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社員100人との1対1面談で感動「この人たちの背中を押したい」
──Mizkanのマーケティング本部は、研究開発チームも内包しているとお聞きしました。
はい、そこが特徴的な部分なんです。研究開発とマーケティングの部署は、別に設けている企業が多いと思いますが、Mizkanのマーケティング本部は、約180人のうち、約半分が研究開発を行うメンバーです。残りは商品企画を担当するブランドチーム、広告宣伝を統括するコミュニケーション戦略部、メニュー開発チームやデザインチームなど、プロダクトに関わるマーケティングを行うチームで構成されています。
Mizkan Holdings 執行役員
Mizkan 取締役 マーケティング本部 本部長
槇亮次(まき・りょうじ)氏
1999年、京都府立大学農学部農芸化学科を卒業後、ネスレ マッキントッシュ(現在のネスレ日本)に入社。営業、マーケティング部長、グローバルブランドマネージャーなどを経て、執行役員コンフェクショナリー事業本部長、同新規ビジネス開発本部長に。2023年3月、Mizkan執行役員取締役マーケティング本部長に就任。ご当地限定「地元を味わう味ぽん」シリーズなど新商品を続々と企画。
Mizkanの企業理念には「買う身になって まごころこめて よい品を」という言葉があります。「よい品」、つまり中身にこだわるために、基幹部門であるマーケティング本部の中に、調味料自体の研究開発を行うメンバーがいるということです。正直、研究開発チームのメンバーに専門的なことを言われて、「ん?」と聞き返すことも多々ありますが(笑)。
ヒット商品よりもヒットメーカーを育てたい
──入社されてもうすぐ2年ですよね。槇さんはマーケティング本部をどのような組織にしたいと取り組まれてきたのでしょうか。
ヒット商品をつくれる人材を育成できるか、を重視しています。ぶっちゃけ、世の中のヒット商品を見て、もし自分が担当者なら、「これつくれそう」って思っちゃうこともあります。決して慢心しているわけでも、その商品を企画開発された企業の努力や成果を軽視しているわけでもありません。なぜなら、20年間ブランドマーケティングに携わった経験が、ヒット商品を開発する上でやるべきこと、やってはいけないことをある程度は教えてくれるからなんです。
ただ、今は市場の成熟化と、消費者の嗜好の多様化が併行して進んでいます。経験に頼った個の力によるヒット商品づくり以上に、継続してヒット商品を出し続けられるマーケティング組織、言い換えるとヒット商品をつくれる人材「ヒットメーカーづくり」ができる組織が求められているのではないかと思ったんです。Mizkanのマーケティング本部には、研究開発と商品企画がお互いに刺激しあえる土台を既に持っている。この組織なら、きっとヒットメーカーを育てられるんじゃないかと思えたんです。
まず、入社してすぐ、「マーケティング本部全員と、1対1で面談をさせてほしい」とお願いしました。以前、『ほぼ日刊イトイ新聞』で任天堂の元社長・岩田聡さんが、「社長になったときに社員全員と面談した」という記事を読んで、僕も真似してみようと思ったんですね。結局、全員の時間は取れませんでしたが、100人ぐらいのメンバーと直接話をする機会をもらいました。
実際にメンバーと直接話をしてみると、会社のことが好きで、より良くしたいと思っている人が本当に多くて。僕にも「どうしてMizkanへ来たんですか?」「Mizkanのマーケティングをどう思ってますか?」と熱心に尋ねてきて、なんて真面目でいい人たちなんだろうとすごく感動したんです。ただ一方で、実直にいいモノづくりを続けてはいるものの、Mizkan商品が得意とする和食系の調味料市場は縮小し、これからどうしていけばいいのか迷っている様子が一部のメンバーに見て取れました。