Z世代によるZ世代のためのポッドキャスト「PRepトーク」:インドPR業界の未来へ響くスマートな好事例ここにあり

そして設定した#PRforPRキャンペーンの目標は、1.インドの6都市で2000人の学生にリーチする、2.ソーシャルメディア上で1年間に少なくとも10万インプレッションを達成する、3.ターゲットオーディエンスの間で、PRに対する認識と関心を最低25%高める、4.リーチした学生の少なくとも50%をキャンペーン活動への積極的な参加者に変える、の4つでした。

イメージ #PRforPRキャンペーン紹介資料より(SCoRe提供)

#PRforPRキャンペーン紹介資料より(SCoRe提供)

音声メディア中心のコミュニケーション施策

調査の結果、ターゲットオーディエンスであるZ世代は音声メディアへの接触頻度が高いことがわかったため、SCoReは音声メディアであるポッドキャスト中心のキャンペーンを施策の中心に据えました。

まず、主要都市の大学機関に所属する意思決定者や意思決定の仕組み、大学のアカデミックカレンダーを調べ上げて、大学毎に適切なアプロ―チ時期や方法について戦略を立てました。

そしてそれらの大学機関で、シニアではなく、若手のPRプロフェッショナルによるセミナーを多数実施し、学生らを“PRepトーク(PRと準備するという意味の英単語PRep-areをかけた造語がPRep、プレップ)”というポッドキャスト番組に招きました。そこではディスカッションやコンテストに加えて、参加者がPRのキャリアを築くためのコツやキャリアの魅力などについて話しました。

そして、その音声コンテンツを様々なソーシャルメディアで展開し、視聴者を巻き込みながら拡散をしていく仕組みを作り上げました。音声メディアという学生に馴染みのあるメディアを活用したことと、若手PRプロフェッショナルがキャンペーンのアンバサダーを務めたことなどが奏功し、Z世代視聴者の親近感と信頼性を確保しました。

イメージ #PRforPRキャンペーン紹介資料より(SCoRe提供)

#PRforPRキャンペーン紹介資料より(SCoRe提供)

SMARTな目標達成を達成

結果として、PRepトークのセミナーは2022年11月から2023年4月の間に、目標の6都市2000名以上を達成する8都市27機関で実施、2500名以上の学生にリーチしました。

ポッドキャストを通じた配信は2シーズン28エピソードに及び、リスナー数は1万9000人以上、ソーシャルメディアでのエンゲージメントは目標の10万件を大きく超える28万4000件を達成しました。

そして参加者の72%がPRへの理解を深めたと回答し目標の50%以上を達成。25%以上を目指したところ26%がPRのキャリアを目指す意向を示しました。

「SCoReでは、強力な人材パイプラインを構築することがインドのPR業界の将来にとって不可欠であると考えています。このキャンペーンを通じて、PRのキャリアが提供するダイナミックな機会を紹介するだけでなく、彼らの願望に共鳴する形でZ世代とつながりました。単にメッセージを伝えるだけでなく、対話を生み出し、次世代がPRを真に影響力を発揮できるキャリアだと考えるようにすることです」と、ヘマント・ゴール学部長はコメントしています。

イメージ #PRforPRキャンペーン紹介資料より(SCoRe提供)

#PRforPRキャンペーン紹介資料より(SCoRe提供)

本事例からの学び

本事例から得られる学びとしてはまず、キャンペーン実施前の調査が徹底していることもさることながら、学術界と産業界との間に位置する組織の強みを認識した上で、その強みを発揮しうる調査設計やデータ収集を行った点です。そして学術界ならではの理論的な分析から洞察(インサイト)を導き出した、この「組織の強みを活かした調査と洞察」に注目したいと思います。 

調査の規模は、人、物、予算、時間、情報その他の経営資源によって制約を受けます。しかしこの事例では、すでに他組織に比して有利なポジションになっている強みを認識した上で、他組織では収集できないデータやリーチしにくい調査対象を扱った調査を実施したことで、課題のより明確な把握やターゲットオーディエンスの特定、有効なコミュニケーションツールなどの気づきに繋がっています。自らが有利な点、強みを生かして、他組織では経営資源の制約から実施しにくい調査や洞察を獲得することは、どの組織でも工夫の余地が大いにあるのではないでしょうか。

2点目としては、SMARTな目標設定です。結果として、すべての目標を達成した事例ですが、これは具体的で、測定可能で、達成可能で、関連があって、時間制限があることを意識できたことが奏功した面も大きかったのではないでしょうか。SMARTを意識した目標設定によって、キャンペーン実施中に運営側は目標に対しての進捗を把握しやすく、目標達成後は次の施策に向けての反省と計画策定が見える化しやすい利点があると思います。理想ではありますが、やはり学ぶべき点は多いと思います。

そして3点目は、ターゲットオーディエンスであるZ世代の理解です。Z世代の特徴をふまえて、なるべく世代の近い人材によるセミナーを実施し、また、Z世代が親しんでいるポッドキャストをツールとして採用する点は、調査とそこから導き出した洞察のたまものでもあります。

この事例のように、背景、課題、目的、ターゲットオーディエンス、施策、目標設定とその測定方法、そして結果がキレイに揃う事例は、ひとつの理想でもあります。今年のイベント開催国インドからの事例でもあり、本シリーズのグッドプラクティス(好事例)第一例目としてふさわしいと思い、紹介させていただきました。

連載第四回目もインドからの好事例を取り上げる予定ですので、引き続きお楽しみください!

(了)

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岩澤康一(Key Message International代表取締役)
岩澤康一(Key Message International代表取締役)

国内/外資のファームでデジタル、グローバルな広報・PR経験を積んだコミュニケーションの専門家。TBSワシントン支局に勤務後、在シリア日本大使館広報文化担当官、日本国際問題研究所広報部長などを歴任。米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。通訳案内士(英語)。PRプランナー(PRSJ認定)。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。著書に「世界標準の説明力 頭のいい説明には『型』がある」(SBクリエイティブ)。

岩澤康一(Key Message International代表取締役)

国内/外資のファームでデジタル、グローバルな広報・PR経験を積んだコミュニケーションの専門家。TBSワシントン支局に勤務後、在シリア日本大使館広報文化担当官、日本国際問題研究所広報部長などを歴任。米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。通訳案内士(英語)。PRプランナー(PRSJ認定)。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。著書に「世界標準の説明力 頭のいい説明には『型』がある」(SBクリエイティブ)。

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