エンゲージメントを向上させる社内広報、マーケティング思考のファン創りとは

従業員と企業のつながりを作るといわれる「インターナルコミュニケーション」だが、「どんな策を講じればエンゲージメントの向上につながり、企業理念や経営方針が浸透するのか」と悩む広報担当も多いのではないだろうか。
本記事は2024年10月に開催された「インターナルコミュニケーション・デイ」から、注目セミナーをレポート。戸田建設広報部長の佐藤 洋人 氏は「エンゲージメント向上とインターナルコミュニケーション」をテーマに、社員の行動変容を促すコミュニケーション戦略について紹介した。

ブランディングの障壁は世代間のギャップ

1881年創業の戸田建設は病院や学校、ビルなどの建築事業、山岳トンネル、再エネ関連工事などの土木事業を手がけている。「当社は歴史や実績を積み重ねてきたにも関わらず世間からの認知が高くないため、商談の場では相手の信頼を得るために会社紹介に多くの時間を割かなければなりません。認知度が高まればこの時間を省くことができ、もう少し本質的な話題に時間を割くことが出来るわけです。こうした認知度の低さを懸念する社員の声がブランディング活動のきっかけとなりました。」と佐藤氏は話す。一方で、「自社の良さをどれだけの社員が語れるかという思いもあり、インナーブランディングも必要だと考えるようになりました」と佐藤氏は続けた。
戸田建設は2019年に認知獲得を目的にブランドの再構築、インナーブランディングに力を入れるため、全国の若手社員を中心にワーキンググループを立ち上げた。2020年は構築期として、社員一人ひとりが「自社はどういう存在か」という課題に向き合いブランドのリブランディングに 取り組んだ。

話し合った内容や考えたことを全て言語化して残し、後にブランドメッセージをつくる時の材料にする予定だったという。しかし、社長交代を機に一旦、インターナルブランディングの見直しが必要となる中、最大の障壁となったのは、認識の世代間ギャップだった。 「ゼネコンは一般消費者とは取引をしないから認知はいらないのでは」という年長者の意見に対し、「リクルートには学生やその親に自社を知ってもらう必要がある」「認知が足りていないから飛び込み営業をした時に受け入れてもらえない」という若手の声もあった。その世代間のギャップを埋めるために、メンバーは社内アンケートや各種データを分析して着地点を探ることとした。

アンケートから見えてきた社員の声

社員へアンケートを行ってみると、会社に望むこととして最も多かった声は「知名度を高めて欲しい」「会社の良さ・特徴を周知させて欲しい」だったという。また、調査会社にゼネコン会社としての認知度について分析を依頼すると、一般消費者15位、大学生11位という認知度の低さが浮き彫りに。課題を上層部に報告するなどして、最終的に経営層からの承認が得られ、ブランディング活動を再び始めることができるようになった。2020年までに話し合いをし尽していたこともあり、再始動してからはスムーズに進んだという。2022年5月には新ブランドスローガン「Build the Culture. 人がつくる。人でつくる。」を策定。ブランドメッセージが決まってからは、社内向けのサイトでメッセージの浸透を図ったり、毎年10月をブランド浸透のためのブランド月間と位置づけ、社長が動画を通じてブランドを社員全員で共有することの重要性を説き、その先に期待する社員像を語る動画を公開。そのほか、社員による意見交換会(ブランドトーク)は、社員一人ひとりがブランドを見つめる機会になっている。

社外認知向上の策として、TVCMではタレントを起用した。採用担当の社員が上層部に「これまで通りのCMだと学生に知ってもらえない」と提言。若手の意見を汲み取り、タレントの起用に至ったのだという。新ブランドメッセージを落とし込んだCMは、全社員が納得できる内容に仕上がった。

社内のイノベーターを支援する取り組み

続いて、佐藤氏はマーケティング思考のファン創りについて話した。ある社員が、大学で講義をするなど社外に行動を広げ、周りの人に影響を与える取り組みをしていることがわかった。こうした社員を支えることで会社を大きく変えてくれる存在になるかもしれないと考えた佐藤氏は、消費者を価値観や行動によって5つのタイプに分類し新しい商品やサービスが普及する流れを分析した「イノベーター理論」を社内広報の取り組みに応用した。社内に2.5%いる「イノベーター(革新者)」を支援すれば、13.5%の「アーリーアダプター(初期採用者)」に該当する人たちに一歩を踏み出す勇気を与える。

そうすれば会社がよりよい方向に変わっていくかもしれないと考え、社内報で「イノベーター(革新者)」と思われるような従業員を取り上げ、検証を始めているという。最後に佐藤氏は「インターナルコミュニケーションの目指すべき姿とは、自社ブランドの社内浸透活動をしつこく、粘り強く繰り返す中で見えてくるものだと信じています」と締めくくった。 

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