進行する「働く」ことの低温化 博報堂生活総研、「働き直し」を提唱

博報堂生活総合研究所は1月28日、「みらい博2025」を開催した。本講演は、未来を描いて、“今”を触発することを目標に掲げ、同研究所がテーマを設定し行った調査結果を発表するというもの。

今回は、回復しない経済、解消しない人手不足、上がらない賃金など、生活者の「働く」意欲が下がり続けている現状を受け、テーマを「働き直し シゴトが変わる。日本が変わる。」とした。

同研究所は、①「働く」の危機、②「働く」の転機、③「働く」の未来について説明。以下、調査結果の概要をレポートする。

1.「働く」の危機

同研究所が2024年に実施した「生活定点」調査からは、「働く」の低温化が進んでいることが明確に。

具体的には、次のような項目などが以前と比べ減少傾向にあるという。
・基本的に仕事が好き 46.2%(1998年比 -7.8pt)
・休みたっぷりよりも給料が高い方がいい 46.2%(1992年比 -7.4pt)
・責任ある地位にいる方がいい 16.1%(1998年比 -5.4pt)

「低温化」が進む背景としては、「働く」で得る対価に期待できなくなったことや、「働く」集団への帰属意識の弱まり、「働く」で味わう充実感の薄まりなどが挙げられた。“働くのは、お金を得るため”と割り切っている人も増加傾向だ。

2.「働く」の転機

環境の変化

同研究所は、2016年頃から現在まで、日本一億総活躍プランや副業解禁、働き方改革やコロナ禍など、ここ10年で働き方が多様化したと説明。今後、生活者に特に影響を及ぼしそうな環境変化については、次の3つを挙げた。

①ルールにしばられない
(副業や兼業、アルムナイ採用など会社の変化で働き方の常識が変わる)
②キャリアにとらわれない
(キャリア不問の働き方や、スポットワークが浸透)
③スキルにこだわらない
(人間ができないことはAIに任せる、自分にできる職業や分野の広がり)

生活者の変化

また調査から見えてきたのは、生活者が直面している「楽しく働く」の理想と現実。楽しく働いている生活者はどのように働くことを前向きに捉え直していったのか、3つの変化が紹介された。

①働くことを「ゲーム」に見立てて、達成感を得る
生活者は、仕事をミッションと捉えて攻略を楽しんでいる。ゲーム性を取り入れた事例として、タイミーのバッジ機能などが挙げられた。
②働くことを「ネタ」に見立てて、自己満足感を高める
例としては、SNSで流行した「Get Wild退勤」(TM NETWORKの『Get Wild』を聞きながら退勤すること)や、自らを肯定的に「社畜」と名乗ることなどが挙げられた。当初ネガティブな意味で使われていた「社畜」は自らをキャラクター(/ネタ)化する言葉となり、映画やドラマのタイトルにも入るなど、コンテンツ化が進んでいる。
③働くことを「ハッシュタグ」に見立てて、新しい関係を広げる
生活者は「働く」をハッシュタグのように活用し、同じ関心の人と会社を超えたつながりや居場所をつくっている。今まで接点のなかったような人との出会いや刺激が、働くモチベーションを高めることにつながっているという。

3.「働く」の未来

「働き直し」がもたらす変化として、同研究所は「仕事や会社は暮らしの一部分になり、生活者は世の中と直接つながるようになる。生活者は今後、メタ的な視点から俯瞰するような視点で仕事の意味を考えるようになっていく」と語る。

これは低温化しているからこそ持てた視点でもあると言い、同研究所は最後に、今後顕在化しそうな変化として次の3つを挙げた。

①タスクの私有化
会社の仕事を自らのモチベーションが湧く活動として自分事に捉え直す動き。
②肩書の無境界化
肩書は会社や組織の枠を超えてボーダレスに。会社員から社会員へ。
③手ごたえの複線化
これまでの報酬である給与や昇進、昇給に、成長や人脈などの複数の手ごたえを加えた集酬へ。

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