現役大学生が「東京国際映画祭」を現地で取材! 「EIGASAI」はこれからどうあるべきか?

2024年10月28日から11月6日までにかけて日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で「第37回東京国際映画祭(TIFF2024)」が開催されました。本映画祭は、映画産業を盛り上げることを目的につくば万博に合わせ1985年から開催され、37回目を迎えた今年は、吉田大八監督の「敵」がコンペティション部門の最高賞・東京グランプリを日本映画として19年ぶりに受賞したので、各種報道などで目にした方も多いかもしれません。
 
国際的な映画祭といえば有名なのは、フランスのカンヌで開かれる「カンヌ国際映画祭」やイタリアのヴェネツィアで開かれる「ヴェネツィア国際映画祭」ですが、こうした映画祭は、映画はもちろん、その国の文化やその国そのものを広告する役割を果たします。たとえば、「東京国際映画祭」も今年は国内外の作品計208本が上映されました。世界中の人々が一堂に会する場で、映画を通じて自国の文化を発信できる場は貴重で、まさに広告メディアであるといえるでしょう。
 
いま、「マスメディア」から「デジタル」へと、広告業界はすさまじく変容しています。だからこそ、映画祭のように「まち」が、メディアになるリアルな接点の重要度は増しているのではないかと思います。
 
この記事では映画祭を取り上げますが、これは新作の映画評ではありません。「アドタイ」読者の皆さんには、「まち」がメディアになるという視点から、「東京国際映画祭」のレポートをお届けできればと考えています。
 
すでに、テレビや新聞などの総合メディアから映画業界の専門メディアまで、各メディアでアワードの結果を中心に、現地の様子は紹介されていると思います。そこで本レポートは、プロのメディア記者ではなく、教育学を専攻する現役大学生の視点も交えながら、お届けします。
 
※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。
※本記事の企画・取材・執筆は教育部所属・佐藤良祐が担当しました。

「まちメディア」としての映画祭の可能性

筆者は2024年5月の欧州滞在時に、「カンヌ国際映画祭」を取材しました。どうしてもそちらと今回の「東京国際映画祭」を比べてしまうものですが、それぞれのよさ、それぞれの課題があると感じました。

「カンヌ国際映画祭」を取材した際の記事では、世界の大舞台における日本の映画やその人材、そしてそれらの国際的な立場に課題があることを取り挙げました。その一方で今回の記事では、映画祭を開催する側の視点に立つとどのような課題が見られるかということについて、中心に取り挙げてみたいと思います。

「東京国際映画祭」は、突然のコロナ禍に見舞われた2020年にも、その前年に引き続いて対面で開催されました。わざわざ対面の映画祭という場が定期的に開催され、世界中の人々がそこに集っているのです。

普段はあまり映画を観ない人がふとした出会いで映画に興味を持つようになる。映画をよく観る人も、新たなお気に入りの作品や監督を発見できる。国内外の映画関係者同士で話がお互いに協力したいと思えるようなパートナーが見つかる…。これらはすべて、リアルな場があるからこそ、生まれる偶然の出会いであり、その出会いは、さまざまな主体や関係性において起こりうることだと思います。

「東京国際映画祭」の開催に先立つ、10月11日から10月27日までにかけては「日比谷シネマフェスティバル2024」が開催になりました。会場の中心となったのは東京ミッドタウン日比谷横の日比谷ステップ広場という「東京国際映画祭」の会場の中心と同じで、映画祭に向けての「まち」の盛り上がりに大きく貢献していたように感じます。

商業施設とオフィスで埋め尽くされている日比谷エリアなので、「まち」の一般の人々がこれを盛り上げることは少なかったかもしれませんが、たまたま通りがかった人たちが、無料の(!)野外上映など、多様な映画鑑賞のありかたを体験することができるような仕組みが整っていました。これが、映画祭や映画に多くの人たちを偶然、出会わせるきっかけになっていたと思います。これも、「まち」のメディア化の効果だと思います。

写真 イベント 日比谷シネマフェスティバル2024

10月14日の野外上映。上映作品が「ルパン三世カリオストロの城」ということもあり、老若男女問わず、大勢の人たちで賑わっていました。画面と音響の質も問題はなく、十分に楽しんで鑑賞することができました。

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