強みと課題を持ち寄り、組み合わせによる新しいアイデアをつくる―カインズ、GROOVE X、サンスター、ニチバンのマーケターはどんな答えを導きだしたのか?

サンスターの鈴木氏は、自社のカスタマージャーニーについて、GROOVE Xとは「まったく逆」と語る。同社の主力カテゴリーであるオーラルケアは、もはや他社製を含めると国内における商品利用率はほぼ100%だと考えられる。そこでライフステージでオーラルケアをとらえなおし、「無意識の衛生習慣」から「意味ある健康行動」に価値転換することを目指している。

例えば、主力のGUMブランドでは、「歯周病予防を通じて、お口を健康に保つ」という「意味」を強め、さらに防災という観点では、オーラルケアを「災害時、命を守る行動」と位置付けるなど、気づきを感じてもらう活動に力を入れている。

ニチバンの富田氏からは、多様な商品群を抱えるため、カスタマージャーニーマップが複雑化しすぎている、という現状の課題が共有された。例えば、同社の登録商標である「セロテープ」は、「セロハンテープ」という商品カテゴリーを称するとも言えるもので認知度は圧倒的に高い。

一方で、同じく主力商品である絆創膏の「ケアリーヴ」は、登録商標であるが、他社の商標の方が認知度が高い。実は流通量などに大きな差はないのだが、それでも認知度の差は追いつくことが難しい。そのジレンマを抱えていると語った。

写真 人物 個人 ニチバン 事業戦略本部 執行役員 本部長補佐 富田 英樹氏。

ニチバン 事業戦略本部 執行役員 本部長補佐 富田 英樹氏。

カインズは、ホームセンターの同業他社に比べて女性に支持される店内を心がけているという。その背景には、昔ながらの男性向けホームセンターでは顧客の広がりに限界を感じたことがある。そこで30~40代の女性を主軸に転換。洗剤やキッチン用品などの生活必需品を揃えながら、調理器具や防災用品、さらに専門領域としてペット用品、園芸・ガーデニング用品などを取り揃えている。女性をターゲットにしたのは、家に関わる商品の購入決裁権を女性が持つことが多いため。生活必需品をベースとしながらも、PB商品を多く用意している、同社が「くらしDIY」と表現するライトなDIYや専門領域へと興味をつなげていくことを考えている。

NBとPBの役割はどう違う? メーカーと小売りのこれからの関係を考える

続いて、各社のブランドが属するカテゴリーの課題(課題の特定)と、それを解決するマーケティング戦略の大方針について話し合いが進んだ。

サンスターの鈴木氏は、「カテゴリーそのものの価値・意味を置き直す」という大きな視点を課題として挙げた。オーラルケアカテゴリーは、おおむね生活習慣として定着している一方、一般的に自己関与が低いため、例えば自分がどのブランドのハミガキを使っているか答えられない人も多い。定着すればするほど生活の一部になり、これはブランドの一つのあり方かもしれないが、いかに「その行動の価値」や「そのカテゴリーが必要になるシーン」に共感・納得を得るか、がチャレンジだと認識しているという。その意味づけがなされることで、高機能のものなど単価が高いものが売れるようになると考えている。

写真 人物 個人 サンスターグループ 執行役員 アジア・日本エリア 消費財マーケティング担当 鈴木 裕子氏

サンスターグループ 執行役員 アジア・日本エリア 消費財マーケティング担当 鈴木 裕子氏。

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