なぜ、産官学民プロジェクトは継続できないのか?
ここ1年、渋谷未来デザインへの問い合わせが急増しています。その内容は多岐にわたり、自治体関係者、大企業、スタートアップ、大学、さらには海外の組織までが私たちを訪れます。
共通して聞こえてくるのは、「1社や1自治体だけでは解決できない」「地域や社会課題に次の一手をどう打つべきか」という切実な声です。
こうした声を受けながら、私は今、社会全体が「共創」の重要性を理解し始めていると感じています。人々の生活がますますデジタル化し、リアルな接点が失われつつある時代。そんな中、「街」というリアルな場が再び注目され、そこから新しい価値を生み出そうとする動きが広がっています。
渋谷もその象徴的な例です。活気が戻り、多くの人々が行き交っている街。同時に、屋外広告やリアルイベントといった「リアルな場を活用したプロモーション」が再評価され、デジタル全盛の時代にリアルな場の可能性が改めて認識されています。
ここには、まだ掘り起こされていない大きなチャンスが隠されているのです。
課題の根本にある「ズレ」と「失速」
しかし、そのような状況の中でも、産官学民プロジェクトが成功するとは限りません。
うまくいかない理由のひとつは、「価値観のずれ」です。行政は地域の長期的な発展を求め、企業は利益や成果を重視し、大学は研究成果に焦点を当て、市民は生活の改善を期待します。こうした立場の違いから、それぞれのゴールが異なり、ズレが生じます。このズレを解消しないまま進めば、プロジェクトは迷走しやすくなります。
さらに、「立ち上げ時の熱量の失速」も大きな課題です。スタート時には多くのリソースを注ぎ込むものの、次第にモチベーションが低下し、プロジェクトがフェードアウトする――。こうした事例は決して珍しくありません。熱量を持続させる仕組みや目的の再確認がなされていない場合、プロジェクトは早々に停滞してしまいます。
「共創」とは何か?その誤解
もうひとつの課題は、「共創」という言葉そのものが誤解されている点です。「共創」とは、単に自治体にソリューションを売り込むことではありません。それは、互いのリソースを持ち寄り、新しい価値を共につくり出すプロセスを意味します。
しかし、多くの企業が自治体と「協定を結ぶ」だけで満足し、その後の具体的なアクションにつながらないケースが多いのです。「協定を結ぶことで信頼を得る」という一歩目は重要ですが、それを次のステップにつなげる努力が互いに欠けている場合が多く見られます。
さらに、共創を進めるには時間やリソースが必要ですが、そのための予算が十分に確保されていないことも現実的な障壁となっています。
共創には双方のコミットメントも必要不可欠です。継続性を持たせるには、協定の先に具体的な成果を見据え、計画を着実に進めるための柔軟な仕組みが求められます。もし協定を結ばれた企業があれば、今どう進んでいるかチェックしてみてください!