左から)フェズ ビジネス開発部部長 根津スティーブン遥氏、フェズ 開発本部本部長 青野紳三郎氏
生成AIでデータ分析を民主化する「Urumo BI」
人口減少、原材料費の高騰、消費者のライフスタイル・ニーズの多様化などにより、メーカーでも小売でも、マーケティング戦略を大きく見直す必要が生まれている。従来のマスマーケティングをそのまま実行し続けていては、投資効率の悪化が避けられないのが現状だ。
「従来のマスマーケティングの手法が通用しにくくなっている現在のような状況下では、ファクトデータに基づいた消費者起点のプランニングが不可欠です。しかし、データの分析や活用には専門的な知識やスキルが求められるため、多くのマーケターにとって高いハードルがあります。フェズはこの課題を解決するために、誰もが簡単にデータ分析を活用できるソリューションを提供しています」と開発本部本部長の青野紳三郎氏は語る。
フェズは、複数の大手小売企業と連携し、約1億ID分のID-POSデータ(購買データ)や店頭データを横断的に管理・分析する国内最先端のリテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を開発・提供している。
2024年7月にローンチした「Urumo BI」は、この「Urumo」をベースに生成AIを活用した新たなBI機能だ。「データ分析の民主化」をコンセプトに開発された「Urumo BI」は、データ分析に関する専門知識やスキルがなくても、生成AIの活用により、購買データの分析設計や実行、分析結果の解釈を簡単に行うことができる。
「Urumo BI」の主な機能は、「おすすめダッシュボード」「AIチャット」「AI分析」の3つ。「おすすめダッシュボード」では、類似ユーザーの利用傾向から推奨される分析機能を提案し、データ分析の経験が浅いマーケターでも最適な分析手法を容易に見つけることができる。「AIチャット」では、「ブランドAとブランドBを比較したい」と自然言語で指示を入力するだけで、両ブランドの購買データの比較・分析結果が表示される。さらに「AI分析機能」では、出力された購買データの概要や特徴、考えられる仮説や解釈を提示し、次に行うべき分析やアクションも提案してくれるという。
「『Urumo BI』は、分析結果を見たマーケターの方が具体的なアクションまでつなげられることを重視して開発しました。広告配信リストの作成、社内資料の作成など、“ラストワンマイル”までを想定したアウトプットで、マーケターの業務を多角的にサポートします」(青野氏)。
「どこが伸びそうか」という売上の“余白”を特定できる魅力
さらに同社が提供する広告配信ソリューション「Urumo Ads」との併用によって、データ分析やインサイトの発見だけにとどまらず、そこから得られた結果を施策に活かし、その施策の効果検証まで実現可能だ。主要広告媒体と連携し、質の高いリーチを維持しながらセールスリフトに貢献する「Urumo Ads」は、現在100社以上・360ブランド以上の日用消費財メーカーが導入している。
「例えば、飲料メーカーが自社商品のドリンク剤の顧客解像度向上のため、『Urumo BI』で購買データの分析をしたとします。分析の結果、『仕事に疲れたビジネスパーソン』『健康意識が高い人』『風邪を予防したい人』の中で、最も買ってくれやすいのは『風邪を予防したい人』だと判明。その顧客クラスターに対し風邪予防訴求を全面に謳った広告を『Urumo Ads』で配信し、その広告を見た方が実際に商品を買ったのか効果検証を行う。その結果から最も効果の高い訴求軸を特定したうえで、次の大規模なキャンペーン施策を実施する、といった一連の流れを同一データでシームレスに実行できることが最大の強みです」(青野氏)。
同社ビジネス開発部長の根津スティーブン遥氏は、「従来のマーケティングでは、テレビCM、デジタル広告、小売EC・オウンド、メルマガなど、施策ごとの個別最適に陥りがちでした」と指摘する。「私たちは『購買データ』を活用し、消費者から購買までを一気通貫で最適化することで、消費者の変化に対応しながらメディアプランニングの質とROIを向上させます。現状分析にとどまらず、『どこが伸びそうか』という“余白”を特定できるので、売上に伸び悩むブランドさまにとって特に最適なソリューションだと考えています」(根津氏)【図】。
フェズが提供するリテールメディア
「購買データ」を活用し 消費者~購買まで一気通貫で分析・実行・検証が可能。
フェズのソリューションが選ばれる理由のひとつが、「Urumo」で保有するデータの質の高さだ。「全国13流通の購買データを活用し、47都道府県を網羅することで、偏りのない分析と配信を可能にしています。これは、単一流通のデータや特定地域に偏ったデータしか保有していない類似ソリューションにはない強みです」と根津氏は語る。加えて、第三者提供許諾を取得した適法なデータのみを活用しているため、高精度で加工の自由度も高い。
今後も、購買データの量と配信メディアの幅を拡大していくことで、データ分析と活用策を向上させていく計画だ。「現在、ドラッグストアやスーパーマーケットを中心とした購買データを保有していますが、今後はコンビニなど他業態のデータも拡充していく予定です。より多くのメーカー、マーケターの皆さまの課題解決に貢献していきたいと考えています」(青野氏)。