BtoB企業におけるオウンドメディアの活用をテーマに、第1回では成長拡大を目指すBtoB企業にオウンドメディアが必要な理由について、第2回ではオウンドメディア実現に向けた基礎固め、それは「コンセプト設計と人・組織の一体化」について説明してきました。
続く第3回(前回)では、「企画/構築フェーズおけるコンテンツ企画及び目標設計」について解説。今回は、前回に引き続き、オウンドメディアの企画/構築フェーズについて説明していきたいと思います。今回は、IT基盤と推進体制についてです。また本コラムで触れるオウンドメディアは、営業施策連携型(リード獲得)の「動的サイト」を前提に話を進めていきます。
ちなみに、「動的サイト」という言葉を使いましたが、分かりやすく説明するために本コラムでは、便宜上、以下で呼称を整理していきます。
・自社PRを行わない(2回目コラムで紹介したサイボウズのような)自己完結型サイトを「静的サイト」
・販促施策と連携し、リード獲得後の営業送客を狙った営業施策連携型を「動的サイト」
営業送客を狙った、BtoBのオウンドメディアに必要なIT基盤とは?
前回は、オウンドメディア構築において主に企画について解説してきました。今回は、メディアを支えるIT基盤について解説していきます。BtoBのオウンドメディアで、かつ「動的サイト」となると、IT基盤は非常に大掛かりなものとなります。
なぜなら、営業施策との連携が期待されるため、メディア運営に必要な機能だけでなく、デジタルマーケティングに必要な各種機能を揃えておく必要があるからです。
一般的にデジタルマーケティングに必要なIT基盤は下図のようになります。
続いて、留意すべき点について上図で紹介した各ツールの中でも、実務において必要性の高いものに絞って解説していきます。
- ◆CMS:
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- 自社オウンドメディアを立ち上げる場合必須
- 実績が多く操作できる技術者が多いこと、また定期的なセキュリティアップデートと豊富なプラグインでWordPressがお勧め(レスポンシヴ※ にも対応)
- 一般的に入稿には手間がかかるが、生産性を上げるための自動化ツールも出てきており要検討(工数10分の1になるケースも)
- ◆MA:
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- SFA,CRMとの連携必須。MAとSFA,CRMそれぞれ連携のための開発が必要となるため、可能であれば同じメーカーを選択することで回避可能な場合が多い
- 一定期間に発信するメール数や管理すべきID(メアド)が大量にある場合は高性能なMAを選定する。MAは常時イベントが動くので処理が集中すると例えクラウドサービスでも急激に性能悪化することを想定すべき。Oracle Marketing Cloud(Eloqua)はお勧め
- ◆SFA:
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- MAからのリード情報をインサイドSAや訪問営業が円滑に処理できるようにMAとSFAで同じ顧客及び企業情報を参照させる。顧客情報と企業情報それぞれ不要データを定期に削除し鮮度を維持する。特にIDは一般的に毎年約30%は使えなくなる統計結果もあり定期的な名寄せを行う必要がある
- SFAの営業プロセスで発生した外部インスタンスはMAにフィードバックできるようにするとMAでのスコアリングをより精度の高いものにできる
- ◆CRM:
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- 既存顧客に適切なフォローを行うためアフタープロセスで発生するデータ(購買情報、VOC)やドキュメント(契約書、アンケート等)を整備管理する
- 製品の買替、更新、追加などの際にインサイドSAや訪問営業がMAのリード情報やスコアを参照できるようにし、適切な購入支援やプラスON提案がタイミングよくできるようにする
- ◆BI:
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- MA、SFA、CRM+既存システム(購買情報、製品稼働状況、更新/買替情報、VOC情報)をBIに集積/連携することにより、精度の高い意思決定が実現できる
- デジタルサイネージなどと連携しPVやUUなどの大量情報をリアルタイムに可視化、キャンペーン反応への即時対応や従業員モチベーション向上に貢献。代表的な製品的にはDOMOがある
上記のツール以外にもアクセス解析ツール(GA,GTA)やセキュリティ対策ツール、SEOツールなど準備すべきものは多く、早い段階で個社ごとの事情を勘案したテクノロジーのあるべき姿を決めておく必要があります。
また、多くの企業ではオウンドメディアを立ち上げる前段階で、すでに導入済のサービスやシステムがあり、それらとの相性をよく見極めることも重要です。
加えて、営業送客を狙った「動的サイト」の場合には、コールセンターのIT基盤も重要です。チーム一体で機能するためにはどのようなコールセンターシステムを選定するかも重要です。すでにお話ししたデジタルマーケティング基盤との相性を念頭に慎重に選定をしてください。