日本マクドナルドホールディングス 取締役、日本マクドナルド 取締役 上席執行役員 CMO ズナイデン房子氏。
(左から)dentsu Japan グロースオフィサー/エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター/CMプランナー/脚本家 澤本嘉光氏、catch クリエイティブディレクター/コピーライター 福部明浩氏。
目指すのは「LIKEからLOVEへ」
日本マクドナルドの2024年の広告は、そのクリエイティビティが特に際立ち、結果を伴うものだった。世界最大のクリエイティビティの祭典、カンヌライオンズでは、店舗で働く「クルー」のリクルーティングを目的としたMV「スマイルあげない」で金賞を受賞した。
2024年11月に発表された日本最大の広告賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS(ACC賞)では、「夜マック」の「特別じゃない、しあわせな時間。」シリーズがフィルム部門Bカテゴリー(テレビCM以外が対象)においてACCグランプリを受賞。「オードリーのオールナイトマック」がメディアクリエイティブ部門で同じくACCグランプリを受賞。「スマイルあげない」がフィルム部門Bカテゴリーでゴールドを、マックフライポテトのプロモーション「ティロリミックス」がフィルムクラフト部門ゴールドを受賞など、クリエイティビティを評価するアワードにおける快進撃が続いている。
同時に業績も伴っており、2024年の全店売上高は過去最高益を更新した23年をさらに上回る見込み(24年11月時点)だ。良いクリエイティブが良い業績を生む。それを今日本で最も体現している企業と言っても過言ではない。
そんなマクドナルドで広告コミュニケーションをリードするのは、CMOのズナイデン房子さん。2018年に同社に入社して以来、「LIKEからLOVEへ」をテーマに広告を展開してきた。「ブランドとお客さまの関係は、人と人との関係そのものだと思うんです。環境の変化があっても、愛している人は替えが効かない。お客さまと当社がそんな関係になれれば、健全かつ中長期的にブランドを成長させていけるのではないかと考えています。では、どんな人が愛されるのか?それは『自分のことをわかってくれる』『一緒にいると自分らしくいられる』、そんな存在だと思います。そのためクリエイティブをつくる時には、お客さまの心を捉えること、もっと言えば、お客さまも気付いていないような深層心理を捉えて、そこに訴えかけることを大切にしています」(ズナイデンさん)。
その点で言えば、2024年は「着実に実績を重ねられた年」だと語る。「クリエイターの皆さんから、私たちが想像もしなかったようなたくさんのアイデアをいただき、順調に目標に近付けたと思います。でもまだまだ道半ば。『LOVE』は一足飛びに生まれるものではなく長い時間をかけて積み重ねていくことで醸成されていくものですから、引き続き注力していきたいポイントです」。
「変わること」と「変わらないこと」
消費者の心を捉える、そのためにズナイデンさんは、2つの心理を重視しているという。「『変化していく部分』と『普遍的な部分』です。コロナ禍以降、お客さまの生活スタイルや価値観はガラッと変わり、当社に求められることも猛スピードで変化しています。一方で、その心の奥深くには、変わらない普遍的な心理もある。世の中の動きを捉えながら、変化する部分に訴えるべきか、普遍性に訴えるべきかと考え、クリエイターの皆さんと一つひとつの施策に”一球入魂”するつもりで取り組んでいます」。
そのうち「普遍性」を、軽やかに、しかしがっちりと捉えたのは、2024年7月に公開されたビッグマックのテレビCM「あしたも、笑おう。」篇だ。1987年から放映され、多くの人の心に残り続けているコカ・コーラの名作CM「I feel Coke」を、ビッグマック版としてリバイバルさせたのだ。
2024年7月に公開された、ビッグマックの「あしたも、笑おう。」篇(60秒)。佐藤竹善による楽曲『I feel Coke』も当時のまま使用している。
「マクドナルドは幅広い世代のお客さまにご利用いただいていますが、中には『昔はビッグマックもペロリと食べられたけど、最近はちょっと離れてしまっている』という方もいると思うんです。そんな方々に、もう一度ビッグマックを召し上がっていただくにはどうしたらいいのだろう?と考えていました。『あの頃みたいに豪快に食べたい』という深層心理に働きかけるような広告ができないか、と思ったんです」(ズナイデンさん)。
アイデアの発端は、ズナイデンさんのルーティンからだった。・・・以降は月刊『ブレーン』2025年1月号、もしくはデジタル版記事(ご購読が必要です)でご覧ください。
この後のトピックス
・「多幸感」溢れる映像の舞台裏
・ズナイデン氏の“審美眼”、どう身に着けた?
・「青いマックの日」今年は音楽フェスに
・日本マクドナルド 2025年の3つの注力領域とは