リテールデータとテクノロジーの力を軸に 小売・メーカーの収益向上を共に実現する

「情報と商品と売場を科学し、リテール産業の新たな常識をつくる。」のミッションを掲げ、国内最先端のリテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を提供してきたフェズ。リテールメディアという言葉すらなかった時代から事業を開始した同社は、追い風ともいえる状況を背景にどのような成長戦略を考えているのか。2024年10月1日に同社の代表取締役に就任した赤尾雄司氏に聞く。
写真 人物 フェズ 代表取締役 赤尾雄司氏

フェズ 代表取締役 赤尾雄司氏

1億超のIDを保有するリテールデータプラットフォーム

近年、国内においても「リテールメディア」というカテゴリーが認識され、インストアメディアのほか、小売業が保有する顧客データを活用した広告配信など、“店内販促”にとどまらないマーケティング活動における活用機会が広がっている。こうした動きの中でリテールとメーカーの新しい共創関係も生まれてきた。

その共創のハブとなるのが、リテールメディア事業とリテールDX事業を展開するフェズだ。テクノロジーを活用した小売業の収益改善と、メーカーにとっての従来型のマス・マーケティングに代わる新たな手段の提供を同時に実現する構想を2015年の創業時から形にしてきた。

フェズは、「データとテクノロジーで小売業界の課題を解決したい」との思いのもと、2015年から活動を開始。「情報と商品と売場を科学し、リテール産業の新たな常識をつくる。」をミッションに掲げ、店頭とデジタル広告を組み合わせたソリューションの提供からリテールメディア事業をスタートした。2019年にオンライン広告や販促施策のオフラインでのセールスリフト効果を可視化・最適化するプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を開発し、ドラッグストアやスーパーマーケットなど小売業とのパートナーシップにより約1億ID分のID-POSデータと連携。現在は購買データや店頭データをID横断型で分析・活用する国内最先端のリテールデータプラットフォームへと成長している。

さらに2023年には同社とフリークアウト・ホールディングスの合弁会社であるストアギークが、店舗内の定番棚前にサイネージを設置し、購買直前に消費者に訴求できる「ストアギークサイネージ」を開始。「Urumo」を基盤にしながら、「広告×販促×店頭」を組み合わせた各種マーケティングソリューションを展開し、メーカーと小売業をつなぐ独自のビジネスモデルを構築してきた。

また近年は電通グループや住友商事、NTTドコモとの資本業務提携を進めた他、2024年9月には生成AIを活用した購買データ自動分析機能「Urumo BI」で特許を取得するなど、事業を拡大しながら日本におけるリテールテック産業の成長を牽引している。

データ活用の恩恵を実感できる仕組みをつくるのが最優先

創業当時は、まだ同社が掲げる概念は先進的存在だったと言える。しかし今ではリテールテック、リテールメディアが小売業の変革を促す大きなムーブメントとなり、小売もメーカーも大きな注目をするようになっている。

2024年10月にフェズの代表取締役に就任した赤尾雄司氏は、その要因を「ID-POSに加えてアプリや購買直前の行動などのデータ価値に皆が気付き始めたから」と分析する。

「日本のEC化率は伸びてきましたが、とはいえ全体の10%程度。小売産業においては、やはり店舗の役割やそこにおける購買行動が非常に重要であることに変わりがないと言えると思います」と赤尾氏。

そして、その価値を最大限活用できるようにするためには、購買データと購買直前の行動データをいかに小売業の資源として活用できるか、という経営的な意思決定が求められているのだ。

ただ、創業当時は小売業側にデータ提供の打診をしても「なぜフェズにデータを預けるのか」「自社だけでなく、複数小売横断でデータを活用する意味はどこにあるのか?」といった反応も多かったという。しかし、小売業が保有するデータは資源であり、活用すべきものという認識が小売業界に浸透するなか、現在は小売企業側から「データを活用した新たなビジネスができないか」という相談を受ける機会が増えたそうだ。

「リテールメディアは米国からトレンドが生まれたが、日本においては、米国ほど寡占化が進んでいない小売環境の違いがあるからこそ、日本に求められるソリューションは異なり、小売横断でデータを活用できるUrumoに価値がある」と赤尾氏は考えているという。

さらに、同氏は「日本のマーケットではドラッグストアやスーパーなど、寡占的なプレイヤーは地域ごとに異なります。北海道、東京、名古屋、関西といった地域ごとに強い企業を束ね、横断的に連携させることで、購買データと購買直前の行動データの価値を最大限に引き出せると考えていました」と語る。

人口減少に原材料の高騰従来どおりが通用しない難局

赤尾氏は現在、小売業もメーカーも双方において大きな転換期にあると感じているという。

「日本の市場は成熟化し、コモディティ化が進む一方で、生活者の趣味・嗜好はますます多様化しています。加えて、人口減少や原材料価格の高騰といった経営上の課題も山積しており、これまで通りの企業活動では、収益力の悪化は避けられません」と指摘する。

例えば小売業がより収益性の高い、プライベートブランド開発・販売に力を入れる流れになっていけば、メーカーにとっては多額のマス広告を使って全国の棚取りをすることでナショナルブランドを育てていく戦略は効率が悪くなる。いかにして小売とメーカー双方にとって、Win-Winになる構想を描けるか。今、まさに赤尾氏はこの大きな課題に向き合っているのだ。

これらの課題を踏まえて赤尾氏は、10年後の2035年に向けてフェズが目指す2つの目標を掲げている。

ひとつが小売業やメーカーが売上目標を確実に達成できるよう、購買データと生成AIを活用したターゲティングから広告配信・店頭販促・棚実現までフルファネルでのワンストップソリューションで「セールスリフト」を実現し、圧倒的なポジションを築くこと。「フェズに任せれば最終利益がしっかり出せる」と信頼される企業を目指していく。

もうひとつが日本の小売業やメーカーのグローバル展開をサポートすることだ。「特にアジアを中心としたグローバル市場で商品を販売できるような体制を築くことが重要」と考える赤尾氏は、10年という長期的な視点でこの目標に取り組む。

「日本には観光資源だけでなく、食品や化粧品など、世界で通用する強力な商品があります。その強みを活かし、グローバル市場の需要を取り込みながら、国内の取り組みをグローバルに広げる支援を進めたいですね」(赤尾氏)。

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