企画や表現力だけに頼らない。左脳思考で挑む、クリエイティブの新方程式

電通zeroのクリエーティブディレクター、コミュニケーションプランナーとして活躍する加我俊介さん。外資系コンサル会社を経てのクリエイティブ職という、いわゆる王道ではない経歴を歩んできました。自身をアイデアマンではないと語る加我さんは、いったいどのようにクリエイティブと向き合ってきたのか。
 
今回、新たに開講するクリエイティブディレクション講座の特別クラスで講師も務める加我さんに、左脳的なクリエイティブ手法について伺いました。

こんにちは、電通の加我俊介と申します。今は『クリエイティブディレクター』という肩書きで仕事をさせてもらっています。僕は元々、アーサー・アンダーセンという外資系コンサルティングファームの出身で、広告業界に転職した後も、営業・プロモーションプランナー・ストラテジックプランナーと、王道のクリエイティブとは異なるキャリアを歩んできました。

そのため、先輩クリエイターに師事したり有名クリエイターとご一緒させていただく機会がないまま、クリエイティブ畑の端っこで独自に育ったある種の亜種で、周りからも「仕事の進め方がちょっと違う」などとよく言われてきました。これまではその違いをあまり意識してこなかったのですが。ここ数年、取材や講演などで自分の仕事について振り返る機会を多くいただき、もしかしたらその“ちょっとした違い”が自分の武器になっているのかもしれないと思うようになりました。この短いコラムでは、そのスタイルの一端をご紹介させていただこうと思います。

最近の主な仕事

NTTドコモ/ahamo『怖くても進もう』 (24年8月~)

BE:FIRSTとahamoによるコラボ。広告のあるべき立ち位置を考えた時、広告をBE:FIRSTとファンのつながりを支援する装置にしたいと考えました。「怖くても進め」を「怖くても進もう」に。オーディション時に彼ら自身に向けられていた言葉を、今度は彼らからファンへ呼びかける言葉に変えて。彼らの挑戦に向けた心情の吐露を、広告を通じてファンに届ける仕掛けです。

Netflix/極悪女王『プロだから』(24年9月~)

Netflixシリーズ「極悪女王」の配信後のプロモーション。ゆりやんレトリィバァさんをはじめとするキャスト陣がものすごい覚悟で作品作りに挑んでいる。最後は、その熱量『プロの覚悟』こそが世の中を動かす。視聴欲求を喚起し観る者の心を打つと考え考案した企画です。

セブン銀行『第0会議室』(24年10月~)

セブン銀行の独自性や革新性を体現するATM。その開発ストーリーこそが、セブン銀行さんのパーパス「お客さまの『あったらいいな』を超えて、日常の未来を生みだし続ける。」に実感や期待をまとわせてくれると考えました。そして、その開発過程は想像を絶する難問の連続。そこで、難問を大きく人間を小さく描く、ミニチュアヒューマンドラマという表現に昇華しました。

企画や表現からは考え始めない

クリエイティブには色々な型があると思いますが、僕にも明確なやり方/ルールが一つあります。それは「いきなり企画や表現から考え始めることは絶対にしない」ことです。オリエンを読み込み、オリエンには書かれていない背景や関連情報まで詳しく調べ、クライアントが置かれている状況をできる限り(自分の主観でも、クライアントの主観でもなく)客観的に把握することから始めます。全プロセスの中で、この時間を最も大切にしていると言っても過言ではないかもしれません。そうすることで、初めて様々なレイヤーの問題や要望を整理し、解くべき課題を正しく設定できると考えているからです。

正しい課題設定とコンセプトは表裏の関係

良い広告はシンプル。なんで自分には思いつかなかったんだろうという灯台下暗しなコンセプト(企画や表現の骨子となる基本的な考え方/方針)だったりします。僕は、正しい課題設定はそのコンセプトと表裏の関係にあると捉えています。正しい課題設定に基づいているからこそ、クライアントやチームメンバーから賛同を得て企画を実行に導ける、表現がジャンプできる、高い展開性を発揮できる。なので僕は、コンセプトは無理矢理“作る”のではなく、“見つける”くらいのスタンスで臨んでいます。問題の構造理解→課題設定の延長にあるもの、論理展開の末に自然と辿り着くのが理想です。

ただ、クライアントが抱える問題は日増しに複雑化しており、その課題は見えづらくなっています。そんな中では、僕のようなクリエイティブスタイルも役に立つのかもしれない。自分は亜種だと思っていたので、これまで自分のやり方を誰かにじっくり教えたことはありませんでした。しかし今回、宣伝会議さんから講座の機会をいただき、はじめてやってみようと思いました。冒頭キャリアパスの話をしましたが、僕は元来アイデアマンでも、表現に自信があるタイプでもありません。ただ、右脳的スキルと比べて左脳的スキルは鍛えやすいと言います。僕はこれまでの経験の中で、企画力や表現力だけに依拠しないクリエイティブの型を培ってきました。

今回の講座ではその型を、オリエンの紐解き/問題整理と課題設定/アイデア開発/企画書作成と一つひとつのステップを大事にしながら学んでいきます。クリエイティブ職の方はもちろん、将来的にクリエイティブ職を目指す営業やマーケ職の方、日常業務の中で企画開発などが求められる事業会社の方にも役立つ時間にできればと思っています。皆様のご参加をお待ちしております。

<クリエイティブディレクション講座 加我俊介クラス 講座概要>
◯開講日:2025年1月27日(月)19:00~21:00
◯講義回数:全7回。隔週月曜開催
◯開催形式:教室とオンラインを各回自由選択できるハイブリッド開催
◯定員:先着15名
◯詳細・お申込はこちらから
 
 
12月23日(月) 19:00~20:30に無料体験講座を実施!
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加我俊介(かが・しゅんすけ)

電通 zero クリエーティブディレクター/コミュニケーションプランナー

外資系コンサルティングファームの朝日アーサーアンダーセンに入社後、ADKを経て、2012年電通入社。従来型のマス広告に、デジタル・イベント・PR、話題拡散装置としてのOOH等を組み合わせた統合的な広告コミュニケーションを数多く手掛ける。ACC FILM部門グランプリ、CANNES LIONS、文化庁メディア芸術祭などを受賞。

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