そして2022年11月15日火曜日、バラバティ・スタジアムで開催されたイベントでは、2121人の学生が35分間で、22473個の折り紙ボートを1つの会場で作り上げました。結果の検証後、ギネス世界記録の審査員はこの試みの成功を確認し、記録保持者証明書をカタック市長に授与しました。
授賞式の様子(コンセプトPR提供)
折り紙でつながる過去と現在、コミュニティ、そしてインドと世界
同イベントを企画したスニール・ナイル(Sunil Nair)氏は、以下のようにコメントしています。
「私たちが達成した記録はバリヤトラ祭の本質を反映しています。私たちの目標は、コミュニティを団結させ、この貴重な伝統を世界と共有することでした。そのためには、ボートのような象徴的なものをつくること以上に良い方法があるでしょうか?このギネス世界記録は、カタックの誇りであり、バリヤトラ祭の精神の証でもあります。私たちは、オリッサの活気ある文化遺産を称える形で過去と現在を結びつけ、地元と世界を共鳴させる瞬間を創造できたことに興奮を覚えました」。
「インドの全国レベル、州レベルの新聞やオンラインメディアがこぞって同イベントを取り上げた」と、もう一人の企画者であるアトゥル・マヘシュワリ(Atul Maheshwari)氏は言います。彼によればナレンダ・モディ首相がインドネシアのバリ島で講演した際に、2022年の同イベントについて引用したとは、特筆すべきとのことです。
本事例からの学び
本事例からの学びとしては、まずニュースバリュー向上の工夫です。同州の8歳から14歳の学生5000人を巻き込んだことで、親や兄弟、家族なども含めて、もともとインドではよく知られたバリヤトラ祭のさらなる自分ゴト化が進み、公共性が強化されたのではないでしょうか。
また、ギネス記録を打ち立てるという一つの目標を設定したことで、オーディエンスの焦点、目標が一致する効果を想像できます。この効果は、迫りゆくイベント当日までの期待感の醸成に繋がり、結果、多くのメディアが取り上げるメディア露出につながったのではないでしょうか。
次に、インドにとっての異国でありつつアジアの仲間、遠く海のかなたにある日本の折り紙という文化が、バリヤトラ祭の国際性を大いに演出したように思います。バリヤトラ祭がインドと、海洋を隔てたインドネシアのバリ島とのつながりにまつわるイベントであること自体が、国際性を感じさせますが、折り紙によってさらに印象的になったように思います。
また、例年の倍以上も広くなった会場や、数千人が数万の折り紙ボートを川に流す壮観さや、その幻想性を醸し出す仕組みのタネとして折り紙でギネス世界記録をつくる試みを採用した点は、優れたアイデアでしょう。
以前に、プエルトリコで行われた髪染めギネス世界記録イベントを取り上げ、ユーモアが果たした役割が大きいと指摘しました。このギネス世界記録イベントでは、子どもがトレーニングを経て、繊細な取り扱いが求められる折り紙をスピーディに折っていくことへのポジティブな驚き、ワンダフルさが鍵だったように思いますが、いかがでしょうか。
さて次回、連載第5回目はインドとはいろいろな点で異なる北欧の国、スウェーデンの会社によるPRグッドプラクティス(好事例)をご紹介します。引き続きお楽しみください!