パーパスの浸透と実現は終わりのない旅  ~『パーパスの浸透と実践』によせて(鈴木武人)

コピーライターとして、パーパス言語化のお手伝いをしています。

パーパスの策定までには多くのエネルギーが使われます。企業によってその方法は様々ですが、多くの社員を巻き込んでのワークショップ。多様なステークホルダーへのインタビュー。経営層と現場とのディスカッション…。1年、2年という時間をかけることも珍しくありません。

ライターの立場からすれば、言葉が決まるのはひとつの「ゴール」です。でも、著者は言っています。「パーパスの浸透と実現は終わりのない活動」だと。長い時間をかけてたどり着いた場所は、実はゴールなき旅の「スタート」なのです。

さらに著者は続けます。
パーパスを策定、浸透させ、企業の変革や成長に正しく繋げていくには、「覚悟がいる」と。
そう。この一冊を宝物にできるかどうかは、読む側の「覚悟」にかかっているのです。

パーパスの言語化だけでなく、本書が主に取り扱っている「浸透フェイズ」のお手伝いもさせていただいています。さまざまな企業において、社員の皆さんの“座右の一冊”となるべく設計される「パーパスブック」や、「パーパスムービー」、「ポスター」、「浸透ワークショップ用ツール」等の制作です。

こうした作業を積み重ねる中で、パーパスを企業、社員の「血肉化」するには、戦略的で、継続的で、かつ創造的なアクション(=つまり大いなる力仕事)が不可欠であることをひしひしと感じます。

僕個人で言えば、パーパス言語化作業の時点で、多様な職場の皆さんがそれぞれ自分ゴト化しやすい「引き出しの多い言葉」、「骨太の言葉」。浸透のスピードを自然に速める「シンプルで、ワクワクする言葉」。浸透課題から“逆算”しての開発をより意識するようになりました。

それは、(口はばったくて申し訳ないのですが)「成功するパーパス」には、言語開発から浸透段階まで“一貫した目線”が必要だとの現場的実感に重なります。
この本には、その必要性が多彩な事例と共に語られています。そして、「一貫した目線」の下で行うべき浸透アクションの発想法、ヒント、具体的手法、現場的How toが惜し気もなく提供されています。
(本当に、読む側に「覚悟」さえあれば、本書はまさに「宝の山」なのです!)

パーパスは、ここ4~5年の間に、現代で最も有名なビジネス用語の一つとなりました。
こうした風潮の中で、実は著者にはパーパスの真の価値について語ったもう一冊の指南書があります。『パーパス・ブランディング 「何をやるか?」ではなく「なぜやるか?」から考える』(宣伝会議刊)です。
役割的に言えば、そちらが「パーパス総論」、「パーパス入門篇」という位置づけですが、パーパスの「企業を本質的に変革する力」の神髄に触れるという意味では、本書を先に体験するというのもオススメです。

さ、「覚悟」を持たれた方から、パーパスの「核心」へどうぞ。

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鈴木武人

株式会社タケト、
クリエーティブディレクター/コピーライター

電通第4クリエーティブプランニング局長、エグゼクティブクリエーティブディレクターを経て、株式会社タケト、を設立。トヨタ自動車「こども店長」、アサヒビール「コクがあるのに、キレがある」キャンペーン、三井不動産「ららぽーと」ネーミング等をはじめ、SONY、NTT、ミツカン、久光製薬、佐川急便など多様な業種のコミュニケーション作業を実施。国内外での受賞多数。現在は企業のパーパス策定プロジェクトへも積極的に参画。著書に「けたぐりコピー」(宣伝会議)、「用語でたどる広告制作ストーリー」(大修館書店)

「企業が成長し続けるための7つのステップ パーパスの浸透と実践」
著者:齊藤三希子
定価:2,420円(本体2,200円+税)

近年、多くの企業がパーパスを掲げるようになりましたが、その浸透にあたりさまざまな課題を抱えているところも少なくありません。本書はそんな課題を持つ皆さんに向けて、日本で早くからパーパス・ブランディングに取り組んできた齊藤三希子氏が書下ろしました。多くの人にパーパスを正しく認識・活用してもらうべく、その考え方、言葉の使い方などを解説。そして今回は、多くの企業で課題の多い「浸透と実践」の部分にスポットを当てて、パーパス実現への道のりと各過程における具体的な実践方法を解説しています。

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