韓国ドラマにはCMがない? 人気ドラマからみる熱狂コンテンツの特徴

「韓国トレンド研究室」、第6回目です!

今回は「韓国ドラマの魅力」についてお話しします。

人々の趣味・嗜好が多様化したことで、例えば『ロングバケーション』『ごくせん』『花より男子』などなど、「誰もが知っているコンテンツ」というのが以前より生まれづらくなりました。

にもかかわらず、『涙の女王』『愛の不時着』『イカゲーム』など、昨今の韓国ドラマには、日本でも社会現象になるほど大きな話題となった作品がたくさんあります。

なぜこのように人々は韓国ドラマに魅了されるのか、さまざまな角度から分析していきたいと思います!

1. 韓国ドラマの特徴

第1章では、韓国ドラマ全体に共通している特徴についてご説明します。

OSTで、観終わった後も余韻が続く

OSTとは「Original Sound Track(オリジナルサウンドトラック)」の略です。

日本でも主題歌はありますが、韓国のOSTはOP・ED曲だけでなく、劇中歌なども豊富で、1ドラマに対して10曲以上あることも…!

ドラマのシーンに合ったものが流れるので、OSTを聴くと、そのシーンが思い起こされる。そのためドラマを観終わった後も視聴者は、OSTを聴くたびにドラマのことを思い出してしまう仕組みになっています。

このように五感のうちのひとつ、「耳(聴覚)」への記憶を強く残すことで、ドラマの余韻が長く続いているのです。

さらにその余韻から「ドラマロス」の状態が生まれます。ドラマロスの状態になると、作品を見返したり、ドラマの考察や感想が書かれた記事を読みあさったりと、作品に対する視聴者の能動的な活動が活発になるため、そのタイミングでポップアップイベントやグッズ化、展示などを開催するとさらに話題になります。

『涙の女王』もそのタイミングで、全国各地でポップアップストアが開催されていました。

実データ グラフィック 涙の女王

最終話の視聴率が24.9%の、2024年大ヒットドラマ『涙の女王』

こういったオフラインイベントなどを開催すると、例えばSNSで友人がその様子を投稿しているのを見たり、メディアに取り上げられているのを目にしたりと、フリークエンシーが高まるため、まだ観ていない層も気になり始めるきっかけになるのです。

キャラクターによって倍増する愛着

韓国のドラマでは度々ドラマのオリジナルキャラクターが生まれます。例えば『美男ですね』のぶたうさぎ、『屋根裏部屋のプリンス』の大根ちゃんなど。

劇中で登場人物が好きなキャラクターという設定だったり、カップルでキャラクターのぬいぐるみをお揃いにしていたりと、象徴的なシーンでキャラクターグッズが使われるため、ドラマにハマると自分もついつい欲しくなってしまいます。

そして購入したグッズを見るたびにドラマのことを思い出すため、単純接触効果で一層ドラマのことが好きになります。

PPLによってCMが途中で入らず、集中力が続く

韓国では、ドラマや番組の間にCMが入りません。

その代わりに劇中で例えばスマホや飲食店、ドリンクなど小道具に商品を使うことで間接的に広告をします。これを「PPL(プロダクトプレイスメント)/간접 광고(間接広告)」といいます。

しっかりと広告もしつつ、ドラマの途中でストーリーが途切れないことで一層没入してもらうことができます。

1話90分/全20話/週2放送というフリークエンシーの高さ

韓国ドラマを一度でも観たことがある方ならご存じかと思いますが、韓国ドラマはとにかく1話が長いし、話数も多いです!笑

日本ではドラマ放送は週1が基本ですが、韓国では週2かつ2日連続で放送されることがよくあります。

「続きが気になる!けどもう明日には観れる!ワクワク!」と「あと5日後か〜!早く観たいな〜」の両方で飽きさせずに最後まで観てもらえます。

と言うのも、1週間空いてしまうと、最初は続きが気になっていたものも徐々に気にならなくなってきたり、ストーリーも結構忘れてしまったりしているため、愛着度が薄まってしまうからです。

ギリギリまで結末が変わる?視聴者の声反映型

韓国のドラマは、視聴者の声を取り入れ、撮り始めた後に脚本を書き換えることがあるそうです。

話題になればなるほど、たくさんの声が集まるようになります。バッドエンドは絶対に観たくない、などの声で、最後亡くなる予定だった主人公が亡くならずに終わる、なんてこともあるそうです。

ストーリーの一部を変えるのではなく、結末をまったく変えてしまうのはすごい判断だなと思います。視聴者の声が反映されることがそんな頻繁にはなくとも、「反映されるかもしれない」と思えることで、視聴者が「参加している」気分になり、SNSでの話題量が増えるのだと思います。

♦ ♦ ♦

以上、前編では韓国ドラマの5つの特徴を挙げました。

改めて分析してみると、どの特徴にも、ドラマが話題化する要因や人々を魅了する理由がたくさん詰まっていました。

後編のコラムでは、『わかっていても』や『気象庁の人々』などの作品別に、私が驚かされたドラマの構造について解説します。

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佐々木日菜(kakeru プランナー/イラストレーター)
佐々木日菜(kakeru プランナー/イラストレーター)

大学時代、フリーのイラストレーターとして活動。過去に制作した展示は、「どっちかといえばこっち展」「いい人すぎるよ展」「やだなー展」「みんなどんな感じ?展」「いい人すぎるよ美術館&切ないすぎるよ博物館」「うれしいすぎるよ展&そういうことじゃないんだよ展」など。展示ではイラストも担当している。著書に「いい人すぎるよ図鑑」。

佐々木日菜(kakeru プランナー/イラストレーター)

大学時代、フリーのイラストレーターとして活動。過去に制作した展示は、「どっちかといえばこっち展」「いい人すぎるよ展」「やだなー展」「みんなどんな感じ?展」「いい人すぎるよ美術館&切ないすぎるよ博物館」「うれしいすぎるよ展&そういうことじゃないんだよ展」など。展示ではイラストも担当している。著書に「いい人すぎるよ図鑑」。

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