プレイヤーが増え続ける業界で、生き残る道
出版不況によって多くのメディアが消えていく。にもかかわらず、書きたい人、作りたい人は増えている。AIの登場でさらに仕事が減り、人余りは深刻化するだろう。
その中でこれからも生き延びていく編集者・ライターには、深い視点、高いレベルでコンテンツと向き合う企画力が求められる。企画力が無ければレベルの高いコンテンツを生み出せないからだ。逆に企画力があれば、今はない仕事を生み出すこともできるかもしれない。
ではそんな企画力をどう身に着け、磨いていけばいいのか?これが難しい。ただ仕事をするだけでは、企画力は磨かれないからだ。仕事には「受注」するものと「提案」するものがある。「受注」の場合、「企画」の仕事は発注者側の編集者が担う。
また、こちらが提案した仕事だったとしても「いつものパターン」「見せ方を少し変える」ような、ある種ルーティン化した仕事では企画力は磨かれない。
「なんでコレなの?」「なんで面白いと思ったの?」「なんで今なの?」しつこいくらいに詰めてくれる厳しい環境で、今までの自分を超える企画を作ることでしか、企画力は磨かれないからだ。流行ってるから、新しいから、話題だから、人気だから、を超えた独自性のあるコンセプトを見つけなくてはならないのだ。
企画で挑戦しない者に訪れる不幸
正直、そんなことをしなくても今、目の前の仕事をしていれば食っていける人もいるだろう。仕事には困っていない、このままでもやっていける。だが、出版業界は長く続けるほどに差が開く業界でもある。
例えばあなたとほぼ同じくらいの実力・評価・人気の編集者・ライターがいたとする。自分が目の前の仕事を必死にこなしている間に、相手は「これが自分の専門分野だ」と言えるジャンルの企画に挑戦し、爪跡を残している。数年経つ頃には相手はそのジャンルで名の知れた人物になっている。にもかかわらず自分は未だに、何ができるのか、何が得意なのかを世の中に示せないまま替えの効く仕事をこなしている。
こういうことが実際に起きてしまう残酷な業界なのだ。この二人の違いは企画で挑戦したか、挑戦しなかったかでしかない。
クリエイターはみんな個人商店なので、「お前このままだとあいつに置いて行かれるぞ」「そのままだと数年後仕事が減り始めるぞ」なんて誰も教えてくれない。会社の同僚や依頼主のような仕事仲間は「この仕事をいかに完遂させるか」を一緒に考えてはくれるが、自分の将来まで考えてはくれないのだ。
「負けてるかも?」と気づいた時には、もうだいぶ負けているものだ。気づかないうちに、なんなら自分の方がリードしていると思っているうちに、少しずつ差をつけられているのだ。
そうなるのが嫌なら、自分のためにも企画で挑戦していくしかない。自分の未来を企画するのだ。
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