「103万円の壁」議論を追い風に メルカリ、体験イベントでスキマバイト普及拡大

面接不要で働ける「お金で払えない中華飯店」

メルカリは12月5日から、空いた時間などを利用して短時間の仕事が可能な「スキマバイト」(スポットワーク)を体験できる没入型施設「お金で払えない中華飯店」を開催した。期間は8日までで、場所は新宿駅東南口近くの高架下にあるフードホール「サナギ 新宿」(東京・新宿)。クリスマスやお正月などの祭事が重なり柔軟な働き方ニーズが高まる年末シーズンに向けて、同社が展開するスキマバイトサービス「メルカリ ハロ」を訴求する狙い。働き控えの要因となっている「103万円の壁」の適用基準の見直しが議論される中、柔軟な働き方が可能なスキマバイトの需要はますます高まるとみている。

写真 人物 執行役員CEO Workの太田麻未氏

執行役員CEO Workの太田麻未氏

イベントでは、面接や履歴書なしで約10分間のスキマバイトで体験できる。ホールキッチンスタッフ、ティッシュ配り、看板持ちといった身近な仕事のほか、着ぐるみでの宣伝やインフルエンサーとして店の広報活動を行うユニークな仕事も取り揃えた。

バイト終了後にもらえる引換券で食事メニューを注文できる仕組み。メニューは5種類で、渋谷の老舗中華料理店「兆楽」が監修した。裏メニューなどイベントをより楽しむための隠れイベントも存在する。

会場は新宿駅東南口の隣に位置しており、待ち合わせの時間などの「スキマ時間」を利用して体験できる。バイトでは先輩役となるキャストが体験者に業務を教えるため、未経験者でも気軽に挑戦可能。本当のバイト先の先輩と働いているかのような没入型の体験を通じて、スキマバイトの魅力を訴求する狙いだ。

この体験を通じて「面接・履歴書不要」「すぐに給与が受け取れる」といったスキマバイトならではの特徴を来場者に理解してもらい、スキマバイトを始めるきっかけを作る。

写真 「ホールスタッフ」「ティッシュ配り」「着ぐるみで宣伝」などの仕事を体験できる

「ホールスタッフ」「ティッシュ配り」「着ぐるみで宣伝」などの仕事を体験できる

同社は今年3月に「メルカリ ハロ」をスタート。約7ヶ月半でサービス登録者数は800万人を突破した。利用者の54%がスキマバイト初心者で、求人の78%が未経験者歓迎。10代から60代以上まで様々な年代が利用しており、傾向としては飲食、物流、小売りの人気が高い。パートナー企業として、全国に働く場所があるエンタープライズ企業を開拓している。

スポットワーク協会によると、日本国内のスポットワーク登録会員数は10月1日時点で約2500万人。半年で約1000万人増加した。今後も市場は大幅に拡大していく見込みで、メルカリの推計では、スポットワーク市場の取引高は2022年から2030年の約8年間で約21倍以上になり、5兆円規模になると予想している。

スポットワーカーの増加の背景には働き方の多様化がある。厚生労働省の就業形態の多様化に関する総合実態調査によると、正社員以外の労働者が現在の就業形態を選んだ理由として、「自分の都合の良い時間に働けるから」が36%、 「家庭の事情と両立しやすいから」が29%など、柔軟な働き方に関する項目が上位に挙げられている。

メルカリが11月に行ったスキマバイトに関する調査では、回答数の54%がパートアルバイトで悩んだ経験があると回答。「面接や履歴書の準備が大変だった」(37%)、「急に休みたい時にシフト調整が大変だった」(24%)など、多くの人が従来の働き方に関して不満を抱いた経験があることが分かった。

年末シーズンは、事業者にとっても柔軟な働き方に対するニーズが高まる。事業者にとって12月は繁忙期であるにもかかわらず、「103万円の壁」による働き控えでレギュラーバイトの人手確保が困難という課題がある。最近話題となっている壁の上限増加が実現した場合、働く時間が増えることで、従来のパートアルバイトとスキマバイトを組み合わせた柔軟な働き方の需要がより高まると見ている。同社の調査では実際に103万円の壁が引き上げられたらスキマバイトを増やしたいと答えた人は58%に上った。

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