2月に入り、バイデン前政権が環境保全のために規制(廃止)したものを、解除するいくつかの大統領令にトランプ大統領が署名をした、というニュースが流れています。
日本でも話題になっているものとしては、エネルギーの開発規制。もうひとつは、生活でも馴染みがある、プラスチックストローではないでしょうか。
就任から1カ月ほどが経過し、ダイバーシティや移民、環境問題に関わるところで、さまざまな大統領令が発せられ、それは徐々に生活、少なくとも人々の気持ちには影響を与えているように感じます。
今回は、このプラスチックストロー、エネルギーの開発規制というインパクトのある発令の一方で、ポートランドで暮らす中で見つけた洗剤ショップを、その対極の存在として紹介したいと思います。
プラスチックストロー、エネルギー開発規制の解放の話
紙が使いづらいから、プラスチックという考えを見ましたが、プラスチックに戻すのではなく金属のリユースを推奨という選択もあるはずです。
たくさんのニュースが流れているので、概要だけ、最初に紹介します。
まず、プラスチックストロー。前任の大統領が推奨していた生分解性のストローの推奨から一転して、プラスチックストローを推奨する、という大統領令が発令されました。
このコラムでも以前に、ごみの出口が日本とアメリカでは異なるという話を書きましたが、焼却炉での処理なのか、埋め立てなのか、で少し話は変わります。
日本は焼却炉なので、プラスチックも焼却の時に必要であり、分別をしっかりすることでその環境への害は軽減します(焼却炉施設が燃焼時に発生するガスをしっかりと処理できる設備である前提で)。
アメリカは埋め立て。生分解性ではないプラスチックは、半永久で土の中に残ります。個人的には、これはどう考えたとしても、生分解性の方が良いのでは?と思っています。
もうひとつは、エネルギー開発の話で、こちらも前任の大統領が規制したものを解放し、米国内、海域でのレアアース(希少鉱物)の発掘や、石油などのガスの発掘を推奨することになります。
環境保全よりも、経済発展、その他のエネルギー開発地域への圧力による、アメリカの影響力の拡張が狙いと言える施策です。これ以外にも、パリ協定からの離脱だったり、使い捨て容器廃止の撤廃だったりと、数多くの環境問題に関連する大統領令が発令されているのが、現状です。
「これに対する、まちの状況はどうなの?」
いまアメリカに住んでいる人は、みな聞かれることでしょう。
この環境にまつわる大統領令が発令されるちょっと前、ポートランドの洗剤ショップを訪れました。この店の取り組みはちょっとユニークで、環境保全を蔑ろにする大統領令とは対極にある、まちの中で暮らす人々の環境保全の取り組みがそこにはありました。
洗剤類に特化したはかりうりショップ
日本国内にも、調味料など食品のはかりうりショップは地域ごとにここ数年増えてきました。ポートランドに数店展開する「Mama&Hapa’s Zero Waste Shop」は、暮らしの中で使う「洗剤」「石鹸」の類に特化した、はかりうりショップです。
ユニークなのは、このカード。
ひとり1枚とって、洗剤のジャーの前でタップすると、カードをかざしている間だけ液体が出てきます。どれぐらいの間かざしていたかはカードに記録され、レジでその分をまとめて会計できます。
タップするマークがあるのがわかりますか?どれぐらいの量が入ったかが表示されます。
日本のドラッグストアも、窓用クリーナー、バス用クリーナー、トイレ用、シンク用、レンジフード用と、とにかく洗剤に溢れていますよね。果たしてそれらを使い切るまで、みなさんどれぐらいかかっているでしょうか?そしてその容器は、どこへ行くのでしょう?
使う分だけ使う時に買う。ペットシャンプーやオドール専用クリーナー(臭い消し)、もちろん、人のためのシャンプーやフェイスローションなんかもあります。
固形のシャンプーなら容器が不要です!
じゃあ、これを何に入れるのか?という問いが出そうなのですが、もちろん自宅から容器を持ってくるのもOK。もし忘れた場合には、綺麗な新しい瓶(プラスチックではなくガラス)も売っていますが、どこかの誰かが置いて行ってくれた、使い捨て容器は無料で提供してくれています。もちろん、これで十分!
借りた時には、次回訪れた時に返すこともリサイクルに出すこともできます。
このショップは、ショップだけがあっても成り立ちません。この訪れた日は、大きな洗剤タンクが運び込まれ、ショップの店員の方が、上から新しい洗剤を足している光景も見られましたが、どこかの洗剤メーカーが、パッケージ化することなく、大きなロットでお店に卸をする必要があります。
そして、購入者側の理解があること。備蓄せずに必要な時に必要な量を買う。そしてその入れ物となる容器は新しいものを買わずに、リユースの無料の瓶に入れる、あるいは自宅から持ってくるという行動が必要になります。
このショップは、ポートランド市内に現在4店あります。確実に増えていることから、ポートランドというまちとは相性がよいのではないか、そして受け入れられているのではないかと思います。
さて、冒頭で紹介した大統領令。そしてポートランドのまちの中の洗剤ショップと生活者の暮らし。この揺らぎの幅こそが米国ではないか、と思ったので、今回はこの対極にある事例を紹介してみました。
ちなみにポッドキャストで聞いた話によれば、元々は広告会社に勤めていた男性が、奥さんと彼女の妊娠を機にはじめたのだそうですよ!アドタイの読者の方には、きっと広告関係の方も多いはず。日本で、このような量り売り店をやってみたいなぁと思っているので、興味ある人は一緒にやりませんか?(笑)。
