自分の力量がわかり、さらに120%まで伸ばせる
━━お二人が考える、アートとコピーの魅力は?
古林:前回、アートとコピーに参加してよかったこととして「レベルの高いコピーライターの方と対等につくれたこと」「トライアンドエラーを7回できたこと」「自分の120%のつくり方を知れたこと」「作品が評価されるという結果をつくれたこと」の4つを挙げていたんですが、これは今にもつながっているなと感じています。
当時すごく印象的だったこととして、途中までボディコピーなしで作ってた課題に対し、コピーライターの方がふと「やっぱりボディがあった方がいい」とボディコピーを書いて載せてきたことがあったんです。ボディがないときは空っぽに見えていたのですが、ボディを入れた途端、作品に血流がわーって流れていく感覚がありました。たった数行の言葉が入るだけで、紙一枚のデザインにこんなに奥行きが生まれるんだということを体感し、コピーライターと組むことの喜びを知りました。
それから、会社の外にライバルができました。会社の中だけにいるとすごく閉じこもっていっちゃう。他の会社の人がどういうやり方をしているのか?という情報が入ってきたり、同じ年代にここまでできる人がいるんだ、と悔しい気持ちになったりもします。社外のクリエイターと出会うことで、自分の成長の指針が見えました。
竹内:限られた時間で同じ課題に向き合うことで、自分が今どれくらいできるのかを知れます。同じものを作るとなると言い訳ができないし、同じ課題でも各ペアで違う回答が出てくるので、「こういうやり方もあったのか」と反省することもあれば、逆に自分たちのやり方が合ってると再確認できるのがよかったです。
自分の得意分野がわかるようにもなりました。講座では広告から企画、普段仕事でやらないようなジャンルまで多種多様な課題に取り組むのですが、あの人はデザインが得意だなとか企画が得意だなとかがやってるうちにだんだん分かってくるんです。僕自身、自分では分かってなかった武器を人から言われて発見できました。その長所を伸ばす方向ももちろんありだと思いますし、自分の苦手分野を補ったり、潔く得意な人に任せちゃったり、といった戦略が立てられるようになりました。
阿部:本当にあらゆる角度から自分たちの可能性を引き出してくれる課題があるのも、アートとコピーの特徴かなと思います。
健全な競争ができる環境って、意外とない
━━講座を受けてどんな変化がありましたか?
古林:当時は同年代も会社の人たちも、すごく輝いて見えて自信が持てず、広告の世界に向いていないのではないかと思うこともありました。特にデザイナーはアウトプットで分かりやすく出ちゃうので、自分には光るものがないような気がしていました。でもアートとコピーに参加しているうちに、足りなかったのは突き詰める作業や、そもそものアイデアの数の足りてなさといった、具体的な自分の作り方の課題点が見えるようになりました。
良いものが作れなかった時、それまでは受賞者を見て「みんなすごいな〜」と流してしまってたけど、なぜダメだったのかを考えて、新しい試みをするようになって。粘ることを覚えると、最初に課題を見た時には想像もしていなかった所に辿りついたりするのが面白くなってきたり。そんな感じでとにかく我武者羅に走っているうちに結果がついてくるようになって「あれ?なんか私、全然大丈夫じゃん」とポジティブになれ、作ったり考えたりすることに自信が持てるようになりました。
アートとコピーって例えるならオーディション番組に似てるなと思っていて、みんな別々のところで頑張っていた人たちが1つの箱に入って、最初は若干いがみ合ってたりとかもする中で、相手からの刺激でどんどん変わっていく。健全に競い合う環境って、嫌でも自分ができないことと向き合わなきゃいけない状態になるので、変わっていくんですよ。阿部さんが前の方でずっと手を振って先導してくれる人で、私たちは練習生みたいな感じだなと思ってました。
阿部:「健全に競争する環境」というのは本当にそうだと思います。
古林:コンペが広い海だとしたらアートとコピーってすごい狭い池みたいなものだなと思っています。ただコンペに出すだけだと、勝てなければ結果も見えないし、何も自分に返ってこないから出しっぱなし。アートとコピーってものすごく小さな池の中では、自分や他の人が出したものが全部見れて、何が起こっているのかもだいたい分かるので、良かったことも悪かったことも滞留していくイメージ。私はこの、悪かったことも見える点が大事だったなと思っています。
人って悔しい気持ちがなければ変わることはできないし、悪かったことと向き合わないとそれを改善することもできない。そういうものが目の前にあり続けて溜まっていくっていうのはすごく辛いことでもありますが、そういう環境が重要だったなと感じています。成長するのって自分一人でもできることだと思うんですが、圧倒的に成長する・変わるには他人が必要なんだろうなと思います。
阿部:小さな池なんですけど、全コンビの考えていることが見えるから、どうすれば自分たちの制作物が見つかるものになるのか、頭の中でシミュレーションできるようになる場ですよね。竹内さんはどんな変化がありましたか?
竹内:働き方の変化と人間関係の拡張があります。自信を持ってアートディレクションができるようになったのは、この講座がでかいと思っています。あと、コピーライティングをお願いする時に、今までだったら「もうお任せで」と完全に任せちゃってたんですけど、講座で自分自身がコピーに触れる機会が増えたことによって、良いコピーと良くないコピーが自分の中でも少しずつ分かるようになってきました。その上でコピーを書く大変さもより理解できるようになったので、そこまで偉そうなことは言えないんですけど……。そういう良し悪しが少なからず分かるようになったのはこの講座の存在が大きいですね。
あと、コンペや会社以外のお仕事をやる機会も最近増えてきて、会社でしかできないような複数の人がかかわる大きい案件ならではの面白さもありますが、コンビでやるからこそ作れるものもあるなと思っています。どちらにも違う良さがあって、最近はいいバランスで制作ができてるなっていうのは個人的に感じています。
本当に僕はこの講座に通うまで、全然周りに知り合いがいなかったんで、やっぱり仲間と一緒に作る機会ができて、見識も広がりましたし、逆にライバルとしてお互い気にしながら切磋琢磨できる環境ができたっていうのはすごい貴重な経験。受賞式に行くと、絶対アートとコピーの誰かがいる(笑)。
古林:めっちゃ分かる(笑)。
竹内:またお会いしましょうみたいな感じで、お互いそれもモチベーションにしたりしていい関係が築けているのかなと思います。