ごみを出さずに、資源に変える。オランダ生まれの資源循環プラットフォーム「マダスター」

建築物の素材がどこから来てどこへ行くのかを可視化する

マダスターのダッシュボードでは、資材仕様やCO2排出量など重要な情報が得られます。しかし、まだこの仕組みも完全ではありません。というのも、素材一つとっても調達先の違いによりCO2排出量などは変わってくるのですが、建設業界では細部にわたって調達プロセスを把握することが困難であるため、情報の正確性が乏しいのです。
例えば飲料水は、提供している業者の証明書があれば、それが安全だということがわかります。同様に建設業界においても、素材がどこから来たものなのか、透明性を担保していくことを使命として感じているようでした。

イメージ 建材をデジタルツインで管理することで、誰が見ても明確な情報管理が可能に。

建材をデジタルツインで管理することで、誰が見ても明確な情報管理が可能に。

イメージ 建物のどこで何の素材がどれくらい使用されているかモニタリングできるダッシュボード。

建物のどこで何の素材がどれくらい使用されているかモニタリングできるダッシュボード。

なお、建物において廃棄を前提としない場合のCO2排出には、電気や空調などの利用時のCO2排出と、素材の生産時のCO2排出の2つのパターンがあります。マダスターではこれらを分けて可視化してくれるので、どの段階で対応が必要になるのかをきちんと把握することを可能にするのです。

このプラットフォームにより、材料やCO2排出量を把握しながら建設または管理することができますが、マダスター・サービス社は建物自体を評価する立場にはありません。環境に負荷の少ない形で、建物が建てられるのは良いことだと考えていますが、マダスターはあくまでレジスター(登録所)であり、その中で素材がどこから来たかの透明性を担保することが役割であり、決して評価する立場にはないのです。
しかしながら、建物単位でも、地域単位でも、ベンチマークと比較することができる機能は備わっているそうです。プラットフォーム内に、建物情報がマテリアルパスポートとしてポートフォリオのような形で点在しているため、例えば、1950年代アムステルダムで建てられた病院で、どんなマテリアルが使われているのか、年代や地域から、調べることができるのです。また、マテリアルパスポートは、SNSでも使用できるようなトップサマリー、もしくは地域単位・建物単位・製品単位での詳細レポートとしてもアウトプットできるようになっていて、トラッキング機能を使って、どこから来たのか、あるいはどこへ行ったのか、把握が可能となります。

イメージ 地域・建物・製品などあらゆる単位でレポート可能。

地域・建物・製品などあらゆる単位でレポート可能。

一度使われた素材が、パスポートを持つ時にのみ次の作り手のもとに行き、新たな建物の一部としてその役割を担う。パスポートという言葉が使用されているだけに、本当に旅行のようです。建物が国だとしたら、素材は人。国から国へはパスポートが無ければ移動できず、移動するためには身分を証明しなければなりません。工期と利用期間の短いイベントという場はいわば短期の建築です。今は捨てられてしまっている様々な資材や資源が長きにわたって価値を保ったまま旅することができる世界が実現したら、私たちイベントのプロフェッショナルは、資源の旅行代理店の役割も果たすのかもしれません

施設内で発生したごみを、施設内で資源として循環させる

ストックホルムでも、こんな事例がありました。スカンジナビア最大の見本市・展示会の会場「ストックホルムメッセ」には、施設内に使い終わった建材を収集および処理ができる場所「資源ステーション」が設置されています。

イメージ ストックホルムメッセ内の資源ステーション。(撮影:松野良史)

ストックホルムメッセ内の資源ステーション。(撮影:松野良史)

会場独自のサステナブルガイドラインに基づき、出展者と施工業者が一緒になって設営・撤去で排出される資材分別を徹底しています。98%はリサイクル、再利用、またはエネルギー回収されています。ごみステーションではなく資源ステーションという名前がとても良いですね。
会場内で資源を循環させることで、廃棄物が減らせるだけではなく、処理に伴う運搬のCO2も発生せずに済みます。日本のイベント会場でも、このような仕組みが導入されれば、廃棄物が減るだけではなく、意識も変わってくるのではないでしょうか。

本書では、オランダ・スウェーデンで著者らが視察した事例を交えながら、全部で12のマインドスイッチ(サステナマインドに切り替えるためのヒント)を紹介しています)

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イメージ マインドスイッチマップ(本書より)

マインドスイッチマップ(本書より)

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