給水スポットがまだまだ少ない、自販機大国・日本の不思議

11月、ポートランド(米国)から日本に一時帰国をしていました。帰国した初日に街を歩いていて、子どもたちが最初に嬉々として「あれ買いたい」と指差したものは「自動販売機」でした。買ったものは、アクエリアス。

確かに街中、駅、どこを歩いても、数百メートルにひとつ、自動販売機は存在しています(都内近郊)。いま住んでいるポートランドでは、ほぼ見かけない自販機。子どもたちは、この機械が気になって仕方がなく、購買意欲をさぞかし掻き立てられたのであろうと想像します。

写真 人物 複数スナップ

自動販売機が必要な日本。要らないポートランド。

アメリカに移住したての頃、私の暮らしからは、プラスチックが一気になくなりました。その理由は、ひとつにスーパーの袋(と、野菜の個装の袋)。スーパーマーケットは、2019年当時からマイバッグが主流で、忘れてスーパーマーケットから提供されるのも、紙の袋でした。

そして野菜・フルーツ類はほとんどのものが、紙のコンテナか、あるいはそのまま剥き出しの状態で店頭に並んでいるため、個装の袋は日本ほどは存在しません。

もうひとつの理由は、ペットボトルでした。その背景は、自動販売機がないし、コンビニもそんなに存在しないため、外出先で買う、というシチュエーションがないという環境要因と、マイボトルを持ち歩くため、水分補給のための飲料を買う必要がないという生活様式の要因がありました。

マイボトルを持ち歩いて気づくことは、リフィルできる給水スポットが街中に存在しているということ。これにより、マイボトルが機能し、飲料を購入するという行為は減り、ペットボトルの容器を家の中で見かけることがほぼなくなりました。

写真 商品・製品 リフィルスポット

空港にあるリフィルスポット。

ときたま、貝掘りに行く際に、海水を持ち帰るために空きペットボトルを必死に家の中から探すというぐらいに(水筒に海水を入れると、、、、水筒の中に砂が残り、ジャリジャリになります。なかなか全て綺麗に出てきません笑)。

リフィルスポット VS 自動販売機

日本に帰国した際に、リフィルスポットがない!と右往左往するのは、今回に限ったことではありません。水を容赦なく捨てさせられる、空港がまずそのひとつ。

ポートランドも乗り継ぎで使うシアトルの空港も、水を捨ててセキュリティチェックを通った直後に、リフィルスポットがあるので(トイレの近くに行けばたいていある)、ひと安心です。

また、サッカーやバスケットボールの観戦時も同様。入場時にはたいてい空のマイボトルを持って入り、競技場の中に、リフィルスポットが必ずあるので、そこで水を入れます。

写真 店舗・商業施設 リフィルスポット

1ガロンサイズの水ボトルを取り外すタイプのウォーターサーバーは日本にもあります。そのボトルは宅配もできますが、近所のスーパーに1ガロン用のリフィルスポットがありました。

写真 商品・製品 冷蔵庫

冷蔵庫にも浄水器がついているタイプが多いのもアメリカの特徴です。

日本の空港では、ミルク用の温水補充エリア、もしくはイートインの中のウォーターサーバーに私が探した限りでは限られており(他の場所を知っていたらぜひ教えてください!)、やむをえず、どこにでも点在する自動販売機から水を購入し、水筒に移し替えるという作業をすることになります。

リフィルをさせるようになると、ペットボトルの飲料が売れなくなって、自動販売機が不要になり、その作業をする方の仕事もなくなるからなのか?!と思ってしまうほどに、リフィルという行為と、自動販売機の存在は、対局にあるように、今回の帰国時には感じました。

ぜひ自動販売機のメーカーさんと、自動販売機に飲料をおろしている設置メーカーさんには、最先端の機能が付与された自動販売機ではなく、リフィルの装置をつくって置き換えていただけないかと思ってしまいました。

写真 商品・製品 自動販売機

なんでも自動販売機に入っていることに驚きます!

無印良品さんは、給水スポットを店舗で展開してくださっていて、本当に助かっています。

リフィルスポットをマップにしてくださり、リフィルを広げる活動をされている、水Do!ネットワーク・RefillJapanさんの活動を応援したいところです。

どうしても困った時に、お店で「浄水された水をボトルに入れてもらえませんか?」と依頼している海外からの旅行客もいるとか。ペットボトルを買って、ごみを増やすよりは、と思う気持ちはわかる気がします。対応してくださっている、お店の方、ありがとうございます。

子どもの目から見た「日本の不思議」

ひさしぶりに日本に帰国をして、あれ?と思った、不思議なことをいくつか列挙してみます(子どもたちから投げかけられて、確かに!と思った話も一部)。

なぜ、女性専用車両(と優先席)は存在するのか?

これは子どもたちからの指摘。確かに、ポートランドにも、優先席(とりわけ車椅子の方)はよく見かけます。が、女性専用はありません。妊婦の方をわざわざ指定することもありません。

弱い人は守ろう、という意識が社会に行き渡っているので、子どもが幼少期だった頃に連れて公共交通機関に乗ると、遠くからでも「座って!」と呼びかけられることが多かったことを思い出しました。女性専用をわざわざ設置しなければならない、女性が虐げられている構造を、この車両は示しています。

なぜ、お友だちなのに「◯◯(名字)さん」と呼ぶの?

これも子どもたちから。昔の同僚と夜ごはんを共にした時のこと。先生とかならわかるけど、、、お友だちなのに、なんで名字なの?と問われました(笑)。ぜひ、これからは下の名前で呼んでください!

店の前のラインアップになぜ、何人も対応するスタッフがいるのか?

観光地に行くと、たいてい行列ができています。その際に、ロープが張られているにもかかわらず、並ばせることに対応しているスタッフがいました。待つ、という行為への耐性は、アメリカの方が強いように思います。
 
 
他にも、ひさしぶりに体験すると、これ面白いな!不思議だな!と思うことにはしばしば遭遇しました。

が、一方で、日本は本当に安全で、丁寧で、豊かに暮らせる国であるということもひしひしと感じました。生きるための保障と安全がこれだけ整っている国は、他にはなかなか存在しないはずで、それは、より、想像と創造に、思考と時間を使えるということでもあると思うのです。

この社会基盤と、人々が抱く課題感を掛け合わせたとき、きっともっとイノベーションが起こり得るのではないか、と考えています。

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松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)
松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

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