消費者は違う。でも共通点もある
──2度もの海外赴任から学んだことは何ですか。
2006年にオーストラリア、2018年にスイスへ赴任しました。そこで学んだのは「消費者は違う。でも共通点もある」ということ。例えば「キットカット」のバーは、2連の仕様が浸透しているのは日本だけ。多くの諸外国では4連です。日本も「キットカット」の上陸当初は4連でしたが、日本人好みの小さいサイズの方が売れたんです。ところが、大きめの1本バータイプは、諸外国と同じく日本でも売れました。
営業時代に体感したように、確かに消費者は場所ごとに全然異なるニーズを持つ。一方で、世界中で共通する点もあるのでは、と。私にはそっちの方が興味深く思えました。そこで、帰国して取り組んだのは、国外で成功したアイデアを日本向けに仕立て直すこと。大人の需要を拡大した「キットカット オトナの甘さ」シリーズや、シーズンギフトの市場を開拓したキャラクター型キットカットを開発しました。
マスメディアン
取締役 国家資格キャリアコンサルタント
荒川直哉
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名以上の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。
充実感を得られるのは消費者のための仕事ができたとき
──そこからなぜ転職をしようと考えたのですか?
はたから見ると、私の履歴書ってかっこよくないですか?(笑)外資系企業の本社に赴任してグローバルブランドマネージャーを経験した日本人は、そう多くないですから。でも、私にとっては最上の幸せというわけではありませんでした。
自分の価値観と向き合ってみようと思い立ち、人生の出来事と幸福感を可視化するライフチャートを作成。すると「消費者のための仕事ができた」と心から思えたときに、充実感を得られるとわかったんです。
2014年に「キットカットショコラトリー」というチョコレートのブティックを立ち上げる話が出た際、社内では、前例がないと否定もありました。しかし、監修を依頼したパティシエの高木康政さんとは「いま消費者は生活の彩りを求めている。喜ばれる企画だから絶対に実現させよう」と意見が一致しました。会社が違っても、同じ方向を目指せたのがすごくうれしくて。幸福度グラフもぐっと上向きになっていたんです。ああ、これだなと、今後は消費者と向き合う仕事を追求しようと決めました。