長い年月も一瞬に
ミヨ(60代女性・仮)は20年以上にわたりあるタレント「担」だったが、熱愛報道を機に担降りした。
「以前は出演番組も全てチェックして、コンサートの翌日はワイドショーも全局録画してたけど、今はまったく見てません。あえて見ないようにしている気もします。先日たまたまテレビに出てるのを見てしまいましたが、肌が汚いとか、年を取ったなとか、イヤなところばかり目につくんです」
推し始めたのは20世紀末。特に楽しかったのは、娘の幼稚園で知り合ったママ友間でのアイドル談義。40代半ばにくも膜下出血で倒れた時も、病室で推しの曲を聴いて励まされた。娘が物心ついた頃からは、親子でコンサートに通うようになった。毎年現場に通うことが楽しみで、そのたびに少女の心に戻ってきた。
娘が大学進学を機に上京してからは、娘のもとに転がり込んではコンサートを観に行った。
ミヨは語気を強める。
「ずっと王子様キャラだったのに、におわせをしていたのも幻滅です」
ファンの間で相手の女性のSNSなどから交際をにおわせていることが話題になっていた。
ミヨの押し入れを見せてもらうと、めったに出さない客用布団の隅にひっそりグッズがしまい込まれていた。
「せめて交際期間は明かさないでほしかった。私が推していた期間の半分近くも付き合っていたなんて。人間だから恋愛するのは仕方ないけど、私が夢中になったあの時も実は…と思うと、何も知らなかった自分がバカみたい」
過去の全てが情けなくなってしまった。途方もない時間を推しに捧げてきたが、担降りの決意は一瞬だった。
「でも正直、両親の介護が必要になって辞め時を探していたような気もします。いつまで続けられるかなと思ってました。ちょうどよかったのかもしれません」
ミヨのように「熱愛や恋人がいることのにおわせ」でしんどさを感じた人ほど、ためらいなく推し活をやめる傾向にある(グラフ)。この点は全ての推される者及び関係各位に知っておいていただきたい。