強みと課題を持ち寄り、組み合わせによる新しいアイデアをつくる―カインズ、GROOVE X、サンスター、ニチバンのマーケターはどんな答えを導きだしたのか?

ニチバンの富田氏は、サンスターと同じ感覚を持っている。圧倒的な知名度がある商品は、他の商品を選ばれたとしても、その商品名で呼ばれてしまうことがあるという。そのうえで富田氏は「ありがたいことに、一般的で当たり前になっている商品ばかり。ただ、小売店のPBのレベルが上がっていて、機能を高めるだけでは差別化が難しくなっている」という。天然素材を使っているなど商品特性はあるものの、お客様の製品理解にはつながっていないと考えている。そこで使用体験の創出、ファン化に取り組んでいる。

カインズの石橋氏は、サンスター、ニチバンのナショナルブランド(NB)両社の話を聞いて、小売店としてプライベートブランド(PB)の比率をやみくもに高めることが良いと考えているわけではないと自身の考えを示した。

NBにすでにあるものはメーカーの力を借り、ないものをPBでつくる、という発想だ。NBとPBで競うのではなく、マーケットを広げていくことをともにしていく関係性になりたいと考えているという。さらに石橋氏は「自社においては、リアリティのある活動を重視。暮らしのなかでやってみることを、くらしDIYと捉え、それを実現してもらうことを大切にしている。メーカーからは顧客が目の前にいる良さを言っていただけるが、マーケティングとしては、目の前にいるがゆえに、切り替えの難しさがある」とも語った。

写真 人物 個人 カインズ 執行役員CMO 兼 マーケティング本部長 兼 ブランド戦略部 部長 石橋 雅史氏。

カインズ 執行役員CMO 兼 マーケティング本部長 兼 ブランド戦略部 部長 石橋 雅史氏。

GROOVE Xの家永氏は、「そもそも『ロボットと暮らす』という文化がまだ世の中にない」という、他3社とは異なる課題を挙げた。そこで、このカテゴリーをつくらないと、ロボットを単体でどれだけマーケティングしても、変わっていかないと考えている。カテゴリーが存在しなければ、「ロボットと暮らす」=変わった人、寂しい人のレッテルを貼られてしまう。一方で一緒に暮らした方の97%は満足されている。そのギャップを埋め、ロボットと暮らすことをCoolな文化、未来のライフスタイルのひとつの形だという認識を広げていくことを考えている。

マーケターが期待するほど、自社の思いはお客さまに伝わっていない!?

研究会の最後の議論のテーマは、それぞれのマーケターが「他の参加企業のCMOだったら、どんな戦略を考えるか」。引き続き熱のこもったトークが展開された。

富田氏は、自由にカインズ商品を使える、コワーキングスペースのような作業スペースの貸出を提案。自身が畳の処分に苦慮したエピソードから「新しいものをつくるだけでなく、廃棄処分のために機材を使用したいというニーズもあるのでは?」とアイデアを提示した。

これを発展させて、ガレージとしての契約形態も可能ではないかと考えたという。また、車が必須の店舗立地を考え、高齢者などへ向けた移動販売や、PB商品の小売店への小ロット提供などの可能性も提示した。

石橋氏は、店頭でもペット関連商品を扱っている視点から、GROOVE XのロボットLOVOTと、ペット市場との緊密かつ自然な連携を提案する。ペットとの別れは必ず訪れるが、飼い主にはとても辛いもの。次のペットを飼うことの選択肢にロボットがなれるのではないかとのアイデアを提示した。

家永氏はサンスターについて、オーラルケア診断をオンラインで簡単に受けられるサービスを提案。その結果をもとにセミオーダーメイドで自分に最適なキットが定期便として届くビジネスモデルをつくることで、単価アップとともに、ブランド帰属を促進できるとの考えを提案した。

鈴木氏は、自社が関西に拠点があるためホームセンターとして他社の名前が思い浮かぶが、今回カインズについて調べると、そのセンスの良さに驚いたという。そこで提案したのが「現代の暮らしの中で、センスのいいDIY」。ひと手間かけることでセンスの良い生活ができること、そのためにカインズが役立つことをすでに伝えているが、それをもっと強く打ち出すことで、全国でのブランド認知力向上や、指名来店につながると考えた。

最後の感想として、各マーケターから、とくに他社からの指摘に対して「自社に軸足においてはできない発想だった」「そう思われないように努力しているけど、まだ伝わっていないことがわかった」といった感想が出るなど、満足感があふれる感想のなか本研究会は締めくくられた。

写真 商品・製品 CMO Xの研究会では、参加企業が自社の商品やサービスの体験価値が伝わるものを持ち寄り、互いのブランドを共有して議論を重ねていく。

CMO Xの研究会では、参加企業が自社の商品やサービスの体験価値が伝わるものを持ち寄り、互いのブランドを共有して議論を重ねていく。

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