2024年12月に始まった宣伝会議による「テーマ別研究会」。第2回となる「AI研究会」が2025年1月15日に開催。味の素の勝美由香氏が登壇し、AIを用いた新規サービス事業について紹介した。
AIが実現するメーカーの枠を超えた取り組み
「アミノサイエンスで人・社会・地球のウェルビーイングに貢献する」をパーパスとする味の素グループは、2030年までに環境負荷50%減と10億人の健康寿命延伸をともに実現することを目指している。勝美氏は、10億人の健康寿命延伸に関わる取り組みについて紹介した。
味の素及び当社のグループ会社では、食品や調味料、サプリメント、ヘルスケアなどの製品を販売しており、その研究や製品の企画開発のプロセス中で様々な知見やノウハウが当社には蓄積されている。企業としての資産や価値をこれまで以上により多くの人へ届けるためにメーカーとしての枠を超えた事業展開を考え、デジタルやAIの活用に着目するように。この度開発を行った献立作成エンジンに関しては、減塩や減糖・減脂技術をはじめとした栄養に関する研究知見や管理栄養士が持つ知見やノウハウをデジタル技術と掛け合わせ、より多くのエンドユーザーにソリューションを提供するという設計を考案した。これらの情報を紐解き、アルゴリズム化、献立作成を行うエンジンを開発した。
自社の価値とAIを掛け合わせて新たなサービスに
サービスをリリースするまでは想定よりも時間がかかったと勝美氏は話す。レシピや献立に関連するサービスは既に世の中に多く存在しているため、差別化を図るために味の素らしさや価値について議論を行った。その中で、これまでに味の素はアスリート支援活動「ビクトリープロジェクト」や学校への出前授業、独自の食生活意識や食実態調査に取り組んでおり、さまざまな食の現場に向き合い続けてきたからこそ出せる価値があると気付いた。
例えば、偏食傾向のアスリートに対して、好きなものを食べながらバランスよく栄養を摂取できるように指導したり、食のインパクトを求める子どもに対しボリューム感にこだわったものを紹介したり、栄養面だけでなく、食べたいという気持ちを醸成するノウハウを有している点を味の素の価値だと捉えたのだ。「目で見ておいしそう」「食べておいしい」という内容と食の楽しさの両立をコンセプトに献立作成エンジンの開発に取り組んだ。
栄養のバランスが偏ることを前提とした独自のサービス
一般消費者向けに2024年3月にスタートさせたサービスが、献立作成エンジンを活用した「未来献立」だ。味の素独自の栄養評価基準に基づき栄養バランスを考慮した献立を、最大8日分提案する。栄養バランスの偏った食事をとった場合でも、栄養の辻褄合わせを実現するための翌日の献立を提案してくれるという。
また勝美氏は、企業向けに提供したサービスである、明治安田生命の健康増進サポートアプリ「MYほけんアプリ」内の機能を紹介した。2023年11月から献立作成エンジンの機能を提供している。ユーザー属性、健康課題に応じた献立テーマ、使用したい食材に応じて、パーソナライズ化した献立を提案できるというものだ。
「未来献立」をリリースした際には各メディア媒体で取り上げられ、AIと食というテーマへの関心の高さを感じたと勝美氏は話す。単に効率化だけを問われるのではなく、AIによるプラスアルファの価値をどう生むのかについて興味を持つ人が多いようだ。
自社の強みとAIを掛け合わせ、唯一無二のサービスに
最後に勝美氏は、「AIはあくまで目的達成のための手段であり、それをどう活用するかが大事」と強調した。自社の強みは何なのかを改めて考え、その強みとAIが掛け合わさった時に唯一無二のものが生まれるという。味の素の場合は、ユーザーの好きな食べ物を肯定しながら、どうやって栄養バランスを整えるかという栄養や健康に対するスタンスが価値となった。しかし、その強みは言語化されていないことも多いため、それを紐解き、言語化し、システムに実装するまで根気が必要だという。
「未来献立」は2025年3月でリリースから1年を迎える。「当初の目的よりも多くの方に使っていただき、いい反応をもらえている」と勝美氏。今後は、サービスを通じて得られた顧客のデータをどう活用するかが課題。唯一無二のサービスだと感じてもらうために、顧客理解をより深めていきたいと勝美氏は話す。また、これまで管理栄養士が作成していた献立を今後AIに任せてみることも検討しているという。「AIを活用してお客さまに価値を届ける点では、まだスタート地点に立ったばかりです。今回を機に、意見交流ができたら嬉しいです」と締めくくった。
【「ネクストメディア/SNS研究会」~次回開催予定のイベント~】
◆第2回研究会:2025年2月7日(金)15:45~17:00(開場 15:30)
・ご登壇者:日本航空株式会社 広報部 Webコミュニケーショングループ
グループ長
小西孝典 氏
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◆カンファレンス:2025年3月21日(金)13:30~17:10(開場 13:00)
・テーマ:ヤンマーの実践から紐解く、SNSを活用した次世代メディア戦略
・ご登壇者:ヤンマーホールディングス株式会社
ブランド部 コミュニケーション部 部長
三田村 有香 氏
・テーマ:セブン銀行のドラマCMに学ぶTVer活用の優位性
~ネクストメディア出稿のポイント~
・ご登壇者:株式会社セブン銀行
ブランドコミュニケーション部 部長
能勢 恵美 氏
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