アドタイでは、当社が刊行した書籍の内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」や識者による本の解説を掲載しています。今回は、11月26日に発売した新刊『なぜ御社の広報活動は成果が見えないのか?‐可視化・数値化・省力化を加速するDXの進め方』(渡辺幸光著)の「はじめに」を紹介します。
2024年11月26日発売 渡辺幸光著
定価:2,200円(本体2,000円∔税)
ISBN 978-4-88335-617-1
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本書は、悩みの尽きない「広報・PR」という業務に携わっている人々の負担感を、DX(デジタル・トランスフォーメーション)によって軽減するための本です。特に日常業務が多すぎて、何をどこから改善していいのかわからないという人に、どのようなゴールを打ち立てて、どのようにしてそこに向かうべきかという方法論についてまとめています。
筆者は広報SaaS「PRオートメーション」を開発・販売・運用しているプラップノード株式会社で代表をしています。当社は2020年3月にCOOの雨宮徳左衛門と共に立ち上げた会社なのですが、我々2人がこの会社を立ち上げ、サービス開発に乗り出したのも、全く同じ理由からでした。
筆者は複数のサイト制作会社から、外資系のPR会社、広告代理店を経て、2014年に日本でも有数のPR会社であるプラップジャパンに入社した人間です。一貫してデジタル畑でキャリアを積んできたこともあり、プラップジャパンでもデジタル担当として働き始めたわけですが、当時の広報業務は広告業界と比較してデジタル化が進んでおらず、かなり驚いたことを覚えています。
「PRオートメーション」というSaaSツールの開発も、プラップジャパンの優秀な若手社員から「広告やPRのアワードを狙えるような仕事がしたいが、勉強する時間がなかなか作れない」「プロボノなどに取り組みたいが、日中の業務が忙しすぎる」といった相談を受けたことがきっかけとなりました。こうした若者たちをデジタル技術によって救いたいと、同じ思いを持っていた同僚の雨宮と一緒に考えたことから始まったのです。それは折しも、DXという言葉が話題になり始めた頃の話です。
プラップジャパンは業界内でも有数のホワイト企業として認知されていますが、それでもかつてはこのような状況でした。現在はデジタル化のみならずさまざまな環境改善が功を奏し、こうした悩みはずいぶん減ったと聞いています。しかし、広報業界を見渡してみると多くの企業でも若いPRパーソンが似たような思いを抱えているという話を耳にし、デジタル化を通じた効率化の進め方について本書をまとめたいと考えた次第です。
そもそも広報は、会社全体の評判を第三者評価などを通じて高めていくという、経営とも密接に関係した業務です。CSRやブランディング活動を通じて会社の認知を得ると同時に、不都合が生じた時には矢面に立って対応するなど幅広いアクションを求められます。しかし毎日の雑務に追われ、本質的な活動をできなかったりゴールを見失いがちになったりするという声も多く聞かれます。
特に現在はメディアのデジタル化やSNSの普及が進み、広報を取り巻く環境は大きく様変わりしました。ただでさえ煩雑な業務を多く抱えている広報担当者が、新たな環境の変化に適応していくのは非常に大変な労力を要します。ややもすると今まで通りに仕事をしていても良いだろうとメディア環境の変化に目をつぶりたくなるかもしれませんが、それでは第三者から高い評価を得るという広報の最終的なゴールが遠ざかりかねません。
この本では、ゴールを見失うことなく多数の業務を効率的にこなしながら、いかに広報を令和の時代に即した形にアップデートさせていくかについて論じました。広報のゴールを目指した活動の中でも、特に対外的に情報発信していく上で気をつけるべき点を、登山に見立ててわかりやすく説明したつもりです。
第1章では、広報を取り巻く環境の変化として、この30年でメディアのデジタル化がどのように進展したのかを解説します。デジタル広告やデジタルマーケティングの進化に対し、広報が出遅れた原因についても分析しています。
第2章は、広報関連では唯一のデジタル化と言えるワイヤーサービスの進化と、なぜそれが広報のDXに貢献しなかったのかを明らかにします。広報作業のデジタル化が遅々として進まず、その結果が効果測定方法の時代遅れな状況に拍車をかけてしまった実情についてもお伝えします。
第3章からは、こうした状況に対する処方箋です。この章では、まず弊社が提唱する「広報欲求5段階説」と会社の組織図を使って、自社の広報部がどの立ち位置にいるのかという現状確認方法を解説します。広報という峻険な山の何合目にいるのかを把握するイメージで読み進めていただければと思います。
第4章では、広報業務に活用できる「広報資産」という概念を紹介します。広報資産の種類とその見つけ方や育て方について解説するとともに、社内に広報活動の成果をフィードバックする方法などについても触れています。登山に際して身につけるギア(用具)を確認するイメージとお考えください。
第5章では目指す山頂と、そこに至るルートについて検討します。具体的にはKGIの設定の仕方と、そのゴールに到達するためのKPIツリーの作り方です。営業やマーケティングとは異なる、広報特有の課題解決のための「独立変数・従属変数」という考え方を提案します。
第6章は、広報の世界でも話題を集めている生成AIの活用方法です。プラップノードで取り組んできたAI活用術について説明するとともに、利用にあたっての注意点についてもお伝えします。
広報という仕事は、本来はとてもクリエイティブでダイナミックな仕事ができる、企業の中でひときわ輝く部署であるべきだと筆者は考えています。先に待ち構えるのは険しい山道ではありますが、この本を道標としてぜひDXを実現させ、広報部にしかできない、会社と社会がよりポジティブな関係を築くための業務に専心していただきたいと考えています。