チームの共創拠点「B1」開設 ゼブラ企業のベルマーレが今、目指すもの

湘南ベルマーレフットサルクラブは今年10月にクラブの新拠点「B1(ビーワン)」をオープンしました。社会にインパクトを与える共創の場にしたいとの思いから「Social Impact Base」というコンセプトにしました。

イメージ 湘南ベルマーレフットサルクラブは今年10月にクラブの新拠点

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イメージ 湘南ベルマーレフットサルクラブは今年10月にクラブの新拠点

スポーツには、人をつなぐ力や巻き込む力があり、本当に多様なステークホルダーがいます。みんなが一堂に会する試合会場のスタジアムやアリーナはとても活気に満ちていて、密なコミュニケーションがなされています。

ただ年間のホームタウンでの試合数には限りがあり、私たちFリーグ(日本フットサルリーグ)でいうとホームタウンでの試合は年間11試合しかありません。

この新拠点「B1」開設の理由のひとつに常日頃から集まれる拠点を街中に整備したかったというのがあります。

“街中”ということにもこだわりました。私たちのようなクラブチームの事務所はグラウンドなど競技の場の中にあることが多く、駅近や街中につくるのが少し困難で、郊外にあることが多いです。

チームを管理しやすいというメリットもあるのですが、移動に車が必要で、人の往来に一定のハードルがあるように思います。そのためクラブの新拠点「B1」は駅前商店街という立地を選び、そこにクラブの事務所を併設しました。

場所が決まり、オープンまでの間にコンセプトを言語化するミーティングを重ねました。最初は「地方の過疎化に対して…」とか「関係人口を増やすために…」とか具体的な活動まで落とし込もうと思ったのですが、よくよく考えると課題は千差万別。その時々で変化していくものです。

そのため、最も重要なことはその時の課題が何なのかを常日頃から伝え合う場であることと、浮き上がった課題に対し、すぐ実行者を集め、即日スタートを切れるような仕組みが必要だと考えました。それらを反映したコンセプトとなりました。

イメージ コンセプトを言語化

イメージ コンセプトを言語化

オープンから1カ月の間に昼も夜も本当に多くの方が集まってくれました。

拠点を構えて気づいたことは「自分たちが人とつながれる力」と、「人と人をつなげられる力」の違いです。

今までは自己主体の関係構築力を最大限に活かし、あらゆる仲間をつくってきました。これからは、媒介者としての役割に目を向け、橋渡し役となり自分以外の人々のニーズや価値観を理解し、それらを適切にマッチングさせる力を高めていきたいと考えています。

“スポーツクラブの持続可能なエコシステム経営”を実現させるには、他者同士のつながりが新しい価値を生み出すような仕組みを整え、その成果を間接的に享受するポジションを取りにいくべきだと考えるようになりました。

新拠点で「KANPAI OFFICE SESSION」

B1開設以来、何回か開催して手応えを持っている企画が「KANPAI OFFICE SESSION」です。簡単にいうと夕方に缶ビール片手に複数企業が集まってコミュニケーションをとる場で、ミーティング以上、会食未満という位置付けです。

料理などを持ち寄り、参加費1000円ぐらいの負担で済ませることを大事にしています。容易に会社経費が落とせない立場の方や、ビジネス会食に参加するには金銭的な負担が大きすぎる学生などにもビジネス交流会に気軽に参加してもらえるような場が欲しいと前々から思っていたのでつくってみました。

イメージ 「KANPAI OFFICE SESSION」

イメージ 夕方に缶ビール片手に複数企業が集まってコミュニケーションをとる場で、ミーティング以上、会食未満という位置付け

湘南ベルマーレフットサルクラブが描く未来像

これまで湘南ベルマーレフットサルクラブの取り組みを綴ってきました。

テーマは「『ゼブラ企業』への挑戦~地域と共存、湘南ベルマーレフットサルクラブの戦略」ということで現在までの歩みをお話しさせていただきました。改めて過去5回公開の内容を振り返るとともに、最後に未来の話をさせていただきたいと思います。

イメージ ゼブラ企業の画像

・スポーツビジネスが持つ特異性とその課題、そしてそこからの意識改革の必要性
スポーツの特異性に慣れることなく、その価値を構造分析して再定義することが大事だと思います。その上で人の心を揺さぶるか考え尽くしたいです。

・主語の大きさがぼかす「個性」の重要性
「スポーツビジネスとはこうあるべき」という固定観念でメジャースポーツの縮小版を目指すとせっかくの個性が出にくくなるので、比較する対象や目指す企業像を地域商社やソーシャルビジネスカンパニーに向けていこうと考えています。

・知的財産の顕在化
スポーツが持つ地域全部を横断できる関係性や、選手を象徴とした保有している人材やホームゲームなどの場や機会が知的財産であるという言語化はできているので、今後はその知的財産の強さや広さを明示していきたいです。地域課題の構造に対する知見の広さや、つなげられる人材の数と実行まで要する期間、地域のキープレーヤーを動かせる力の定量化など。

・内部人材育成と外部人材活用の事業拡大
社会課題解決プロジェクトを立ち上げながらソーシャルビジネスの構築を探る中で、人材育成と人材活用は収益化に成功しているので、ここを伸ばしていきたいと思います。地域にありがちな地域課題の解決に携わる人の固定化を崩し、主体者を増やすというニーズがないかもっと深掘りしていきたいと思います。

・ソーシャルビジネスのファイナンス
インパクト投資の理解をもっと深める必要があります。社会的成果と経済的リターンの両立を目指す投資手法は、成果の測定と共有が鍵だというところまで理解できました。「世の中にとって良いことをしているので支援してください。」という気持ちも大切にしつつ、セールスシートとレポートの形式を一新させていきます。

・「経済成長」「社会性」「スポーツの勝利」の対立軸の誤解を解く
今回の事業戦略がうまく進み、スポーツチームが「ゼブラ企業」の仕組みを地域に落とし込むことができたら、3つの要素がそれぞれの足かせではなく、補完的な関係であると証明できると思います。本コラムでは経済と社会活動の話がメインになっていますが、トップリーグスポーツ業界に携わる人間として、勝利に対する執着心があるということもお伝えしたいです。勝ちだけが価値ではないですが、勝利がもたらす影響は想像を超える価値があります。

コラムで何か答えを提示できればと思いましたが、そんなわけにはいかず挑戦の中での気づきを綴るに留まりました。その辺りをご容赦いただくと共に今後のクラブの動向も気にしていただけると嬉しいです。

そして私たちの「挑戦」も今、ガス欠になるかブレイクスルーするか瀬戸際のような感覚を持っています。もし私たちにbetしてくれる仲間がいればどんな形であれ大歓迎ですのでどうぞお声がけください。

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佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)
佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)

1977年神奈川県藤沢市生まれ。2007年フットサル施設の運営会社起業と同時に、湘南ベルマーレフットサルクラブのGMに就任し、Fリーグ開幕初年度を迎える。2022年4月より同社代表取締役社長。スポーツ庁主催イノベーションリーグ大賞受賞。小田原市など8自治体との包括連携協定を締結しゼブラ事業を推進する。

佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)

1977年神奈川県藤沢市生まれ。2007年フットサル施設の運営会社起業と同時に、湘南ベルマーレフットサルクラブのGMに就任し、Fリーグ開幕初年度を迎える。2022年4月より同社代表取締役社長。スポーツ庁主催イノベーションリーグ大賞受賞。小田原市など8自治体との包括連携協定を締結しゼブラ事業を推進する。

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