※本記事は月刊『宣伝会議』1月号の転載記事です。
マーケターを対象にした人気の「戦略講座」の4時間分の講義をまとめた1冊。戦略の要点を簡潔に理解でき、限られた資源で確実に目的を達成するための実践的な技術が得られるほか、戦略の立て方をステップごとに解説している。
経営戦略や競争戦略を学んでも、マーケティングや営業の日々の意思決定に活かしにくいと感じている人、戦略を理解したうえで立案したい、戦略に強くなりたい人は必読。
前作より読みやすくなった本書は「戦略のつくり方」に焦点
――本書はどのような人に向けてつくりましたか?
マーケティングに携わる皆さんを対象にしていますが、特に若手マーケターや戦略を初めてつくる人、クライアントとエクセキューション(実行手段)ではなく、戦略レベルで合意できたら効率が良いなと悩んでいる広告会社の人にも読んでほしいと思っています。
――本シリーズの前作にあたる『なぜ「戦略」で差がつくのか。』との違いは何でしょうか。
前作は、P&G、ユニリーバ、資生堂などで私が実際に実施していたトレーニングをもとに書籍化したもので、誰かに読んでもらうというよりは、自分の覚書に近いものでした。
多少難解でも読み通せる読破力があって、問題意識が強くあり、解決策を探していた人たちからは想像以上の反響がありました。戦略の構造や仕組みを体系立てて教えてもらう機会は案外少ないですからね。
ただ、その人たちから返ってきたのは「これは組織全体で理解しなければ意味がないが、部下には内容が重くて読み切れないこともある」という声でした。そこでまずひとつ目として、前作より読みやすくしています。
もうひとつが、前作では「戦略の構造」を説明しているのに対して、本書では具体的な「戦略のつくり方」に焦点を当てていること。
前作において、言葉としての「戦略は目的と資源である」などということは理解してはいるものの、実際に手を動かす、戦略をつくる際にはどうすれば良いのか、という課題を解決する内容になっています。
『なぜ「戦略」で差がつくのか。』では戦略の概念を分解し、『君は戦略を立てることができるか』では、戦略という概念を構築していっている。わかりやすく例えると、前者は人間に必要なことが書かれている栄養学で、後者はそれを活かしてどう美味しい食事をつくるかを解説しているレシピ本のようなものです。
――前作に対するフィードバック等も踏まえて、今回の執筆で意識したこと、また本書のおすすめの読み進め方について教えてください。
本書はとにかく読み切ってもらうことがメインで、平均的な読書速度を400~600字/分と仮定すれば、120~180分で読み切れるようになっています。
前作を発売した2017年からブラッシュアップし続けた講義(4時間分)を書き起こし、約7万字にまとめていますが、読書時間は東京~新大阪間の新幹線の片道を目安としました。挿話などは文字フォントを変えていますし、要点に集中するときには読み飛ばしてもかまいません。
また、各章に網掛けで「まとめ」と「練習問題」を入れているので、章ごとに、より理解が深められるようになっています。「まとめ」と「練習問題」だけ後から振り返ることもできますし、「練習問題」のみ何度も取り組んでみるのも良いと思います。
なぜなら、“思考能力”は身体技術なので、練習しないと身に付かないからです。思考というのは“精神”の力ではなく、“身体”である脳の力。練習を重ねないと考えられるようにはならない。
それは私たちが受験の時、一生懸命に勉強しないと問題が解けるようにならなかったのと同じように、戦略も練習をしないとできるようにはなりません。
ぜひ、練習問題のページには付箋を付けて、いつでも見返せるようにしてもらいたいと思います。
――これから本書を手に取る方に向けてメッセージをお願いします。
本書は前作が読みづらかった人たちにとって、手引きになるような内容にしました。
マーケティングにも共通言語があるように、戦略も概念的な話なので、足並みをそろえるためには共通言語が必要です。そうでないと、せっかくミーティングをしていても、足元が定まらない。皆が共通言語を使うことができれば、それぞれの力を最大限発揮できるのではないかと思います。
一度、個々のチームメンバーで、戦略とは何であるか、書き出してみましょう。もし全員が同じ記述であれば、すでに共通言語として戦略が正しく運用されているのでしょう。
もしそれぞれが異なる記述をしているなら、本書はきっと役に立ちます。広告主のマーケターも広告会社の人にも本書を読んで、戦略に関する共通言語を持って日々思考していってほしいと思います。
『君は戦略を立てることができるか 視点と考え方を実感する4時間』(音部大輔)
マーケターを対象にした人気の「戦略講座」の4時間分の講義をまとめた1冊。戦略の要点を簡潔に理解でき、限られた資源で確実に目的を達成するための実践的な技術が得られるほか、戦略の立て方をステップごとに解説している。経営戦略や競争戦略を学んでも、マーケティングや営業の日々の意思決定に活かしにくいと感じている人、戦略を理解したうえで立案したい、戦略に強くなりたい人は必読。
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