AI時代の記者・編集者に何ができる? 人間との分岐点は「質」と「信頼」

ChatGPTをはじめとする、多様な生成AIツールが発展し続けている今。人々の日常生活やビジネスにおいてもAIが活用されるようになってきた。文章や画像を生成できる生成AIが登場してきたなかで、記者や編集者には何ができるのか。桜美林大学教授の平和博氏が解説する。
※本記事は月刊『宣伝会議』1月号の転載記事です。

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平 和博氏

桜美林大学
教授

1962年生まれ。早稲田大学卒。1986年、朝日新聞社入社。社会部、シリコンバレー駐在、編集委員、IT専門記者などを担当。2019年4月から現職。日本ファクトチェックセンター運営委員。科学技術振興機構社会技術研究開発センタープログラムアドバイザー。著書に『チャットGPT vs. 人類』(文春新書)、『悪のAI論』(朝日新書)、『信じてはいけない』(同)など。

2024年ピュリツァー賞では応募作45件中5件がAI使用

2024年、AIを使用した2つの調査報道が、100年以上の米ピュリツァー賞の歴史の中で、初めて受賞を果たした。AIは報道の武器となる。

その一方でAIは、取材・編集現場の従業員のリストラ、既存ビジネスモデルへのダメージ、偽情報・誤情報の爆発的な広がりを後押しする側面もある。メディアの力は、「質」と「信頼」に根差す。その向上にAIをどう活かしていくかがいま、問われている。

2024年5月6日に発表された同年のピュリツァー賞のうち、「国際報道部門」はニューヨーク・タイムズによる、イスラエル・ハマス戦争の一連の報道が受賞した。

そのひとつが、イスラエル軍がガザに投下した2000ポンド(約900キログラム)の大型爆弾による被害の検証動画だ。着弾によってできる直径約40フィート(約12メートル)のクレーターを、衛星写真のAI分析システムで判定。大量、広範囲な使用の実態を明らかにした。

さらに「地域報道部門」を受賞したのは、シカゴ南部を拠点とするNPOメディア「シティ・ビューロー」と「インビジブル・インスティテュート」による、黒人女性たちの行方不明事件捜査における警察の怠慢を暴いた調査報道だ。

情報公開によって入手した100万件を超す警察の記録を、AIを活用して分析。人種的偏見による、捜索依頼の無視などの不正行為を明らかにした。

米メディアサイト「ニーマンラボ」の報道によれば、2024年のピュリツァー賞では初めて、応募作にAI使用の開示が義務付けられた。約1200件の応募作から最終候補に残った45件のうち、5件でAIを使用していた。

イメージ 「インビジブル・インスティテュート」のリナ・レイノルズ・タイラー氏(中央)と「シティー・ビューロー」のサラ・コンウェイ氏(右)が、2024年度ピュリツァー賞の地方報道部門を受賞した(画像:ピュリツァー賞のWebサイトより)。

「インビジブル・インスティテュート」のリナ・レイノルズ・タイラー氏(中央)と「シティー・ビューロー」のサラ・コンウェイ氏(右)が、2024年度ピュリツァー賞の地方報道部門を受賞した(画像:ピュリツァー賞のWebサイトより)。

AIが取材・分析、編集作業の高度化や効率化を後押し

AIのインパクトは、取材・分析の高度化や、編集作業の効率化という点でメディアの現場の大きな後押しになる。

…この続きは11月29日発売の月刊『宣伝会議』1月号で読むことができます。

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