企業経営に「パーパス」を採用し、持続的な発展をめざす企業が日本でも増えています。「パーパス」とは、その企業の存在理由、すなわち「なぜそのビジネスをするのか」を言葉化したもの。経営環境の変化にもブレない一貫した判断基準にするとともに、社員が「パーパス」に共感して行動に反映させ、個人のモチベーションやOne Team意識の最大化をめざす、企業経営の世界での大きな潮流と言えます。
私は2016年に、あるデータ・ソリューション企業の「パーパス」策定をコピーライターとして担当し、この「パーパス」採用を機に企業が一体感をもってイキイキと再始動するのを目撃しました。一方でその後「パーパス」を採用したある大手DX企業での社内浸透のための研修講師も長く担当しましたが、残念ながらこちらでは、社員が「パーパス」を共感とともに自分ごと化し、自主的に行動に反映させていくという変化をあまり感じられませんでした。このように「パーパス」ブランディングの成否を分ける要因とは、一体何なのでしょうか?
「パーパス」ブランディングでは、まず「パーパス(企業の存在意義)」の言葉化が必要になります。理想を言えばこの「パーパス」文には、「社員をインスパイアし、モチベーションをアップさせ、社内に新しいムーブメントを起こす」起爆力が求められます。SMO社が毎年発表する東証プライム上場企業の「パーパス策定企業ステートメント・リスト」には、その言葉だけからでも新しいムーブメントの始まりを予感できる素晴らしい「パーパス」も見られます。しかし一方で、この可能性がまったく期待できそうもない残念な「パーパス」文が多いのもまた事実なのです。言うまでもなくそれは、「パーパス」が言葉として持つべき条件への、担当者の理解が不足していたことに起因しているはずです。
また、「パーパス」ブランディングは、「パーパス」の言葉化が終わったところが出発点となります。その後時間がかかっても、「パーパス」に込めた企業意志が社員に浸透し、社員の行動を通じて実践されなければ、「パーパス」を採用する意味はありません。このため「パーパス」策定のスタート時点からすでに、言葉化の先の「パーパス」の浸透と実践の段階の進め方に関しても、十分な理解に基づく正しい設計が見通されている必要があるのです。
この本では、「パーパス」策定の正しい考え始め方と進め方、「パーパス」の言葉化に不可欠なルールはもちろん、特に「パーパス」採用後の社内浸透→実践段階の進め方に関して、実に丁寧に分かりやすく説明されています。パーパスの採用を考え始めている企業の担当者の方にとっては、まさに必読の1冊と言えると感じました。「パーパス」ブランディングの多くの成功例を知る者の一人として、担当者の皆さんには会議より先に、まずこの1冊の読破から始められることを、自信をもってお薦めします。
「企業が成長し続けるための7つのステップ パーパスの浸透と実践」
著者:齊藤三希子
定価:2,420円(本体2,200円+税)
近年、多くの企業がパーパスを掲げるようになりましたが、その浸透にあたりさまざまな課題を抱えているところも少なくありません。本書はそんな課題を持つ皆さんに向けて、日本で早くからパーパス・ブランディングに取り組んできた齊藤三希子氏が書下ろしました。多くの人にパーパスを正しく認識・活用してもらうべく、その考え方、言葉の使い方などを解説。そして今回は、多くの企業で課題の多い「浸透と実践」の部分にスポットを当てて、パーパス実現への道のりと各過程における具体的な実践方法を解説しています。
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