生活者の意識・行動の変化が激しい時代。生活者の支持を得るブランドになるためには市場の動向に合わせてスピーディーな意思決定も必要です。こうした市場で顧客を増やし成長を遂げるスタートアップ企業では、どのようなマーケティング戦略が企画され、また実行されているのでしょうか。新興企業の戦略から新しいマーケティングの方法論を導き出します。
※本記事は月刊『宣伝会議』3月号の連載「急成長スタートアップ企業に聞く!『わが社のマーケティング戦略』」に掲載されています。
30~40代をターゲットとし、金融機関との差別化を図る
政府が「資産運用立国」を重要政策とし2024年4月からはNISA(少額投資非課税制度)の拡充が行われるなど近年、投資に対する関心は高まっている。こうした市場環境のなかで投資をはじめとして、貯蓄、保険など多種多様な金融商品を扱うプラットフォームとして成長しているのが、「Habitto」だ。
アプリのUIは全体的にシンプルかつ、手軽に相談がしやすいデザインになっている。
ユーザーは「Habitto」アプリ内で貯蓄、投資、保険を統合して管理できる。さらに、チャットやビデオ通話で、ファイナンシャルプランナーからのアドバイスを無料で受けることもできる。
金融領域は専門的な知識が必要なだけでなく、資産に関わる意思決定は非常に難しく、判断に迷うことも多い。2023年6月のサービス開始から1年半で約2万人のユーザーを獲得。さらに、2024年11月にはシリーズAラウンドにて、18億円の資金調達を行っており、投資家からの関心も集めている。
創業者は、サマンサ・ギオッティ氏、リアム・マカンス氏、久米保則氏の3名。うちギオッティ氏とマカンス氏は、もともとシンガポールにて「Habitto」と同様のサービスを開発・運営していた過去を持っている。そしてそのサービスを売却したのち、次は日本市場に挑戦しようと、日本国内向けに立ち上げられたのが、同サービスだ。
なぜ日本市場を選んだのか。その理由のひとつは、運用されていない預金額の多さにあるという。
同社が対象とするユーザー層は30~40代。総務省の調査では、この世代は現在同社では、この世代で一定以上の金融資産を有する層は約2200万人、その資産は約400兆円にのぼると推定している。
また先述の通り、政府は資産運用を推奨してはいるものの、特に若年層の資産運用が満足に行われているとは言い難いのが現状だ。そうした人々の資産運用の手助けとなることを目的として、「Habitto」の提供を開始したのだ。
金融サービス事業の主力であるメガバンクなど既存の金融機関には、「Habitto」と同様のユーザー層を対象にしたサービスの提供を行っているところは少なく、差別化された地位の確立につながったという。
…この続きは1月31日発売の月刊『宣伝会議』3月号で読むことができます。
