菅野薫さん(つづく)の とある一日、とある10曲

クリエイターの皆さんに独自のお題を設定してもらいプレイリストをつくってもらうシリーズ企画。プレイリストはSpotifyでも公開中です。

ある瞬間、たった一度しか起こらないこと

ジャズが好きだ。大学に入学してすぐに先生について何年も学理と演奏技術を勉強した。演奏活動をしていたこともある。今でも楽器は手元に置いていて、探求したい気持ちはずっと変わらない。

学生時代のバイトも、結婚パーティーもブルーノート東京だった。あまり行けていない時期もあったが、遂にいまのオフィスは徒歩圏内になったので、ひとりで軽くご飯を食べるくらいの感覚で月5回くらい純粋に聴きに行けている。

ジャズは自分に対する葛藤だ。血統と育った土地の文化的な背景という抗えない歴史の延長にある自己への対峙、あらゆる国境と文化の壁を超越して対話が交錯するジャズ独自の言語。お互いの音を感じ寄り添いながら、破綻スレスレの冒険心を持って瞬時に発生する対話を広げていく即興。そこには個の能力を尊重した圧倒的な自由と、相手者に敬意を払った傾聴と共創がある。

「ある瞬間、たった一度しか起こらないこと」に対する強い畏敬の念がある。だから、即興の現場に居合わせることに固執している。

その探究心は確実に仕事にも現れている。初期からSound of Honda / Ayrton Senna1989をはじめ、たった一度の本番を配信したり、記録するようなプロジェクトをたくさん手がけてきた。

コンテ(譜面)に忠実に何度も撮影(演奏)され、丁寧にポスト・プロダクションがなされる制作と、一回限りを記録することは似ているようで全く違う。偶発性をはらんで、失敗するリスクも多分に持ちながら、たった一度の奇跡的なことにかける。その美しさに惹かれ続けている。

どんなテーマでも、10曲に絞ることは絶対出来ない。早々に諦めて、今日聴いた曲10曲とした。それもまた一度限りの今日の記録だ。

菅野 薫(すがの・かおる)

(つづく) Creative Director/Creative Technologist

2002年、電通入社。データ解析技術の研究開発職や、電通総研での主任研究員を経て、2013年クリエーティブ部門へ異動。デジタルテクノロジーと表現という専門性を活かして国内外のクライアントの商品サービス開発、広告企画制作など、幅広い業務に従事。2022年1月、電通から独立して、クリエーティブ・ディレクター・コレクティブ(つづく)を設立。経営戦略や事業戦略の立案、広告制作、プロダクト・サービス開発をはじめとしたデザイン、エンターテインメントの領域のクリエーティブ・ディレクションを中心に活動をしている。

advertimes_endmark

「いつか受講しよう」は、今がお得!
2024年12月27日締切
「教育講座を1つ受講すると、もう1つ無料」キャンペーン!!

今なら、45,000円以上の講座を購入・キャンペーン応募手続きをすると「対象のオンデマンド講座」をもう1つ無料でご受講いただけます!
 

バナー 宣伝会議 「教育講座を1つ受講すると、もう1つ無料」キャンペーン

 

お申し込みはこちら

 

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