ベネトンのクリエイティブディレクションで知られるイタリアの写真家、オリビエーロ・トスカーニが1月13日、82歳で亡くなった。イタリアANSA通信によれば、アミロイドーシスを患い、闘病生活をしていた。妻のキルスティ・トスカーニ、夫婦の子供であるロッコ、ローラ、アリは「深い悲しみと共に、2025年1月13日、最愛のオリビエロが新たな旅に出たことをお伝えします」と声明を出している。
オリビエーロ・トスカーニは1942年ミラノ生まれ。報道写真家の父の子として生まれ、チューリヒの美術学校で写真を学んだ。『ELLE』『VOGUE』などのファッション誌、またエスプリ、フィオルッチなどのブランドと仕事をしてきた。80年代から90年代にかけて、ベネトンでメッセージ性の強い数々の広告キャンペーンを制作し、広告を通じて人々に人種差別、エイズ、同性愛などの問題に目を向けさせた。
S/S 1996, “Hearts” ©Benetton Group ©Oliviero Toscani
S/S 1992, “AIDS – David Kirby” ©Benetton Group ©Thérèse Frare
F/W 1990, “Blanket” ©Benetton Group ©Oliviero Toscani
その革新的な表現は論争を巻き起こし、多数の批判も受けたが、その後の広告クリエイティブに与えた影響は計り知れない。来日の機会も多数。著書『広告は私たちに微笑みかける死体』(1997年、紀伊國屋書店)は、今も日本の広告クリエイターに読み継がれている。
1994年にはベネトンのシンクタンクであるファブリカ(FABRICA)を設立、2017年には創業者のルチアーノ・ベネトンから17年ぶりに呼び戻され、2020年まで再び同ブランドの広告キャンペーンを手掛けていた。
BENETTON GROUPのウェブサイトに掲載された追悼メッセージ。