サステナビリティに取り組んだら赤字が黒字に!?「スカンディック・ホテル」から学べること

日本のイベント制作のプロたちは、サステナビリティ先進国のオランダ・スウェーデンで何を体験し、学んできたのか?電通ライブは2023年に2カ国でのべ24カ所を視察、14企業にインタビューするツアーを実施しました。本記事では、11月8日に発売した新刊『サステナブル×イベントの未来』の中から、オランダのラーメン店「Ramen Impossible」とスウェーデンのホテル「スカンディック・ホテル」の2つの事例を紹介します。

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サステナって高い?大変?

イベント業界に限った話ではありませんが、サステナビリティに取り組むにあたって、誰しもが最初に思うのは「どうせお金がかかる」ということではないでしょうか。材質や手間が変わることでコストに跳ね返り、製品そのものやサービスが結果高くなってしまう。そういったケースは事実としてあります。
事業にポジティブな影響が与えられるかがわからず投資する意義が見出せない、コストを中途半端に抑えることで返ってチープな印象を与えてしまう、手間ばかりがかかってリソースを捻出できないなど、サステナビリティのビジネス実装に二の足を踏んでいる企業も多いでしょう。しかし一方で、サステナビリティとコストのバランスを上手く取り、負担・無理・無駄なく事業への実装をすることも可能だという例を紹介しましょう。

プラントベースだからこそ収益性と低い環境負荷を両立

1つ目はアムステルダムにあるラーメン店「Ramen Impossible」です。100%プラントベースのラーメンを提供しています。ブランドオーナーの石田敦士さんは、2013年(当時34歳)に異業種からラーメン業界に転身し、日本国内のラーメン店で修業を重ねました。当時既に、世界中の飢餓や格差などの社会課題をなんとかしたいという想いを抱いていたそうです。
その後海外での開業を目指し、2014年11月にドイツへ、さらに2016年からはオランダのラーメン店に勤務し、2017年10月にアムステルダムで(Ramen Impossibleの前にオープンした1号店)を開業しました。ヴィーガンではない人たちにも人気のプラントベースラーメン店を作ることができれば、世界の食料不平等問題解消の突破口になる。そう信じて活動を続け、現在はアムステルダムで直営3店舗を運営し、さらにはロンドン、ロサンゼルス、そして日本の長野県松本市でも系列店がオープンしています。サステナビリティへの配慮が、多店舗展開という形でビジネス拡大にも寄与していることがうかがえます。

写真 「Ramen Impossible」のみそラーメン。(撮影:松野良史)

「Ramen Impossible」のみそラーメン。(撮影:松野良史)

Ramen Impossibleで提供されるラーメンは生肉はもちろん、生野菜の使用も少量に抑えることで、フードロス削減につなげています。また、動物性の食材を扱わないため、廃棄物も少なく、当然動物性の脂も出ません。このため、ラーメン店で一般的に必要とされる、動物性の脂を含んだ排水が直接下水に流れるのを防ぐ装置「グリーストラップ」も不要なのです。
スープを作るために動物の骨や野菜を長時間煮込む必要もなく、実は通常のラーメンよりもはるかに低コストで作れるくらいだと言います。設備費・光熱費・人件費・CO2排出量など、あらゆるものを抑制しながら、ラーメンを提供しています。

訪問時は「まぜ麺」と「みそラーメン」を注文しました。アムステルダム市内のラーメン店では標準的な価格帯でありながら、満足度は非常に高かったのです。
普段なら残してしまうこともあるラーメンのスープも、ここでは遠慮なく飲み干すことができました。湯葉の唐揚げも絶品でしたし、麺もつるつるとして非常に食べやすい喉越しでした。
プラントベースと呼ぶことにもこだわりがあると言います。ヴィーガンレストランと言ってしまうとヴィーガンの方にしか来てもらえなくなってしまうため、プラントベースのラーメンと呼び、ヴィーガンでない人にも提供できてこそ、持続可能性の広がりや効果があるのだと石田さんは言います。

Ramen Impossibleを直訳すれば「ありえないラーメン」ですが、日本のラーメンで育った私たちにとっては、店名どおりのインパクトがありました。
日本のラーメン業界に目を向けると、相次ぐ倒産のニュースを見かけます。物価高騰・人件費高騰・光熱費高騰・設備費高騰・千円の壁、様々な理由が挙げられています。気軽な国民食と言われ、なかなか値上げできない、数が多いので差別化を図りづらく店の淘汰が続く…そんな実情があるようです。

ラーメン業界に言及する立場にはないため、私たちはただただ食べることで応援するばかりですが、サステナビリティに取り組むことで、開ける道もあるのではないでしょうか。Ramen Impossibleでの取り組みはとてもわかりやすく、シンプルなものだと感じました。
石田さんから別れ際に聞いた「どんな業界でも負担や無理なく、むしろサステナブルな方がもっと稼げるというモデルはつくれると思いますし、そうなっていかなければならないですよね」という言葉は、日本に戻ってからも、しっかり頭に残っています。イベント業界のそれはどんなものかと今も模索しています。

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