BtoB企業におけるオウンドメディアの活用をテーマに、第1回では「成長拡大を目指すBtoB企業にオウンドメディアが必要な理由」について、第2回ではオウンドメディア実現に向けた基礎固め、それは「コンセプト設計と人・組織の一体化」について説明してきました。
今回のコラムは企画/構築フェーズに入っていきます。前回の記事で触れたように、目的を営業施策連携型(リード獲得)「動的サイト」に置いて話を進めていきます。今後の内容は以下の順番で進めていきます。
コンテンツ企画
BtoBの「動的サイト」のコンテンツカテゴリーは、主には以下となります。
それでは、コンテンツを企画する際はどのような点に配慮すればよいのでしょうか。そのポイントを解説していきます。
1. コンセプトを体現する一貫したキーワード(特定のジャンルにおける)を考える
- 同じジャンルで他社が使っていないキーワードを揃え、コラム、事例、特集などでの頻出量を確保しましょう。
- キーワードはSNS含めたあらゆるタイトル、メタディスクリプションにも入れていきましょう。
2. コンテンツ形態の変化に追随を(動画)
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テキストコンテンツは正確に内容を伝える意味で今後も重要であることに変わりはありませんが、動画はそれに加えて、より強く感情に訴え、印象に深いものになります。例えば事例紹介などの動画で、体験者自身が登場して話をする姿は共感度合いが非常に高いことで知られています。
もう一つ、お勧めする理由としては動画計測ツールが身近になってきたことが挙げられます。Google社のGAがGA4に完全に移行し、動画視聴に関する様々な測定が簡単にできるようになってきました。
3. 事例コンテンツは誰がつくるのか
- 事例コンテンツは制作コストと時間、また登場していただくお客さまとの間で合意形成など準備が必要で手間がかかります。周到な準備と継続的に供給できる仕組みづくりが必要です。
あらかじめ制作方針やパターンをお客さまと決めておくと短期間に事例を量産することができます。
4. 既存営業・販促策との一体化
- すでに営業部門で計画されているセミナーやイベント等はオウンドメディアのコンセプトに寄せていく流れを作りましょう。全社一体の空気感を醸成、徹底していきましょう。お客さまから見てコンセプトの一貫性を強調できます。
- すでにSNSマーケティングでタイアップしているインフルエンサーが、いれば営業部門との連携を図れるようにパイプをつくりましょう。
5. 全体を通して
【必要リソースについて】
- 社内知見者の関与が必須です。これはオウンドメディア自体が自社の強みや拘り/価値を発信している以上、その詳細を語れる人が必要だからです。そのような人はすでに現業を持っているケースがほとんどですが運営に関与ができる環境を作りましょう。
- 早い段階で社内調達できることとそうでないことを見極め、積極的に外部リソースの活用を考えましょう。
一般的にBtoB企業であれば本業があり、それを中心に社員のキャリアパスが構築されています。オウンドメディアを運営していくには時々の変化(技術、社会、ツール等など)にタイムリーに追随する必要があり、その必要スキルが本業スキルに合致しないケースが多くあります。無理して社内リソース調達を進めれば孤立する職種や担当を生みかねません。オウンドメディアに必要ないくつかのスキルは専門企業に依頼するのが得策です。ただし、コンセプトを理解し、自社に合った適切なコストと支援を提供してくれる外部業者選びが次の課題となります。
【スケジュールについて】
- 1年単位でスケジュールを組み立てましょう。この時コンテンツ制作と販促策(キャンペーン、イベント)を一体化し、1年間のジャーニーマップが有効です。
狙いのペルソナと業種を想定し、その業種に多い決算月をゴールにした年間ジャーニーマップを企画し、コンテンツ及びその公開時期をマップに連動させてください。 - コンテンツは一つ作るのに構想段階から公開まで一定のプロセスがあり、時間がかかります。コンテンツのカテゴリーごとにプロセスと時間が異なりますのでそれぞれの概ね傾向を把握しておくと良いでしょう。
販促策など外部施策と上手く公開タイミングを合わせるために重要です。
目標設計
オウンドメディアの関連指標として以下があります。
※動的サイトで特に重要視される指標
1.初期段階の目標は成果系ではなくプロセス系でもよい
- オウンドメディアの特性としてコンテンツが集積され、サイト訪問数が一定レベルを超えるまで低空飛行を続けます。半年~1年半はとても厳しい状況が続きます。したがって初期と中期以降で異なった目標を設定する必要があります。初期段階での目標設定はプロセスであるコンテンツ作成数や公開数、文字量などがあります。
2.オーガニック検索やPV等は単月ではなく長いスパンで考える
- 初期段階では単月で一喜一憂せず半年~1年で重要目標設定を置きます。それとは別に四半期程度の中間目標設定も起きます。この中間目標は、重要目標に向けて進捗しているのかの見極めと、経営陣の関心を継続させるための定期報告材料としても使えます。
- 目標に対する進捗を見るだけでなく、コンテンツや施策に対する反応やその中身、その後の変化を注意深く観察し、コンテンツや施策の改善につなげましょう。改善を測定する意味の目標設定は個々の測定に必要なスパンで行ってください。
3.中期以降はトラフィック、コンバージョンをバランスよく設定する
- 代表的なトラフィックとしてPVがありますが、成功しているオウンドメディアは小規模(コンテンツ数)であれば月間0.5万PV~1万PV、大規模であれば5万PVから20万PV前後でしょう。それを目安にマーケティングファネルファネル毎のRateを設定、最終的にコンバージョンRateを決めます。ただし、これは流入経路(検索、SNS、被リンクなど)それぞれがある程度に立ち上がっている事が前提となりますので初期段階で納得できる傾向値が把握できている必要があります。
それが出来ていない状態で中期以降の目標設定を行うのは避けるべきです。
中期といえども傾向が把握できるまで暫定目標で進めるのが妥当と言えます。
4.営業目標が必須
- 最終クローズが営業(インサイドSA含む)の場合は、商談数や成約数を目標設定する必要があります。その場合、先ほどのコンバージョンを母数にしますが、個社個社の営業体制やリード段階での見込みの考え方などで決定要素が異なります。個社個社の事情を念頭に個別シミュレーションが必要です。
とは言え初期段階では精密な値を設定できない為「期待値」でもありでしょう。
もっとも重要な事はまず営業目標を設定するという事であり社内新規部門と既存部門の一体感づくりに貢献します。
まとめ
今回は企画/構築フェーズのうちコンテンツ企画と目標設計に触れました。コンテンツについては、オウンドメディアの肝であり、自社の思いを体現するものです。コンセプトを固めるとき同様十分な企画が必要です。一方で企画内容の多くは仮説も含みます。
同様に目標設計も同じで、いくら悩んでも実行していく中でしか妥当な値は見えてきません。つまり、コンテンツも目標も「たしからしさ」はやりながら見極めていくしかないということになります。
次回は企画/構築フェーズの仕上げ「IT基盤」と「推進体制」についてお話ししたいと思います。