──鳥橋さんは「アプリ」の部分をどんなふうに勉強しているのですか?
日本国内の情報だけでは足りないと思っていて。少し前、パリで開催された「VIVA Technology」に行ってきたんです。世界中から1万数千社ものスタートアップが集まる、大規模なテックイベントです。
そのときに感じたのが、日本のデジタルマーケティングは、グローバルの水準から3年遅れているということ。例えば、向こうで当たり前に使われている生成AIを、日本ではまだ全然活用できていません。マーケターは海外のこういうイベントを使って、世界の最先端を自分の目で見てくると、変革を起こすべき方向がよりクリアになって、業務へもっと価値還元できると思います。
──そうやってインストールした「アプリ」をうまく動作させるためには、「OS」のアップデートがより重要だというお話ですね。
はい。「OS」の中でも、マーケターなら顧客視点が絶対に必要ですね。加えて、デジタル技術を適切に扱える、いわゆるITリテラシーも必須です。
マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント
荒川直哉
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名以上の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT 企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。
これを高めるには、「ITパスポート試験」を受けてみるといいと思います。基礎がわかっている人なら、100時間くらい勉強すれば合格できると言われている国家試験です。これから日本でも生成AIが当たり前に使われるようになると思います。そのときに備え、法律上の注意点や、倫理的な懸念点についての勘所を抑えることができるのでお薦めします。
採用・育成は「基盤」を重視している
──鳥橋さんは今、社内外のデジタル化を担うチームのリーダーをしています。メンバーに求めることも、やはり「OS」を磨いてほしいということでしょうか。
そうですね。ただ、私はマーケターに必要な能力として、今西さんの挙げられた「アプリ」と「OS」にもう1つ、「基盤」を加えた3つの層からなると思っています。
「基盤」というのは、OSを載せるハードウエア。人間で言うと、前向きさや柔軟性、レジリエンス(困難を乗り越える力)といった性格特性です。マーケターに限らず、ビジネスパーソンとして、さらに言えばひとりの人間として、持ち合わせているとよりよい人生を生きられる。そして、これらの性格特性があって初めて「OS」に当たる基礎的なスキルが身に付いていくのだと考えています。
そのため、「OS」を磨く努力のできる方も素晴らしいですが、私がチームを構成するときはまず、求める「基盤」を持ち合わせている方かということを重視していますね。
鳥橋さんが考えるマーケティング人材のスキル・マインド