユーザー数は1998年のインターネットユーザー数と同程度だ。Web2やインターネット黎明期の経緯を踏まえて考えると、今後5年から10年の間に、Web3技術を基盤とした新たなサービスやアプリケーションが登場すると思われる。そしてそれが、一般ユーザーにも広く普及していくことがWeb3の発展のためには必要だと話す。
現在のWeb3を取り巻く環境は、インターネットが生まれた当初と同じような熱度と可能性を秘めている。おそらく数十年に一度しか訪れない時代の波が来ているため、新しい挑戦を果敢におこない、Web3の新たな価値を創出していきたいと期待と意欲を示して、セッションを終えた。
生成AIをパートナーとして進めるデジタルマーケティング
8つ目のセッションは「データ分析を民主化する生成AI:データドリブンマーケティングの未来」。Hakuhodo DY ONE 上席執行役員の帷勝博氏、パフォーマンスAI戦略室 室長の山口俊亮氏が、生成AIが未来のデジタルマーケティングをどのように変革するかを、経営的な視点も交えつつ解説した。
生成AIの登場後、非構造化データを構造化する処理が容易になり、テキストや画像、動画などの多様なデータを手軽に分析できるようになった。例えば70万行の検索キーワードを10個のカテゴリに分類する場合、生成AIに依頼すれば、そのためのコードを出力し、さらにコメント生成まで実施してくれる。時間もコストも大幅に短縮でき、データ分析のプロセス全体が大幅に効率化されているという。
しかし、生成AIの活用に全員が前向きな姿勢を持つわけではない。Hakuhodo DY ONE社内での生成AI活用に関するヒアリングでは、生成AIの使い方がわからない、出力結果の確認に時間がかかる、などの声が上がっているそうだ。これらの課題の対策として、UI・UXの改善を含め生成AIが価値を発揮しやすい環境づくりと、人間が生成AIを信頼して業務を任せる経験を積むことが重要だと指摘する。
人間側は、生成AIが得意なことを知って生成AIに任せられることを適切に依頼し、生成AIからは、答えだけでなく考え方まで理解してもらえるようなアウトプットが返ってくる。こうした環境が実現できれば、人間と生成AIの協業が実現できるのではないかと話した。
また、生成AIは0から1を作り出す創造的な作業や、80%から100%に仕上げるような質を上げる仕事は苦手だが、1から99までの作業を高速で処理することは得意だ。0→1や80→100は人間が担当し、その間の部分を適切に生成AIに依頼することで、生成AIと人間のより良い協業が実現するのではないかと提案した。
さらに、生成AIの活用により、広告会社とクライアント企業の関係性も変化する可能性がある。生成AIによって、より多くのデータを分析できるようになり、従来以上のデータ共有が必要となるが、データを社外で扱う場合、データポリシーなどの壁もある。そのため、広告会社の社員がクライアント企業の「中の人」として働く機会が増えるかもしれないと話す。
最後に、生成AI活用を踏まえた、今後のデータドリブンマーケティングの行方について話した。
まず、クライアント企業、広告会社、生成AIの三者が対等な立場でチームとして協業できている形を理想的なデータドリブンマーケティングの姿だと提言。また、生成AIの特性を活かすためには、忖度をなくし、正直で合理的なコミュニケーションを心がけることが重要だと指摘した。生成AIは文脈やニュアンスの理解が苦手なため、明確で直接的な指示が効果的だという。
生成AIをパートナーとして働ける状態が理想だ、との言葉で、セッションを締め括った。
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※デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)と株式会社アイレップは、2024年4月1日に統合し株式会社Hakuhodo DY ONEを設立しました。新会社での統合的な運営を進めるにあたり、当面の間は移行措置としてお取引窓口や役職員の採用等はこれまで通りDACおよびアイレップが変わりなく担います。今後2025年以降に完全な統合を実施する予定です。
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