「フェーズフリー」に見る世の中の機運をつくる、コミュニケーションとは?

まだ認知度は1割!? 「フェーズフリー」って知っていますか?

前回のコラムを更新した10月は、まだ20度前後の気温でしたが、秋を通り越し冬へ、あっという間に師走になり今年も残りあとわずかになりました。

皆さんは年越しの準備を始められていますか? 私は今年、年男だったのですが、本当に沢山の変化があった1年で、この年末は仕納めることができそうにありません…が、このコラムはなんとか年内に収められそうですので、もう少しだけお付き合い下さい。

このコラム連載中も「フェーズフリー」の露出がいろいろとありました。フェーズフリー(Phase Free)とは、日常時(平常時)と 非常時(災害時)のフェーズ(社会の状態)からフリーにして、生活の質(QOL/クオリティ・オブ・ライフ)を向上させようとする、防災に関わる新しい概念です。いつも使っているモノやサービスを、もしものときにも役立つようにデザインしようという考え方であり、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行さんが2014年に提唱しました。私も、この「フェーズフリー」を普及させるべく、フェーズフリー協会の理事として活動をしてきました。

最近、2カ月だけでも複数のテレビ番組で特集されたり、全国各地で様々な関連イベントが開催され、フェーズフリーに関する問い合わせや相談が毎日のように協会には届いています。

その一方で、私が初めてお会いする方にフェーズフリーの説明をすると、もともと知っていた方は全体の1割に満たないという現実に直面もしています。世の中に、これだけたくさんの情報が溢れているのに、意識を向けていない情報は知らず知らずの内に右から左へスルーしてしまうモノ。現状のコミュニケーション量ではまだまだ足りていないのだということを、いつも痛感しています。

例えば一般社団法人フェーズフリー協会では、フェーズフリーの認知拡大、さらには社会実装を促進させるため、「フェーズフリーアワード」を実施してきました。私が、このアワードの理想の姿と目するのは、「グッドデザイン賞」です。

グッドデザイン賞は60年以上の歴史があり、かつ5万点もの受賞商品・サービスがあります。結果として「Gマーク」の認知度は80%を超えています。

グラフ その他 グッドデザイン賞の認知率

*2020年度調査 「グッドデザイン賞」の認知率より(GOOD DESIGN AWARDウェブページより引用)

規模も歴史も大きく異なるため比べることは到底できませんが、フェーズフリーが真に社会をより良くする役割を担うためには、例えばグッドデザイン賞のように消費者の認知と生産者の参画の両立を図るような取組みを行っていく必要があります。

コミュニケーションの浸透プロセスに当てはめると、正しく理解し共感いただくためにはフェーズフリー協会自身の発信力を高めると共に協会に代わって発信してくれる仲間づくりが重要です。

そのためにフェーズフリー協会ではアクションパートナー制度を導入していますが、以前のコラムで触れたように一部で正しく活用されないケースが出ており、その対策が求められている状況です。

ただし、アンブッシュマーケティングへの対応は、前職の会社がTOKYO2020のゴールドパートナーとなり、オリパラ担当をしてきたので、実感するところですが、コストも労力も必要な取り組みであり、フェーズフリー協会の規模で取り組むことは現実的ではありません。

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山本啓一朗
山本啓一朗

有限責任監査法人トーマツ 地域未来創造室 シニアマネジャー / 一般社団法人 フェーズフリー協会 理事 / 一般社団法人 集まろうよ 代表理事 大手電機メーカーでSIerとしてメディア業界のDXを推進。経営企画で中計や組織開発、復興庁にて地域復興に従事した後、TOKYO2020を活用したマーケティング・事業開発及び、全国でのD&EI普及、地方創生を推進。ライフワークである日本の地域課題解決と防災、真の共生社会づくりに邁進中。コラムでは、山本個人としての見解を発信していきます。

山本啓一朗

有限責任監査法人トーマツ 地域未来創造室 シニアマネジャー / 一般社団法人 フェーズフリー協会 理事 / 一般社団法人 集まろうよ 代表理事 大手電機メーカーでSIerとしてメディア業界のDXを推進。経営企画で中計や組織開発、復興庁にて地域復興に従事した後、TOKYO2020を活用したマーケティング・事業開発及び、全国でのD&EI普及、地方創生を推進。ライフワークである日本の地域課題解決と防災、真の共生社会づくりに邁進中。コラムでは、山本個人としての見解を発信していきます。

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