広報の定義は長年議論の的であったが、日本広報学会は2023年6月に新たな定義を発表。広報は「組織や個人が、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能」と位置付けられた。
筆者が所属する株式会社ヤプリが宣伝会議と共同で立ち上げた「インターナルコミュニケーション研究会」においても、企業の方向性やありたい姿を一貫性して社内外へ伝える経営機能としての広報の役割について注目が集まった。企業広報戦略研究所(電通PRコンサルティング内)「企業広報力調査」によると、「従業員とその家族」が広報のターゲットであるとする回答が2020年まで急激な伸びを示し、「メディア」を上回る結果となった。その後も「従業員」は高い水準を維持し、2024年11月に発表されたデータによるとさらに「就活生・学生」とする回答も伸びており、従業員エンゲージメントや採用PRなど新たなトレンドにも対応する必要がみられた。これらは広報の役割が大きく変容していることを示唆している。
そんな時代の変化の中に書かれた本書は、多様化・複雑化が進行する現代社会における広報の進化と実践的なアプローチが示された、広報の指針となる一冊である。
本書で提示されるPR4.0実践の「7つの視点」は、これからの広報担当者に不可欠な指針と言える。特に注目すべきは「パーパス」の視点だ。昨今、企業の存在意義や社会における役割と社会のために貢献できることを明文化し、それらを軸として組織運営や事業展開を行う「パーパス経営」が注目されている。多様なステークホルダーとのコミュニケーションを担う広報担当者が担う役割やアクションについて示唆されており、パーパスの浸透に課題を感じている担当者には参考になる点も多いだろう。広報担当者はもちろん、マーケティングやブランド戦略に携わる全ての実務者に手に取ってもらいたい、必読の一冊である。
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定価:2,200円
(本体2,000円+税)
『新しい「企業価値」を創出する PR4.0への提言』
編著:株式会社 電通PRコンサルティング
本書は、電通グループ内のPR領域における専門会社である電通PRコンサルティングが2020年8月から3年間、月刊『広報会議』(宣伝会議発行)において連載した「データで読み解く企業ブランディングの未来」をベースに、現在、そして来るべき広報の未来に向けて加筆しました。
『PR4.0への提言』は、序章と7つの章で構成されています。序章では、まずPR(パブリックリレーションズ)の進化について振り返ります。PR1.0は情報拡散を目的としたPRとして位置づけ、その後はPRの効果測定の指針として世界的に採択されている「バルセロナ原則」(※)に照らし合わせ、現在、自分たちの、2.0(アウトプットからアウトカム)、3.0(インパクトの評価)としています。そして来るべき「PR4.0」はどこに向かうのかを、本書を通して考察していきます。
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