初参画企業が語るCCNCならではの魅力
━━今回集まったカンロ、ロッテ、江崎グリコは2024年度から初めてCCNCに参画したと聞きました。
松葉:日本総研がCCNCを設立したのが2023年。その1年間の活動を見ていて、魅力的だと感じていたのは小売業が参画していることでした。カンロだけではなく、今や環境に配慮した取り組みは欠かせなくなっています。販促の領域も同様です。ですが、販促と環境配慮が両立するかどうかはメーカー1社だけで検証しきれませんよね。商品を棚に並べてくださる小売業のご協力が必要不可欠です。とはいえ、普段の商談で環境配慮の側面からの企画を提案するのも難しい……。そのような課題を持っているメーカーは当社だけではないと思います。そのような視点で考えてみても、コンソーシアムとして小売業が参画していることは魅力だと感じていました。
飯田:昨年度はスギ薬局さん、万代さんの店頭に参画企業の製品を並べる“CCNC棚”をつくって実証実験を行っていましたよね。とても魅力的な取り組みだと感じていました。他にもロッテとしては、自治体や教育との連携もCCNCならではの良さだと考えています。特に、小学生との接点を持てることには惹かれましたね。2024年度のCCNCの活動予定には、大阪府の小学校等全校にエコラベルを掲載した冊子を配布することが記載されていたんですよ。出張授業などで2~3校の生徒と話せる機会はあっても、府下の全小学校という規模感で接点を創出できるのはこれまでにありません。参画したいと思った要因でした。
藤下:江崎グリコも、小学生に当社の環境配慮への取り組みやエコラベルについて知ってもらうタイミングをつくることができるのは、CCNCならではの強みだと感じています。今の小学生は脱炭素についての授業を受けていますし、ある意味で環境配慮を「特別」ではなく「当然」と捉えていることも多い世代だと思います。我々にとっても未来の顧客になり得る層であることを考慮しても、教育との連携はありがたいです。
━━ユーグレナは2年目の参画です。過去1年は、いかがでしたか。
宮澤:ユーグレナは企業としてのフィロソフィーに「サステナビリティ・ファースト」を据えていて、サステナブルな取り組みが存在意義になっている会社でもあります。そういう意味でも、ユーグレナが環境配慮に取り組むことは使命ですし、その中で販促を両立させられることが証明できれば、当社として新たな成長可能性が見つけられそうだと思っていましたね。CCNCでは、それが実現できそうだと思って参画しました。過去1年の取り組みを振り返ってみても、参画しているのは国内の名だたる企業ばかり。“脱炭素と販促の両立” という1つの目標に向かって錚々たるメンバーが取り組むからこそ「大きなうねり」のようなものを起こせるのではないかと思いました。2024年度は皆さんがここまでお話した通り、教育・自治体との連携も始まって、より厚みのある活動になってきていると感じます。
小売業と連携した実験は仮説検証の場として活用する
━━2024年度も11月からスギ薬局、万代での実証実験を行っていると聞きました。反響はどうですか。
田島:2024年度は大きく2 つの実証実験がなされています。1つは、万代の大阪府内の全店舗(113店舗)における脱炭素配慮型商品の店頭販売とその購入金額に応じたキャンペーン。そしてもう1 つはスギ薬局が運営する「スギ薬局アプリ」で、脱炭素配慮型商品が貰えるクイズキャンペーンです。
実証が開始してから1カ月にも満たないですが、やはり環境配慮の切り口の企画棚を、実際の売り場で展開できるのは強みですよね。仮説を検証する場として活用できるのがありがたいです。江崎グリコ1社では成し遂げられないことだと強く思います。
宮澤:仮説検証の機会になるのは、メーカーとしては嬉しいポイントですよね。今回ユーグレナが検証したいのは、環境配慮に関心が薄い層が買いたくなるような「型」の有無。販促の再現性を高めるためにも、実証でヒントが得られたらと思っています。
飯田:行動変容にどれくらい繋がるかはロッテもかなり気になります。今回は実証前に、大阪府内の全小学校・支援学校小学部等の4~6年生約21万人へ脱炭素配慮型商品の理解を深めるための学習キットを配布していますし、それが販促としてどう作用するのかも興味深いです。店頭で知られるのも大事ですが、今回は事前に「知る」→店頭で「見つける」というアクションになると思いますし、どのような効果が出るか今から楽しみです。
エコラベルやカーボンフットプリント(以下 「CFP」)に関する実践的な学びを提供する学習キット「緊急! 減CO2(ゲンコツ)ミッション第2弾 エコラベル研究所からの指令」(以下「エコラベル学習キット」)。大阪府内小学校等1,029校の4~6年生(支援学校小学部を含む)約21万人を対象に、2024年10月24日から各学校経由で配布した。
松葉:小学生に授業や学校で脱炭素配慮型商品のことを知ってもらうことも大きなアドバンテージなのですが、その保護者も巻き込める可能性があるのもポイントですよね。というのも、学校で事前に知るのは小学生の皆さんなのですが、購買対象者は小学生ではなくその保護者である大人であることがほとんどです。要は、CCNCを知った小学生が売り場前で立ち止まったりしたときに、一緒に買い物に来ていた保護者の方々に伝え、認知させ、購買のきっかけをつくることが可能性として考えられるんですよ。これは自治体や教育と連携しているからこその拡がりかたですよね。
━━これからCCNCでどのようなことに挑戦してみたいですか。
飯田:これは1つのアイデアなのですが、実証実験の時期を夏休み期間などにできると、実証の幅がグンと広がりそうな気がしていますね。せっかく小学校に冊子を配布していますし、自由研究などと重ねてみるとより深い取り組みになりそうだと思っています。
宮澤:切り口的にも実現可能性はありそうですね! ユーグレナとしても興味深いです。やはりCCNCは仮説検証の場として活用できるのが魅力なので、今後は定性調査も実施していきたいですね。デプスインタビューで購入者の特徴を分析しても、環境配慮型販促の型が見えるヒントになりそうだと思っています。
松葉:カンロはメーカーとして、実証の対象地域を拡大してみたいですね。そう考えても小売業の協力はやはり欠かせないと思います。今は大阪での実証にしっかりと向き合うことが必要だと思いますが、将来的には全国的に展開してみたいです。
藤下:サステナブルな取り組みは中長期的な目線で追っていかなければならなりませんが、一方で販促は企画を行って短期的に成果を見られるものです。まずは毎回の実証結果をしっかり見直してPDCAを回していけるようにしたいですよね。CCNCメンバーの知見を結集させて、“脱炭素×販促”の前例をつくっていきたいです。
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