事業に資する広報、経営に寄り添う広報機能を確立させたい(Shippio 小川 晶子さん)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えていたのでしょうか。横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。newmoの中澤理香さんからの紹介で登場するのは、Shippioの小川 晶子さんです。
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小川 晶子氏

Shippio 広報室 室長

2006年、RX Japanに新卒入社し出展企業サポート及び展示会広報業務に携わる。その後、広告代理店のキャスティングプランナー、人材企業でのリサーチャー、子育て情報メディアの編集マネージャーを経て、2018年8月にビザスクに広報担当として入社。事業広報、社内報立ち上げ、IPO、M&A等のPR、ブランディング推進等を担当。2024年8月、「理想の物流体験を社会に実装する」をミッションに掲げ国際物流・貿易DXを推進するShippioに広報として入社し、経営陣、事業部、プロダクト部、HR等と連携しながら広報機能の立ち上げを担っている。

Q1:現在の仕事の内容とは?

「理想の物流体験を社会に実装する」をミッションに掲げるShippio(シッピオ)というスタートアップで広報室長を務めています。当社は国際物流・貿易領域のIX(Industrial Transformarion)に挑み国際物流領域のDXサービスを展開しています。

2024年8月に入社し、現在広報機能を立ち上げている真っ最中で、事業広報、コーポレート広報、採用広報、SNS運用等を担当しています。経営陣はもちろん、事業部・プロダクト・HR等と密に連携し、事業成長と、その先にあるミッションの実現に資する広報戦略・施策を意識しています。

例えば、専門メディアに加え、これまで注力できていなかった一般経済メディアを通じた事業広報活動を強化しています。これは単にマスメディアに載りたいということではなく、あらゆる業界で貿易業務に携わる方々に対し幅広く、”貿易業務の改善ができるサービス””貿易データの活用ができるサービス”があることを認知していただく目的で活動しています。

採用という観点でも、まだまだ知られていないスタートアップですので、中途・新卒の方々が触れるメディアで定期的に「Shippio」の名や事業内容が露出することで、まずは存在を知っていただくことにつながるため一般メディアでの露出機会を創出することは重要だと考えています。

Q2:これまでの職歴は?

新卒でBtoBの展示会を企画・主催するRX Japanに入社し、出展社サポートとしてエレクトロニクス、電子ディスプレイ、文具、雑貨等の展示会を担当し、2年目からは国際メガネ展の広報を兼務していました。入社して初めて迎えたエレクトロニクス開発・実装展で、超大手から中小の工場まで1000を超える企業が自社の技術や製品を展示し、それらとの出会いを求めて来場者が押し寄せ、熱量高く商談をしている光景を見た時の、心が熱くなる感覚は今でも忘れられません。転職も多く脈絡のない私のキャリアにおいてもずっと大事にしているのはこの時の感覚となっています。

その後、広告代理店へ転職し、CM等に出演するタレントのキャスティングを手がけるプランナーとして働きました。展示会とはまた異なる、消費者向けのクリエイティブ創りに関わる日々は非常にエキサイティングでしたが、当時の時間も侵食も忘れるくらいハードな働き方とライフイベントとの両立が想像できず、一旦キャリアをお休みすることを決意しました。

第一子出産後、働きたい気持ちがつのり人材系企業のリサーチャーとして仕事に復帰し、主にハイレイヤーの人材紹介に携わった後、私自身が出産育児で感じていた課題に向き合っていたcozreという会社で、メディア運営、編集スタッフの採用、研修、イベント企画等を担当していました。

第二子の育休中に今後のキャリアについて漠然と考えていたところ、前職のビザスクから声をかけていただきました。初めて代表に会ったにもかかわらず、帰りにはここで自分が働いているイメージが強烈に沸き、2018年に広報担当として入社しました。

RX Japanで展示会広報をしていたとはいえ、企業広報とはまるで違い最初は戸惑い不安に思うことだらけでした。しかし事業への共感と信頼して任せてくれた代表のおかげで、IPO、M&Aといった経営の大きな節目や、組織・事業がグローバルに広がっていくダイナミズムを広報として経験でき、視座も上がった6年間でした。

また、初めての企業広報でもこの大きなうねりを乗り越えられたのは、広報の横のつながりのおかげです。先輩広報さんに質問しまくり、アイデアの壁打ちをしていただいたり、一緒の切り口で共同企画やセミナーをつくったり。今でも仲良くさせていただいている、尊敬する広報パーソンとの出会いにも恵まれました。

そんな中、面識もなかったShippio代表の佐藤から、XのDMを受け取りました。メッセージに込められた熱量が妙に印象に残り、数ヶ月後さらに人事の方からもメッセージをもらったことをきっかけに佐藤と初めて話をしました。

