Q.ウェルビーイングに関する研究を行い、これを応用して人々を「幸せ」にする製品やサービスの開発、職場や環境づくりなど、人々が幸せに働いたり、学んだりできる仕組みづくりに取り組んでいる前野さん。「幸福学」との出会いは何だったのでしょうか。
私は大学では機械工学科を専攻し、卒業後はキヤノンに就職。4年ほどエンジニア職を経験しました。そのエンジニア時代に、とある製品の設計をしている時にふと思ったんです。「この製品を使う人って、幸せを感じるのかな」と。
そしてこの製品を設計している自分も幸せなのだろうかと。製品の企画設計から、それを利用するエンドユーザーまで、この製品に関わるあらゆる人々が“幸せ”を感じられる保証はどこにもない。これはとても虚しいことだと思って。
それで設計のプロセスに“幸せ”をパラメーターとして入れたいなと思ったのが、ウェルビーイング、幸福学との出会いです。
実は機械工学と幸福学はシームレスにつながっていて、まったく別のことをやっているという感覚ではありませんね。
大学生に向けた授業の様子。
Q.前野さんはかつてロッテのカップアイス「爽」のプロモーションイベントを監修したこともありますよね。現代の広告については、どうお考えですか。
人間同士の絆とか、感謝、やる気などが喚起されるものに触れると、人は幸福度が増すんです。広告の中には、刺激を与えるものも見受けられますが、それを見てポジティブな気持ちになっても、それは一時的なもの。
僕が追求しているのは、永続的な幸福感で、そのためには小さな行動の積み重ねが大切ですが、それを促すようなものが身の回りに増えていくと良いのではないかなと思います。
生活に身近な広告にも言えることで、『利他』の精神が込められているものが増えると、見る人をきっと幸せにすると思うし、僕もそういうものを見てみたいです。
見ると気持ちがほっこりするような広告づくりはまだまだ開拓の余地があると思います。もしまた広告を監修できることがあれば、幸福という概念とは一見かけ離れているようなジャンルを手掛けてみたいですね。
もっと多くの人に幸せや豊かさのきっかけを、いろんなチャネルを通じて届けていきたいです。
…前野さんのインタビュー記事全文は、月刊『宣伝会議』2025年1月号に掲載。
月刊『宣伝会議』デジタルマガジンでは、過去12年分のバックナンバー記事を閲覧可能です。