サステナビリティに取り組んだら赤字が黒字に!?「スカンディック・ホテル」から学べること

サステナビリティに取り組んだら赤字が黒字に

「サステナビリティは高い」の思い込みを覆す2つ目の事例は、ストックホルムにある 「スカンディック・ホテル」です。ホテル業界のサステナブルブランドの開拓者と言える存在です。
スカンディック・ホテルは、ホテルチェーンとして世界初の環境ラベル認証を取得しています。1963年に開業し、1980年代までB&Bタイプのエコノミーホテルでしたが、価格競争で経営危機に直面し、苦しい状況を脱するためにサステナビリティを軸にブランドを再構築し、赤字経営から黒字経営への転換を遂げたのです。

イメージ サステナブル型ホテルとして知られる「スカンディック・ホテル」。(撮影:松野良史)

サステナブル型ホテルとして知られる「スカンディック・ホテル」。(撮影:松野良史)

現在も成長を続け、ホテル業界ではサステナビリティのリーダーとして存在感を放っています。最初の取り組みは、サステナビリティを企業文化として定着させるため、役員から社員、アルバイトまで、自然規律に基づくサステナビリティ教育を実施することでした。その後、社内の誰もが提案できるアイデアボックスを設置しました。
そこで提案されたサステナビリティに関する2000を超えるアイデアが、現場に実装され、今でも取り組まれています。日本のホテルチェーンでも最近よく見かけるようになった「使い捨てのアメニティ廃止」などの取り組みも、ほとんどの始まりはスカンディック・ホテルなのです。

取り組み例
● 連泊時のタオル取り換えの選択
● 脱プラ(石油系プラ素材のハンガー、ペン、ドアキーなどを自然素材へ)
● 分別ごみ箱による宿泊者の意識啓発と取り組みへの参加
● オーガニック&フェアトレード食材を多く使った朝食
● 同グループの各ホテルでサステナビリティの進捗比較ができるシステム「サステナビリティ・ライブ・レポート」導入
● ホームレスの方々を招いた食事会の実施
● ルーム清掃担当者の健康に配慮した道具の開発
● 朝食は小分けにしてロスを削減(皿のサイズも小さく)
● 床清掃に水を使用せずマイクロファイバーモップを使用
● 使い捨てのアメニティ廃止(必要な人は購入)
● 100%再生可能なエネルギーを電力会社と契約(水力、風力、バイオマス) etc.

例えば、環境に配慮した建材使用なども、短期的に見れば高いかもしれませんが、長期的に見れば光熱費などのコスト削減につながるため、理にかなった選択だと評価されています。「私たちはホテルの部屋を自然に手渡すことができます」—これはスカンディック・ホテルが使っている言葉ですが、独自の環境基準を設ける中で、使用する建材を地下(石油)由来から地上(自然)由来に切り替えてリフォームを行ったそうです。
通常のリフォームより当然高かったようですが、環境基準を守りながら、環境ラベル認証も取得、エネルギー効率やメンテナンス性も改善されたことにより、ホテル全体の運営コスト自体は下がりました。

また、ホテル内にあるウォーターステーションでリフィル可能なガラスのウォーターボトルを採用していますが、このデザインにも驚かされました。ガラスボトルをよく見ると、人が握った凹凸のある手形が施されていたのです。
オリンピックに出場したこともあるスウェーデンの女性水泳選手の手形だそうですが、サステナビリティに配慮することでデザイン性が失われてはいけないという理由で導入されたそうです。思わず持ちたくなるデザインで、ボトル自体も持ちやすくなり機能性も向上しています。小さい取り組みながら、持続可能な社会の実現に間違いなく寄与しています。

写真 リフィル可能なウォーターボトル。手形のデザインが特徴。(撮影:One Planet Café)

リフィル可能なウォーターボトル。手形のデザインが特徴。(撮影:One Planet Café)

サステナビリティはイベント産業でも低コスト・高付加価値のドライバーになるRamen Impossibleとスカンディック・ホテルに共通するのは、サステナビリティに取り組んだ結果、ビジネスの拡大につながっていることです。言葉を選ばずに書きますが、自社事業と関係なくとも、なんとなく社会に対して良いことをしていれば良かった10年前の感覚とは大きく異なり、サステナビリティはいまや儲けていいというのが常識になりつつあります。
イベント産業でも、サステナビリティには取り組まなければなりませんが、お金がかかるとネガティブに決めつける必要はないという気づきが得られました。工夫次第で負担・無理・無駄なく取り組めて収益にも結びつくことが、イベントの中でもきっとあるはずです。
また、一つの施策で大きなコストがかかったとしても、その効果によって別のコストが下がることもあります。常に全体を俯瞰しながら、長期の視点を持って検証し、コストを再配分できるマインドを、早急にスイッチ・オンしなければならないのです。

本書では、オランダ・スウェーデンで著者らが視察した事例を交えながら、全部で12のマインドスイッチ(サステナマインドに切り替えるためのヒント)を紹介しています)

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イメージ マインドスイッチマップ(本書より)

マインドスイッチマップ(本書より)

宣伝会議サミットONLINEで著者登壇決定!
11月22日14:10〜14:40、著者の1人である大髙良和氏がウェビナーに登壇します。テーマは「ブランドプロモーションに必要なサステナマインドとは?」。本書の内容を中心に講演の予定です。
お申し込みはこちらから。
(要事前申込、参加無料)

2,200円(本体2,000円+税)

『サステナブル×イベントの未来 オランダ・スウェーデンで出会った12のマインドスイッチ』
大髙良和、松野良史、西崎龍一朗著

イベント制作のプロたちが、サステナブル先進国であるオランダ・スウェーデンへの視察から得た学びを、12の「マインドスイッチ」に凝縮して提案。あらゆるイベントで実践できる、サステナビリティに取り組むヒントが満載。


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