オムロンからスタートアップに移籍 人間力を磨くことが広報キャリアを拓く重要な要素(大西栄樹さん)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えていたのでしょうか。横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。AIメディカルサービスの谷口愛美さんからの紹介で今回登場するのは、LAPRASの大西 栄樹さんです。
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大西 栄樹氏

LAPRAS
広報・PR責任者

大学卒業後、オムロン入社。BtoBの法人営業を経験後、広報・PRやマーケティングなど国内外のブランドコミュニケーション業務に従事。 2021年8月よりLAPRASにジョインし、PR・広報を中心に、SNS、note、イベント運営など採用広報も担当。事業状況に合わせてマーケやBizDev等も兼務。大企業、スタートアップなど様々な規模の企業での採用広報の経験から採用広報のコンサルティングも実施。

Q1:現在の仕事の内容とは?

LAPRASで広報を担当しています。当社は、ハイスキルなITエンジニアと企業を最適な形でマッチングする転職サービスを運営しています。

LAPRASの特徴は、ITエンジニアのブログ、OSS活動、SNSなどを分析し、AIが自動でポートフォリオを生成する点にあります。エンジニアは、自身の技術力スコアを通じて市場価値を把握し、独自のAIによる高い満足度・納得感のある転職体験を得ることができます。企業向けには、成長意欲のあるハイスキルなエンジニアの採用支援を提供しています。

広報は私ひとりで、toC(エンジニア)とtoB(企業)それぞれのターゲットを意識してプレスリリースやSNS、オウンドメディア運営などの広報施策を展開しています。また、当社はスタートアップ企業であるため、事業状況に応じて必要な役割も変化します。現在は広報業務だけでなく、マーケティングや事業開発(BizDev)などの業務も兼務しています。

例えば、2024年はマーケイベントを軸に認知向上とリード獲得を推進しました。国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2024」への協賛・イベント実施を含め、年間38本のイベントを開催しました。

エンジニア向けの事業であるため、メディア露出の事業への効果が限定的であり、人材ビジネスとして話題化しにくい難しさもあります。そのため、広報活動にとどまらず、事業を牽引する視点でコミュニケーション戦略を設計し、経営視点を持って役割を担い、施策を実行しています。

Q2:これまでの職歴は?

2010年に新卒でオムロンに入社し、11年間勤務した後、LAPRASへ転職しました。

オムロンでの最初の5年間は、制御機器事業の法人営業を担当。工場向けのセンサーやコントローラーなどの制御機器のソリューション提案営業に従事しました。物理や電気の知識が求められる業務で、苦手な分野ながら必死に学んだことを覚えています。営業を5年間経験した後、社内公募制度を利用し、広報部門へ異動。全社のブランド戦略策定から始まり、企業広報、技術広報、事業広報などを経験しました。コミュニケーション戦略策定、プレスリリース、記者会見、取材対応、イベント出展など多岐に渡る広報業務に携わりました。この6年間の経験を通じて、現場対応力とチームマネジメントや大企業での調整の難しさなどを学びました。

その後2021年、コロナ禍の中でLAPRASへ転職。いわゆる「大企業からスタートアップ」への転職でした。初めての転職で不安もありましたが、決断は意外と早かったです。広報を軸として、スタートアップとITを経験したいと考えて転職しました。

Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?

キャリアの大きな転機は2回ありました。1回目は社内公募での異動、2回目はスタートアップへの転職です。

どちらも共通していたのは、「自分の経験やスキルを広げたい」「新しいことに挑戦したい」というワクワク感があったことです。

大企業からスタートアップへの転職は簡単ではありません。現在、転職自体のハードルは低くなっているものの、入社後に成果を出せるかは別の話。スタートアップの環境の変化に対応できるかどうかが重要になります。最初はSlackの使い方もわからないところから始めて、メッセージの返信の早さについていくことも大変でした。大企業とは全く異なる環境にいかに自分が対応できるかが鍵になります。

もう一つ意識したのは、「今の仕事を一旦はやり切ったか」という点です。キャリアの道は、何かに挑戦した結果開けていくもの。そのため、転職や異動を決断する前に、まずは目の前の業務に全力を尽くすことを心がけています。

また、広報パーソンとしての価値を高めるためには経営視点が不可欠だと感じ、経営大学院でMBAを取得する決断をしました。これからの時代、変化し続けることが求められるため、学び続ける姿勢が重要だと思っています。

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