共感を得て、模索し続けるenvision 社会変革のための「ブランディングの民主化」

「未来のためにできることをやる。」をパーパスに掲げる、クリエイティブコンサルティング企業のenvision。同社は「Critical Creative」の考え方を重視し、クライアントと共に社会課題の解決を目指している。今回、インターブランドジャパンを経てCOO兼CBOに就任した藤巻功氏が聞き手となり、ブランドコンサルタントで愛知東邦大学の教授を務める上條憲二氏と、サントリーホールディングス デザインセンターの宮城愛彦氏に、これからの時代のブランディングの在り方について話を聞いた。

(写真左から)エンビジョン 代表取締役 井上大輔氏、サントリーホールディングス デザインセンター部長 宮城愛彦氏、愛知東邦大学 教授 上條憲二氏、エンビジョン 執行役員COO兼CBO 藤巻 功氏

インターブランド出身者が語る「ブランド」の在り方

藤巻:お二人はブランドコンサルティング会社のインターブランドジャパンを経て企業や大学のブランディングに携わられています。ブランディングへの視点は変わりましたか。

上條:私は現在、愛知東邦大学でブランド論を教えながら、大学自体のブランディングにも取り組んでいます。私自身がブランディングの提案をする側、受ける側の双方を経験したいま感じるのは、一方的な提案では決して組織に根付かないということです。「ブランド力が必要だ」と考えている経営層は多いですが、しかしブランディングには経営層だけでなく、全社の理解・納得が必要。それゆえ、ブランドとは何か?ブランドが確立されることで得たい効果は何か?など、まずは社内の理解を得る必要があります。

私は、自分が所属する大学のブランディングでは、“土壌づくり”から行いました。具体的には私が担当するゼミ生4人が学生を対象にアンケートをとって、大学に対するイメージなどを把握。その結果をふまえてブランド推進委員会を立ち上げました。最終的に定めたのはロゴとコンセプトフレーズの「オンリーワンを、一人に、ひとつ。」のみ。教職員たちで「クレド(信条・誓約)」を決めていきました。トップから落とし込むのではなく、土台を定めて学生や教職員が自由に演技をする。このことで「らしさ」が自然と生まれたのではないかと感じています。

宮城:決定的に変わったのは、ひとつは生活者に近くなったこと。その結果、自分たちの商品がどう受け止められているかをダイレクトに感じることが、つくり手にとっていかに大切かということに気付きました。もうひとつが、以前はコーポレートブランドの傘の下にプロダクトブランドがあるという発想で捉えることがブランディングの基本としていましたが、今はプロダクトを起点にコーポレートブランドが形づくられていると実感するようになりました。これも生活者に近くなったから気付けたことだと思います。それぞれのプロダクトが目の前にいるお客さまに真摯に向き合い続けた結果、ブランド側が可変していって、さらにその総体として企業が形づくられている。個々の「らしさ」が生まれることで企業全体のブランドが形成されているのだと感じます。

Critical Creativeでブランディングをリブランディング

藤巻:我々envisionでは「CriticalCreative」を掲げ、社会の変革につながる「新たな意味や価値」をつくり出すことが大切だと考えています。現代の成熟化した日本社会において、ブランディングが抱える課題とは何でしょうか。

Critical Creativeの織りなすうねりがエンドレスに続いていく様を表現し、パートナー(クライアント)や社会、そして関わる人々にコレクティブ・インパクトをもたらすことを表現。

※ 商標登録出願中(2024年12月6日)

宮城:「Critical Creative」は、まさに私の今の仕事における真髄でもあると思います。これまで洗剤・シャンプー・飲料など、様々なカテゴリーのブランディングをしてきましたが、この世に無い全く新しい製品の仕事はほとんどありません。私たちの役割は、すでにあるものの価値を新しい視点から高めることにある。時代に合わせて少しずつ価値をずらしていって「確かにこれは良いね」という“声が聞こえる形”にする、というイメージです。

上條:「正解」のコモディティ化が進んで、つまらないブランドが増えてしまっているようにも感じます。そういう意味で、現状の「常識」や「当たり前」を批判的に捉え、問いをつくり続けていくという姿勢は必要なのではないかと思います。

宮城:昨今、アジャイル型のプロジェクトが増えていますが、クリエイティブも完成して納品すれば終わりではなく、時代や環境に合わせてアップデートし続けていく必要があるのではないでしょうか。テクノロジーの進歩も突破口となり、デザイナーの仕事もクライアントや市場と対話しながらつくりあげていく「ランニングワーク」に変わっていくのではないかと考えています。

上條:大学でも、先述の通りMVVをフルコースで定めることはしませんでした。初めから決め切らないからこそ、自走できるブランディング活動になるのかもしれません。

私が所属する日本ブランド経営学会では「ブランディングをリブランディングする」「ブランディングを民主化する」ことを目指しています。ブランドとは、現状の課題や解決策を当事者たちが自由に議論して形づくるものだと思っています。

宮城:“ランニングワーク”の話と“ブランディングの民主化”について考えると、つまりクリエイティブはもっとライブキッチンでつくる方がよい、ということかなと思いました。料理は厨房の奥でつくるよりも、目の前でつくっているほうがおいしく見えるものです。生活者や社会と対話しながらブランドを形づくる、そんな未来をここにいる皆さんと一緒につくっていきたいですね。

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社会に対してポジティブなインパクトを

代表取締役・井上大輔氏の「クライアントの課題を解決するだけではなく、人々の価値観や行動にポジティブな影響を与えたい」という想いのもと生まれたenvision。社会情勢やトレンドをふまえたコミュニケーション設計により、パートナー企業やユーザーの潜在的な課題に対する答えとなるクリエイティブを生み出している。
 
同社が重視するのは独自の「Critical Creative Curlicue」という考え方だ。この概念では、Critical Creativeの織りなすうねりがエンドレスに続いていく様が込められ、パートナー(クライアント)や社会、そして関わる人々にコレクティブ・インパクトをもたらすことを表現している。「現代の社会課題は環境やテクノロジー、さらに個々人の価値観などが複雑に結びついている。
 
これらを紐解き解決に導くためには、批判的な考察を盛り込むことが重要」と井上氏。視座を高く、システム思考の視点から捉え、たとえ「冊子1冊」の企画であっても込めていく。
 
加えて「よりよい社会の実現のためには、“ブランディングの民主化”も必要な視点」と話すのは藤巻氏。“ブランディング”のアプローチをもっと多くの方々に、より経営の中枢において効果的に活用できるように、様々なチャレンジを模索していきたい、その実現には、“一人ひとりの志”が肝になるという。
 
「クライアントだけでなく、賛同する仲間や異業種の企業などとも志を共有していくのが私たちの役割。同志を増やし、社会へのインパクトある解決の可能性を模索していきたい」と、井上氏は今後の展望を語った。

 

※ 商標登録出願中(2024年12月6日)

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