糸満市の上原 盛太さんからの紹介で今回登場するのは都農町の松村直哉さんです。
Q1. 現在の仕事内容について教えてください。
私は総務課秘書広報係に在籍し、広報担当として1年目です。都農町は宮崎県の中央部からやや北に位置する、人口約1万人の町です。「農の都」と書いて「都農(つの)」と読むこの町は、東に広がる日向灘、西には尾鈴山地を有し、自然豊かな環境に恵まれています。また、都農神社や積石塚群といった歴史的資産を有し、文化と自然が共存する町でもあります。特に都農神社の夏祭りは町民が一体となり、代々受け継がれてきた盛大な行事であり、伝統的な御神幸行列や太鼓台の迫力あるぶつかり合いが見どころです。
私の主な仕事は、町の魅力や情報を町内外に発信することです。その手段として広報紙の作成、ホームページやSNS(LINE、Instagram、Facebook、Youtubeなど)の運用、プレスリリースの配信などを行っています。
町民花火大会の様子。
Q2. 貴組織における広報部門が管轄する仕事の領域を教えてください。
町内回覧板(週報)の作成、広報紙の作成、ホームページ、プレスリリース、LINEなどのSNS運用などを管轄しています。
Q3. 自身が大事にしている「自治体広報における実践の哲学」をお聞かせください。
私が大切にしている哲学は、「町民に伝える」ではなく、「町民に伝わる」広報です。情報をただ一方的に発信するだけでは、不十分だと考えています。町民がその情報を「自分ごと」として受け止め、生活や活動に役立ててもらうことこそが広報の本質であると考えています。情報を「届けるだけ」で終わらせず、「伝わった」という実感を持てる広報活動を、これからも実践していきたいと考えています。
Q4. 自治体ならではの広報の苦労する点、逆に自治体広報ならではのやりがいや可能性についてお聞かせください。
本町の町内回覧板(週報)は2週間に1回のペースで作成しています。これは、各課が町民にお知らせしたい情報を広報担当が集約し作成しています。これを紙で全世帯へ配布するとともにホームページなどでも掲載しています。本町では「デジタルフレンドリー宣言」を行い、「町民誰もがデジタルに慣れ親しみ、多世代多様な交流を楽しめるまち」をコンセプトに事業展開しています。町内全域に光回線を敷設するとともに、希望する全世帯へタブレットを無償貸与しており、高齢者もタブレットでいつでも閲覧できる環境も整っています。これによって、町民に対するタイムリーな情報発信が可能となっています。
このほか、本町では数年前から広報紙の作成やSNS運用を外部委託しています。これは専門性の高い業務を効率的に進めるための手段ですが、課題もあります。
1. ノウハウが蓄積されない
広報の技術や知識が行政内部に残りにくくなっています。例えば、職員が自ら写真や動画を撮影し、加工する機会が減少したため、広報に関するスキルを育成する場が不足しています。
2. 職員の意識の変化
外部委託により、広報業務を「外注」と捉え、職員が広報に主体的に関わる意識が薄れる場合があります。これにより、町民に「伝わる」情報発信が十分に行えないことがあります。
こうした課題を解消するため、今年からは委託業者との密接な連携を意識しています。例えば、広報紙の企画会議を発刊前に行い、町の要望や反省点、注意事項を伝えることで、委託業者との認識共有を図り、専門性を活かしつつ「伝わる広報」を目指しています。
週報をはじめとする町民に向けた情報発信、SNSを活用した情報発信など、多岐にわたる広報の交通整理を始めたばかりで苦労する点も多くありますが、同時にやりがいを感じながら業務に取り組むことができています。
今後は、外部委託と職員主体の取り組みをバランスよく進め、都農町の持つ豊かな魅力を最大限に発信していく、都農町らしい「伝わる」広報戦略を構築していきたいと考えています。
【次回のコラムの担当は?】
宮崎県都城市の恒吉祐弥さんです。