エンゲージメントを向上させる、ゆるやかな「つながり」創りとは

コロナ禍をきっかけに働く環境が変わり、職場と社員のつながりが希薄化していると感じる広報担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、2024年10月に開催された「インターナルコミュニケーション・デイ」の注目セミナーをレポートします。
三菱UFJ信託銀行の経営企画部インターナルコミュニケーション室長、桑原慶氏は「インターナルコミュニケーションの可能性と目指すもの」をテーマに、エンゲージメントを向上させるための、ゆるやかな「つながり」創りについて紹介しました。

エンゲージメント向上の責任と権限の所在は

三菱UFJ信託銀行は、銀行業務に加え、資産運用・管理、年金、証券代行などの事業を展開しています。2019年以降、三菱UFJフィナンシャルグループ全体でエンゲージメント等に関する社員の意識調査を実施してきました。2021年と2022年の三菱UFJ信託銀行は、コロナ禍にもかかわらず業績が非常に好調であった一方、最重視している「当社を素晴らしい職場として推奨する」という従業員エンゲージメントの総合指標設問に対するスコアは下がってしまいました。この結果を重く受け止めた経営陣は何度も議論をし、最終的に、エンゲージメント向上を会社の最優先課題と位置付け、2つの方向性を定めました。

1つ目は、現場と本部の役割の明確化です。従業員エンゲージメント向上は各現場のマネジメントのタスクであり、担当役員がその最終責任を負うこと、本部の役割は現場の取り組みのサポートを行うこと、を明確化しました。2つ目は、トップの強い意志で、エンゲージメント向上をミッションとする専担組織を設立することです。これにより、桑原氏が所属するインターナルコミュニケーション室(IC室)が2023年4月に設置されました。「この役員間の議論と方向性の提示が、当社全体のエンゲージメント向上への意識を高める決定的なターニングポイントだった」と桑原氏は話します。その結果、現在では、エンゲージメント向上のため、部門・事業など現場が主体的に工夫を凝らして取り組みを行っています。IC室は、現場での取り組みではカバーできない、全社・部門横断の企画を運営したり、種々の理由で現場の声が経営に届いていないと思われる組織を支援し、現場をサポートする役割を果たしています。

「つながり」がエンゲージメント向上のキーワードに

エンゲージメントを高めるための取り組みとして、ウェルビーイングの研究を進める3名の専門家、慶應義塾大学教授の前野隆司氏、公益財団法人Well-being for Planet Earthの石川善樹氏、日立製作所のフェローでハピネスプラネットの矢野和男氏から、社内向けの勉強会や社外講演会で話を聞きました。そこで挙げられたキーワードは「ゆるやかなつながり」「居場所」「用事のないつながり」でした。IC室はこれを基礎に「つながり」創りを進めています。

コロナ禍による在宅勤務の増加や、業務量の増加・残業削減の流れから、従来は社員間の雑談や会社情報を収集することに費やしていた「可処分時間」が大きく減少してしまったこと、働き方の多様化により増加している産休・育休社員や、他社への出向社員が、ITセキュリティの問題で社内報ポータルにアクセスできないなど、社員が会社や仲間との「つながり」を断絶せざるを得ない状況が増えていました。そこで、Yappli UNITEをプラットフォームとした社員向けの「Kakehashiアプリ」を導入し、社員の私用スマホへダウンロードしてもらうことで、業務時間「外」や社内ネットワーク「外」でも社員が社内報情報にアクセスできる環境を整えました。ダウンロードは任意ですが、多くの社員に好評です。

また、このアプリではポイントを貯めることができ、社員が、ポイントを行使して、寄付先や寄付金額を決める枠組みを作り、社外との「つながり」を創出しました。さらに、ポイント寄付を行った社員の中からランダムに選ばれた社員に寄付の贈呈式に参加してもらい、一時的にとどまらない、継続的でゆるやかな「つながり」を創る工夫をしました。

現場の声を届ける施策

エンゲージメントの低下は、「現場の声が経営層に届いていない」ことから引き起こされるという仮説のもと、前述の意識調査に加え、IC室は全国の拠点を回り、現場社員と対面でヒアリングを行い、現場の声を集めて経営層に届ける取り組みをしています。社員の勤続年数や立場等の社員の属性によって課題や問題意識が異なるため、「エンゲージメント向上にも、マーケティング思考で、優先順位をつけてターゲティングし、ターゲットごとに打ち手を変えることが重要である」と桑原氏は話します。

また、社員が働きやすくやりがいのある職場を作るための社員手挙げ制プロジェクトも開始し、社員が自分たちの会社を変えるために自ら動く枠組みを創りました。既存の意識調査や役員360度評価についても、社員の声が経営により正しく確実に届く工夫など、社員と社内外のゆるやかな「つながり」を創る取り組み例を紹介し、インターナルコミュニケーションの可能性を示しました。

最後に桑原氏は「エンゲージメントの取り組みについて、さまざまな企業と情報交換などを通じて互いに高め合える関係を目指しています。ぜひ皆さんの課題や悩み、取り組みを教えてください」と語りかけました。

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