中川政七商店、𠮷野家、学研ホールディングスなどオブザーバー含め10社13名が参加した。
データ連携、データ取得方法… 各社が面するタッチポイント施策
マーケティング活動におけるデータ利活用が進んだことで、個々のユーザーにパーソナライズしたマーケティング活動が可能になっている。しかし、顧客との接点は社内の複数部門にまたがることからデータの統合や活用において、課題を抱えるマーケターも少なくない。今回で2回目の開催となる「宣伝会議 マーケティングサロン」では、データ利活用の課題に至る前段階で、事業モデルの異なる各社のカスタマージャーニーと各タッチポイントの動向に関する共有から議論を開始した。
学習塾や老人ホームなど、複数の事業を展開している学研では、ユーザーが複数サービスを横断して利用できる共通の「GakkenID」を提供している。しかしながら、学研ホールディングスの伊藤弘希氏は「ひとつのIDで複数サービスを利用するユーザーのデータを分析することで、顧客理解を深めることが理想だが、実現の難しさを感じている」と課題感を語った。また、カスタマージャーニーについては教育事業だからこその課題も提示された。例えば、学研が運営する学習塾やオンライン家庭教師の場合、利用者は子どもだが、サービス契約者は子どもたちの親になる。つまり、広告を配信すべき対象と実際にサービスを利用する対象が異なってしまっているのだ。この課題点は、データを活用したマーケティングの実現のハードルを高めることになっているという。伊藤氏は「IDを付与する際に、親子など、続柄を結びつけた管理の仕方も考えている」と話した。
中川政七商店の中田勇樹氏によると、生活雑貨を扱う当店では店舗とEC、それぞれで顧客をクラスタリングすることにより、クラスターごとにカスタマージャーニーを作成し、異なるコミュニケーションを展開してきたという。しかし実店舗の場合、購入履歴は残るものの、どのような商品を見ていたかについては、商品の閲覧データを取得することができないため、ECとデータ量に差が生じることが課題になっていた。そのため、両チャネル共通で取得できる商品購買データを活用することで、クラスタリングを実施している。
𠮷野家の木村陽子氏は、同社の中で公式通販ショップの運営やECを起点とした情報発信などのEC事業を担当している。今回はEC利用者に限定し、顧客を5つのペルソナに分けて、それぞれのカスタマージャーニーを紹介。具体的なコミュニケーション事例として挙げたのは、定期購入の促進や、新規獲得を増やしたいペルソナのひとつである女性層への、冷凍牛丼のアレンジなどのSNS、Web広告を活用した情報の配信だ。実店舗とは異なる形でのアプローチの実施が狙いだったという。
マーケティングサロン当日の様子。白熱した議論は3時間に及んだ。
商材・状況で要不要が分かれるパーソナライズ施策
ディスカッション後半では、「顧客接点におけるマーケティング施策・パーソナライズ化の実現と取り組み」についてが議題に挙がった。これはTealiumの海老澤澄夫氏が「パーソナライズの議論において、“When”という観点が抜けていることが多い」という課題意識を抱いたことから設定された問いだ。どのタイミングでパーソナライズ化に関する施策を打つかの観点も含めて意見が交わされた。
学研の伊藤氏は、教育事業の場合、子どもの学年や学期に応じた提案が必要となるため、パーソナライゼーションは、カレンダーに沿った施策が必要になると事業の背景を説明した。
𠮷野家は、そもそもパーソナライズ施策自体をあまり実施していないと木村氏は話す。ECでも店舗でも「牛丼」というメイン商品が決まっているため、パーソナライゼーションの必要性をあまり感じていないためだという。
一方で、積極的にパーソナライズ施策を行っていると話したのが、中川政七商店だ。1回目の商品購入後も、ブランドへの関心を継続する機会が重要だと中田氏は話す。パーソナライズ施策は購入者に対しておすすめ商品を提案するときに実施。ECサイトで扱う商品は5000点にも及ぶなか、相手に適した商品情報が届いているかどうかを、クラスタリングしながら検証しているという。
ただデータを示すだけではない 快適なデータ活用が目標
今回のディスカッションを受けて、オブザーバーとして参加した博報堂の金子明彦氏は「ワントゥワンのマーケティング施策は、コンテンツの制作・供給が追い付かなくなる可能性がある。どこまで粒度細かく、ターゲティングをしていくのか。逆にやらないことを決めていくことが大事だ」と話した。
最後に、Tealiumの海老澤氏が「テクノロジー企業として、ただデータの結果から示唆を出すだけでなく、事業会社の方々やその先でサービスを受ける顧客に対しても快適なデータ活用事例を発信できるよう、努力していきたい」と総括した。
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