佐藤が「広報は経営戦略上非常に重要なファクターである」と強く伝えてきてくれたことが印象的でした。またShippioのことはもちろん、国際物流に関する知識も感覚も0ながらも、この事業が解決でき得る課題の壮大さや、トランスフォーメーションした先に広がる未来のことを想像しワクワクしました。

そのタイミングでは転職は決断しなかったものの、その後もShippioの動向が気になる自分がいました。同時に佐藤が熱量高く語ってくれた、広報への良い意味での重たい期待に応えてみたい気持ちがむくむくと大きくなり、最初の会話から1年半後、Shippioに転職しました。

Shippioは国際物流・貿易でBtoBサービスを展開しています。一見馴染みがない領域に思えるかもしれませんが、島国である日本にとって貿易は不可欠です。この歴史ある産業の壮大な課題を解決するには、業界全体を巻き込み一緒に変革する必要があると認識しています。ですので、広報としてはまず、業界の課題を正しく広め、変革の一歩を踏み出すことに貢献する存在=Shippioと認知していただくことを目指して活動しています。

Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?

シンプルですが「何をするか」「誰とするか」の2点です。自分のスキル習得や待遇は二の次かもしれません。

私の仕事のポリシーは「事業に資する」ことです。極端な話、事業に資することができれば職種にこだわる気持ちはないので、この先広報以外の仕事をしている可能性もあります。

佐藤から最初にミッションを実現した先の話を聞いた時、新卒で展示会の光景を見た時のような、心が熱くなる感覚がありました。このビジネスが広まったら貿易の当たり前が変わり、この領域で働く人が幸せになる。それに資する仕事がしたいと直感的に思いました。

また、特にまだ大きくない規模の組織において広報は、客観的な視点を持つトップの代弁者であり、信頼できるパートナーであり続けることが大事であることを前職で実感しました。ですので、トップと話した時の感覚、直感といったものはとても大事にしています。

Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?

広報が事業に資する機能となれば、佐藤のように「広報は経営戦略上、非常に重要なファクターである」と認識する動きは進むでしょう。役職名が全てではありませんが、CHRO、CMOなどと比較すると、広報でこういった役職を設けている会社は多くはありません。

背景には、広報の成果が定量的に測りづらいという問題も根深くあると感じています。定量的な成果の計測の必要性を感じる一方で、成果が非常に数値化しづらく時間もかかる施策も多いです。

広報の方々と話すと毎度、この話題が挙がるほど皆さん一様に頭を抱えているのではないでしょうか。会社の規模やフェーズ、toBなのかtoCなのかといった要素によっても何を数値化すべきなのかは変わってくるでしょうし、数値化したところで正しくそれが測れるかという問題もあります。各社の話を聞いていると、掲載数、行動量、検索数といったあらゆる数字を基準に確からしいKPIを定めている様子ですし、私も同様にKPIに向き合ってきました。

成果を定量的に証明できることで、転職のチャンスが広がったり、より適切に評価されキャリアの選択肢が広がるようになることが望ましいと思います。なかなか簡単ではないですが、まずはどんな定量化の基準があるのか、各社の取り組みや知見を出し合い、自社に近しい企業のやり方を研究することで、互いにヒントを見出せたらと考えています。

前項で触れたように広報コミュニティには親切で互助の意識が強い方々が多いので、そのつながりを活かし、お互いの仕事の価値・地位の可視化、広報のキャリア形成につなげられるようなことをしていきたいです。

Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?

事業に資する広報、経営に寄り添う広報機能を確立するためには、まだまだやるべきこと、やりたいことだらけです。一歩一歩着実に、でも機を逃さないスピード感を持った動きが重要なことを意識しつつ、まずはこの組織、領域における広報機能の確立に向けてチャレンジを続けていきます。

また、広報のメディアリレーション〜取材いただくまでのフローは、営業の顧客開拓〜受注のフローに近しく、営業が一社一社に深く向き合うのと同じように一媒体一媒体に向き合っています。

一方で、プレスリリースやオウンドメディア、IPO後であればIRといった発信では、ブランディングを意識した高く広い視点が求められます。広報はここのバランスの取り方、使い分けが非常に重要だと思うので、バランス感覚に加えて、今後は後者の高く広い視点を磨いていきたいと考えています。

その先に、経営により近い立場で事業に資する「経営戦略上重要なファクター」としての広報キャリアを形成し、自分が助けていただいたように広報のつながりの中で役に立てるような存在になれたら嬉しいです。

【次回のコラムの担当は?】
M&Aクラウドの細山加央里さんをご紹介したいと思います。様々な領域のスタートアップ広報を歴任され、現在は「M&A」というテーマで自社のみならず業界の動きに広くアンテナを貼り、企画を立て推進する姿勢を尊敬しています。どんな意識で日々の情報収集を企画に落とし込んでいるのか伺ってみたいです。

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