現役大学生が「東京国際映画祭」を現地で取材! 「EIGASAI」はこれからどうあるべきか?

「交流ラウンジ」の活用から見えた、もっと“つながる必要”

しかし、私がもっと“つながる必要”があると感じたのは、一般の観客と映画界、だけではありません。「東京国際映画祭」をよりよいものにするためには、ほかにもいくつか考えなければならない主体があります。

それは観客ではなく、映画という産業にかかわる方々の交流です。「東京国際映画祭」では開催期間中、「交流ラウンジ」という場が設けられます。この仕組みは今年で5年目になりますが、今年度の「LEXUS MEETS…」はまさに映画祭の会場の中心にあり、ラウンジの立地としてこれ以上にふさわしい場所はおそらくないと感じました。

しかし、映画祭の安藤裕康チェアマンの総括でも指摘があったのですが「交流ラウンジ」自体がまたひとつのイベントのようになっていて、それ以外の時間にはこのラウンジが解放されていない、という課題もありました。

私はこのラウンジを11月1日のイベントのないお昼の時間帯に一人で訪れることにしました。「東京国際映画祭」の期間中には、ラウンジは一般の人たちに開放されないので、映画関係者にしか入れない仕組みになっていました。パスを提示すると、そのまま席へと案内されました。どうやら、カフェやレストランのように席で注文をするようです。そして、注文した飲み物と食べ物を楽しんだあとは、そのままレジで会計を済ませて、ラウンジを後にすることになりました。

一般的なラウンジや「カンヌ国際映画祭」のラウンジと比べて、筆者にはこの仕組みはとても違和感のあるものでした。店員の方にお話をうかがったところ、ラウンジ入り口のおしゃれなバーさえも、映画祭の期間中にはほとんど使用されないということでした。おそらく、「交流ラウンジ」という交流のためのイベントが開催されるときや、交流しようとするつもりの相手とここまで一緒に来て同じテーブルに座ることでしか、このラウンジを使うことは想定されていないのではないかと思いました。しかし、本来は、このような場における交流はもっと自由なものであってよいはずです。「カンヌ国際映画祭」のラウンジでは、他の映画関係者との偶然の出会いがあり、その出会いがあってはじめて偶然体験することができたことも多くありました。

写真 店舗・商業施設 TIFF LOUNGE

「交流ラウンジ」のTIFF LOUNGE。

映画界が人と社会のつながりをつくっていく可能性

一方で、選定作品や企画などをよく見てみると、「東京国際映画祭」は映画界の文化醸成に大きく貢献するものではないか、とも思わされます。岸田元総理も視察に来訪したTIFFティーンズ映画教室や、山田洋次監督を始めとする4名が選考委員の黒澤明賞など、これは「東京国際映画祭」ならではだと感じられるような企画も確かに存在します。

新しく斬新な作品や人材を育成し、世界に向けて宣伝するための場として、「東京国際映画祭」はこれからよりいっそう大きな役割を果たすことが期待されます。他方で、映画界が社会と接続するものであるからには、映画界が人や社会とのつながりをつくっていくということ、さらには人や社会そのものをつくっていくということによって、その貢献が還元されるようにして、映画界もまたさらなる発展が可能になるようにも思います。

写真 人物 複数スナップ 三宅唱監督とフー・ティエンユー監督

黒澤明賞を受賞した、三宅唱監督とフー・ティエンユー監督。

筆者には、映画祭の2日目に行われた、コンペティション部門の審査委員記者会見における審査委員たちの発言がとても印象に残っています。審査委員からは、「東京国際映画祭」の選定作品や企画がさまざまな性別、年齢、地域を幅広く考慮していることを高く評価する意見が相次ぎました。他方では、筆者にとって海外の映画祭のほうが優れていると感じられたような、現時点では課題とされる役割を「東京国際映画祭」に期待するような声もありました。

ハンガリーの監督エニェディ・イルディコーさんは、大作や巨匠を称賛するだけでなく、隠された作品や人材に光を当てるという容易でないことを「東京国際映画祭」は勇敢にやり遂げている、と賞賛されました。

一方で、フランスの俳優キアラ・マストロヤンニさんは、コロナ禍などを経て私たちが新しい習慣を築くようになってもなお、周りの知らない人たちと出会い、観客とともに映画という体験を共有することができるようなきっかけである映画祭をこれからも守っていく必要がある、と力強く説かれました。

はたして「東京国際映画祭」、そして日本の「EIGASAI」は、これからどのような「まち」づくりのもと、どのような“広告メディア”となっていくのでしょうか。また、この場がどのように人と人をつないでいくのでしょうか。「体験の場」を通じた、新たな「まちメディア」の可能性を感じます。

写真 人物 集合 キアラ・マストロヤンニさん、エニェディ・イルディコーさん、トニー・レオンさん、ジョニー・トーさん、橋本愛さん

コンペティション部門審査委員を務めた5名。左から、キアラ・マストロヤンニさん、エニェディ・イルディコーさん、トニー・レオンさん、ジョニー・トーさん、橋本愛さん。

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